ビデオ電話

天川裕司

ビデオ電話

タイトル:(仮)ビデオ電話


▼登場人物

●巣木有子(すき ゆうこ):女性。27歳。独身OL。

●原田十和子(はらだ とわこ):女性。28歳。有子の同僚かつ親友。

●岡井 登(おかい のぼる):男性。35歳。軽い男。有子や十和子の上司。

●真中淳樹(まなか じゅんき):男性。33歳。有子と十和子の上司。紳士的でハンサム。

●巣木佳子(すき よしこ):女性。55歳。有子の母親。夫は以前に事故で亡くしている。本編では「母」「お母さん」「母親」等と記載。

●巣木雄太(すき ゆうた):男児。10歳。有子の1番下の弟。2番目の弟は父親の事故の時に一緒に亡くなった。本編では「弟」と記載。


▼場所設定

●有子の自宅:一般的な戸建て住宅のイメージで。

●会社:有子達が働いている。一般的なIT企業のイメージで。

●街中:電車内や駅のホームなど一般的なイメージで。


モーグルマップ→Googleマップをイメージしています。

キャンディーブログ→アメーバブログを想定してます。


NAは巣木有子でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3847字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんはブログやTwitter、ズームなんかをよく利用しますか?

今回はSNS利用を絡めた意味怖のお話。



メインシナリオ〜


ト書き〈会社:昼休み〉


十和子「でさー、私の家の周りって竹やぶが多いじゃない?だから夜になると結構怖いのよねー」


有子「私んちの周りだってそうよ。ほら十和子も知ってると思うけどさぁ、あのクラウド池、夏になるとボウフラが沸いて蚊もワンワン出てくるから大変。ほんと税金払ってんだから、ああいうのを先ず何とかして欲しいわよね」


