「カブト虫とクワガタ。」~10代から20代に書いた詩

天川裕司

「カブト虫とクワガタ。」~10代から20代に書いた詩

「ヴァン・ベートーベン。」

ヴァン・ベートーベンは、孤独の騎士と嫌われた人生を送った。だが今は違う、日本の音楽家、世界の音楽家がベートーベンを演奏している。この違いはどうだ、必衰の華やかさとでも言うべきか。我の人生も、同じだろう。身体の障害はなけれども。


「カブト虫とクワガタ。」

 カブト虫とクワガタがケンカしている。カブト虫が勝つのか、クワガタが勝つのか?子供達は言い合っている。そこを通りがかった大人達もどっちが勝つのか、喚している。勝負はついた。カブト虫の角がクワガタののこぎりを折り、そののこぎりの片方がカブト虫の甲につきささった。カブト虫の負けだ。


「裏切り。」

彼には一人の友がいた。彼とその友人は、毎晩遅くまで彼のマンション(一室)で遊んでいた。

ある夜、彼の友人は、ふいに“飲み物と食べ物を買ってくるよ”とドアを開け、彼は心よく“ああ、頼む”と、予知のない故、当然のことであった。そして、災難が起きたのはその後のことである。彼のマンション(一室)のすぐ下の一室から火が出て、火はみるみる内にぼうぼうと行き渡り、上へ、上へと焼きつくしたのだ。彼はあわて、とにかく火から逃れようと友人が帰ってくるのを気にしながら、下へ降りようとした。が、どの階もすぐ下には火の海と化しており、舌うちをしながら彼は上へ昇るしかなかった。さいわいサイレンの音がすぐ近くでしたので、“よかった、助かるだろう”と安心し、屋上でその助けを待つことにした。

またさいわいなことに、屋上に行く人は彼一人ではなかった。その時彼の友人は、地上の人ゴミにまみれながら上の階を見上げていた。彼は少し目が悪かったので、どれが彼なのか、はっきりはわからなかった。が、ずっと不安ながら上階を見上げている。

ようやくの思いで、彼は屋上へたどりついた。何人かといっしょにその助けを待っている。火が出たのはずい分の下の方だったので、一番上まで火が広がるのは少し時間がかかった。その時である、一人の少年がすぐ下の手すりのところで、落ちかかっていた。というのも、すぐ下に木があるのを見つけ、そこへ飛び降りてみようと、試みたのである。

しかし、上から見ただけなので、その少年にはその高さがよく理解できていなかった。地上からその木と少年の間をみると8メートル以上はあいていた。その少年は、少し情緒不安定な子で、アクション映画が好きな子であった。彼は、その屋上にいた人の中で一番若かったのと、ボランティア精神にも富んでいたので、すぐ下の階というのもあったので、その少年を助けに行くことにした。

すばやく下の階に降り、火がまわってきたら二人とも黒コゲになるというのも頭にあったので、冷静に、その少年を引き上げようとした。その時である、火の近くにあった、ガスのパルプが小さな爆発を起こした。その反動で、つかんでいた少年の手に力が入り、彼は手すりを乗り越えあやうく落ちそうになった。しかし、なんとか彼も手すりにぶらさがり、落ちることをふせいだ。その少年と全く同じ状態になった彼は、今度は、まず自分の肩をかしてその少年を上へ行かせようと試みた。そうしてその少年は自力で彼の肩を踏み台にして上へ昇った。

ようやく手すりを越え昇り終えたあと、その少年の心は、一瞬の迷いが生じ、恐怖と気のゆるみが重なり情緒不安定のほっさが起こった。少年はアクション映画の悪役を真似して、彼を地上へ落とした。地上の人からは、誰か人が落ちた模様にしか見えなかった。

その手すりのところには、まだ情緒不安定だとは気づかれていない少年が立っていた。人々は、その状況に悲しんだ。少年はアクション映画の好きな精神異常者だったのである。その少年も本能的に身を守り、屋上へと向かい、人にまみれた。地上の人々からは、火事の消火もあってゴチャゴチャしていたので、火が消えて、皆が助かることしか頭になかった。

じっと上階を見ていたのである。そのあとで、落ちた彼と、それを見ていた人の主張で、その少年のことが裁判ざたにまで問われたが、その少年は精神異常ということが判明したので、罪にはならなかった。――――時が経ち、彼の友人は今でもその事件のことを思い出す。だが、その時の少年の行く先はわからない。数年前にその少年と家族は、どこかに引っ越していたのだ。

その少年を追う目的は誰にもない。友人はただその時の憎しみを沈め、その過去も消すように努力した。マンションは新しくなっている。


「地位・名誉、」

「地位・名誉、」―――――かかげられるのは死人のみ。でなければ罪になる。

             人間はそれほど器用ではない。死人でもないのだ。


「空虚。」

 突発とは、数億年以上先のことをさしているのかも知れない。アインシュタイン、その言論を口にする友がいた。それは、突発的な虚言を真似しているにすぎない。人間は、あるきめられた模範でしか生きることはできない。神に創られた人物なら、その神の力を越えることはできないのだ。“すべては虚言なり.”

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「カブト虫とクワガタ。」~10代から20代に書いた詩 天川裕司 @tenkawayuji

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