第二十一話 精霊魔法
「んー……それにしても、久々の顕現。気分がいいね~!」
「そういうもんなのか?」
身体を伸ばしながら、そんな事を言うシルフィに、俺は思わずそう問いかける。
すると、より一層気分を良くしたかのように、シルフィが話し始めた。
「そうそう! 私って自然生命体だから、基本的には実体を保てないんだよね~。だけど、実体を持つ者がパスを繋いでくれたら、一時的に実体となって顕現可能……つまり、召喚者君のお陰って訳!」
そう言って、空中でくるくると回るシルフィ。
風を操ることで浮いているのだろうが、地味にその技量が狂っている。
相当な技量を持っているという自負がある俺が、理解すら出来ない程の領域……と言えば、分かるだろうか。
「なるほどな……で、精霊魔法はどのように使えばいいのだろうか……?」
シルフィの言葉に納得しつつ、俺は自身の身体を今一度確かめた。
うーむ。精霊と契約する事で使えるようになる、少し特殊な魔法――精霊魔法。
風の精霊たるシルフィと契約したのだから、もう風の精霊魔法を使える筈だと思うんだけどなぁ……
でも、精霊魔法を使えるような感覚は、今の所一切無い。
これは一体、どういう事なのだろうか?
「偽物ではないですか? この
そんな中、何とも不機嫌そうな顔をしたフェリスが、そんな事を言った。
いや、だからそれはさっきも言ったが、状況から流石に無いって。
すると、シルフィが「やれやれだぜ~」とでも言いたげな仕草をしながら口を開く。
「そんな、急に使えるようにはならないよ~。理論でなんやかんやする、召喚者君たちの魔法とは違って、精霊魔法は感覚とイメージが全て。使う感覚を知らなければ、例え召喚者君でも無理だよ~?」
「なるほど、そういうものなのか」
「そうそう。そういうもの。てことで、このシルフィが、手取り足取り教えてあげるよっ!」
納得する俺に、シルフィはそう言って俺の背後から抱き着いた。
そして、そこから俺の両腕を掴み、ゆさゆさと揺らす。
「シルフィさん……何をしているのですか?」
刹那、ゴゴゴゴ―と、圧の効果音が聞こえて来たのかと錯覚するレベルの圧をシルフィへ放ちながら、フェリスが低い声でそう言葉を紡いだ。
うお、怖いな。フェリス。
そう、思わずビビっていると、シルフィがにししっと笑った後、すっと俺から手を引いた。
そして、フェリスの下へ行くと、心底楽しそうに口を開く。
「いいね~フェリスちゃん。召喚者君の事、大事にするんだぞ~?」
「ふん……貴方に言われるまでもありません。貴方こそ、お兄様に迷惑を掛けたら、消しますよ」
おちょくるような――だが、どこか優しい。
そんなシルフィの言葉に、フェリスは腕を組みながら、小さくふんと鼻を鳴らして、目を背けるのであった。
「フェリス……大丈夫か?」
「大丈夫です。お兄様!」
そんなフェリスに思わず声を掛けてみれば、即座にいつもの表情でそんな言葉が返って来た。
良く分からないが……大丈夫ならいいかな。
「鈍いな~……ま、いいや。ともかく、召喚者君。今から私が、精霊魔法の使い方を教えるね!」
やがて、そう言って俺の右手を両手で包み込むシルフィ。
刹那、俺を纏うように微細な風が巡り始めた。
「いい? これが精霊魔法なの。さあ、感じて感じて」
「お、おう……」
脳内で、「考えるな、感じろ……」ってフレーズがリピートされる中、俺はその風を感じる。
んー……とは言ってもなぁ。
どうしても、理論的に考えてしまう。
元々プログラマーだったから、余計に……なのかな。
そう思っていると、今度はシルフィに脇腹をつんつんされる。
「考えるなって言ったでしょー? 別に習得しようとか、そう言う難しい事は考えなくていいの! とにかく一旦、頭を空っぽにしてみて。何も考えないでねー? 考えなしの馬鹿みたいに」
「例えがひでぇな」
シルフィの言葉に、俺はそう頬を引き攣らせつつも、言われた通りに何も考えないようにしてみた。
ボーっと、何の意味も無くベッドでゴロゴロするあれと同じ感じ……
すると、なんだか身体の表面に違和感を覚えて来た。
何かが纏っている……そんな感じ。
「おー? その感じ、もう感じ取れたの? 召喚者君センスあるね~。前召喚者君の1000倍はあるかも?」
「どんだけ酷かったんだよ。前召喚者……」
シルフィの言葉に、俺はなんとも言えない表情をしながら、そんな言葉を零すのであった。
その人……仮にも大精霊を召喚するほどの傑物だった筈なのに。
「勿論です。お兄様は、とても凄い方ですので!」
すると、フェリスが自慢げにそう言って、俺の左腕に自身の右腕をそっと絡めた。
フェリスが俺の事を、そう誇りに思ってくれているのは、何だか嬉しいな。
「ありがとう、フェリス」
「いえ、当然の事を言ったまでです。お兄様」
礼を言えば、さも当然とでも言いたげな様子で、そんな言葉が返って来た。
おおう……ナチュラルにそれ言われるのは、なんか恥ずかしい。
すると、その様子をニヤニヤとした表情で見ていたシルフィが口を開いた。
「いいねー2人共。仲良し仲良し……それじゃあ、召喚者君。そろそろ、簡単なやつから使ってみよーよ」
「ああ、そうだな」
こうして俺は、何とか体感する事の出来た精霊魔法を、ようやく行使する事になるのであった。
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お待たせしてすみません。
大学のテスト期間でしたので、投稿が出来ませんでした。
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