私の名前は巣木有子(すき ゆうこ)。

今年27歳になる独身OL。


今喋ってるのは親友の十和子。

プライベートでも仕事でも仲良しだ。


岡井「ねぇねぇ何の話?俺も仲間に入れてよ」


真中「今日も楽しそうにやってるね♪」


話を聞きつけて岡井さんと真中さんがやってきた。

2人とも私達の上司。

岡井さんはベラベラ喋る軽い男。

真中さんはどちらかと言うと紳士的。


十和子「ダメですよ〜♪これ女子会ですからw」


岡井「え〜いいじゃんよー」


ト書き〈自宅〉


仕事を終えて帰宅。

私は早速、2階へ上がりパソコンに向かう。

私の趣味はSNS。


今やってるのはキャンディーブログ。

芸能人にも人気のブログで、登録者は無数に居る程。


有子「おっ、一杯コメント付いてるなぁ〜♪嬉しいな」


十和子はアパートで一人暮らし。

私はまだ実家。


父親は数年前に車の事故で他界しており、

その時一緒に乗ってた2番目の弟も亡くなった。

今は母親と1番下の弟との3人暮らし。


弟は末弟ながらまだ10歳。

どちらかと言うと引っ込み思案な子。


母「有子ー、ご飯できたわよー」


有子「はーい♪おっとその前に、プロフィールの編集しとこ」


キャンディーブログには、

プロフィールを入力するページがある。

自分がどんな人なのかを読者ユーザーに紹介し、

それがそのままPRにもなる。


有子「東京都練馬区…血液型はAB型と。えーとそれから、誕生日は4月16日…うーん、あとはそのままでいいかな♪よしっと、完了〜」


ト書き〈翌日〉


翌日。


私は社員食堂で1人ご飯を食べていた。

するとそこへ岡井さんと真中さんがやってきていろいろ喋った。


真中「へ~有子ちゃんって野の花好きなんだ」


有子「はい♪大好きです」


岡井「俺もおんなじ!野の花って良いよねー」


有子「あはは、そうですね」


ト書き〈数日後〉


入社した頃はそんなでもなかったけど、

最近は岡井さんや真中さんと喋る日も多くなってきた。


十和子も一緒になって喋ったりし、

私達は結構仲の良い4人組。


そんな或る日の帰り道。


有子「あ、真中さんだ。はーい、お疲れ様でーす…ってあれ?背景、野の花なんですかこれ?」


ビデオ動画の背景画面が野の花になっている。


真中「ん、あーそうなんだよ。ちょっと合成してみた♪」


有子「へ〜凄いですね♪」


真中「ハハ、俺も初めてやってみたんだけどさ、まぁ慣れたら簡単かもね」


真中さんは時々こうやってお疲れメールや電話をしてくれる。

適当に話して電話を切った後…


有子「ゲッ、今度は岡井さんからだ…」


仕方なく出る。


有子「え?岡井さんも背景、野の花ですか?」


岡井「アハ♪気づいた?」


なんと、岡井さんも真中さんと同じ事をしていた。


岡井「なんだよー、真中もおんなじ事してたのかよー」


有子「あはは」


仕事で疲れてる私。

正直ウザかった。


真中さんはすぐ切ってくれるけど、

岡井さんはベラベラベラベラ喋りまくる。


ト書き〈出張〉


数週間後。


有子「え?出張ですか?」


地方郊外の行った事もない場所。

会社の車で行って欲しいとの事で、私は早速、地図を広げた。


真中「あ、それならモーグルマップで見たほうが早いかも」


真中さんはいつも持ち歩いているノートパソコンで

早速調べてくれた。


有子「あ、ほんとだ。分かり易いこれ」


私はこう見えて、極度の方向音痴。

調べてくれて助かった。


ト書き〈出張帰り〉


今回は日帰り出張。

会社まで車で戻り、それから電車で帰宅。


時間は既に夕方だった。


有子「あ、そうだ。今日お母さん出かけて家に居ないんだ」


母は弟を連れて少し遠出をしていた。

夕方から夜には帰ってくる。

今日は私が家の事をしなきゃならない。

駅近のスーパーで晩ご飯のおかずを買い電車に乗った。


有子「はぁー遅くなっちゃった」


その時、また岡井さんからビデオ電話がかかってきた。


有子「もう~」


仕方なく出る。


岡井「ほら、どう?自然な感じで上手く仕上がってるだろ?」


今度は学校の教室にアレンジしていた。

確かに言われる通り、本当の教室に岡井さんが居るみたい。

一瞬、合成だと気づかなかった。


有子「へぇ〜凄いですね!」


岡井「だろ?そーなんだよ♪自然な感じ出すのに苦労したよ俺も♪」


正直、どうでもいい。

岡井さんはまたベラベラ喋りまくる。


有子「今電車なんでもう切ります」


そう言って切り、最寄り駅のホームに降りた時…


有子「あ、今度は真中さんだ…」


真中「出張お疲れ様♪どう?問題なく行けた?」


有子「はい♪有難うございました♪」


真中「そりゃ良かった♪あ、いま駅?」


有子「そうです」


真中さんもビデオ電話。

まだ背景は野の花畑で合成されてる。


真中「そっか、ごめんね。あ、携帯の電池残量もう尽きかけてるから、そろそろ切るわ。あそうだ、最後に来週のプレゼンの事なんだけどさ…ってごめん、誰か来たみたいだ。またすぐ電話するからちょっと待ってて」


そう言って、真中さんは一旦電話を切った。

インターホンは鳴らず、家のドアを開けるような音が確かにした。

10分ぐらいしてまた電話がかかる。


真中「ごめんねー、ちょっと宅配便来ちゃってさ」


有子「いえいえ。ってあれ?真中さん、着替えたんですか?」


真中「そうなんだよ、宅配便取りに行く時にコーヒーこぼしちゃって」


有子「あ、でもそれ私の父さんが着てたパジャマにそっくり♪」


ブルーの生地にストライプが入ったパジャマ。

父さんの形見にと、まだタンスの中にしまっていた。


真中「このパジャマ着心地いいからねー。今でも凄い人気らしいよ♪」


確かに人気のパジャマ。

近所の人も愛用している。


その時一瞬、画面がバグった。

バグった瞬間、背景が少し乱れ、

部屋の中がリアルに見えた。


何となく見覚えのある部屋。


その時、偶然、十和子が駅のホームへ上がってきた。

十和子もこの界隈に住んでいる。


私は真中さんと電話で喋りながら、

十和子に借りた携帯で真中さんの携帯に電話してみた。


すると「はい」と真中さんが出た。



解説〜


はい、ここまでのお話でしたが意味怖は解りましたか?


それでは簡単に解説します。


出張帰りの日。

有子は駅で真中とビデオ電話で喋っていました。

その前には岡井からも電話がかかっており、

真中も岡井も背景を合成したものに切り替えています。


その仕上がりは見事なもので、

一見、合成とは判らない仕上がりでした。


ビデオ電話中、

「宅配便が来た」

と真中は途中で電話を切ります。


そして戻って来ると、真中の服装は変わっていました。

それは有子の父親が生前着ていた物と同じパジャマ。


「人気のパジャマだから誰でも持ってる」

という感じに言いますがこれは嘘。


そのパジャマは、本当に有子の父親のパジャマでした。


ここまで来ればもう解るでしょうか。


そう、有子に電話をかけていたこの時、

真中は既に有子の家に侵入しており、

有子が帰って来るのを待っていたのです。


真中は有子や十和子の会話を盗み聴き、

有子の家を自力で探し当てました。


有子が言ってた「クラウド池」をヒントにし、

また有子がやってたキャンディーブログのプロフィールから…

「東京都練馬区在住」

という事を知った上、

そのクラウド池周辺からモーグルマップを使い、

執念で有子の家を割り出しました。


電話中、有子の母親と弟が帰ってきます。

自分の家だから鍵を開けて入るのは当たり前。

だからインターホンは鳴りません。

「宅急便」というのも当然ウソ。


そしてビデオ電話の画面がバグり、

部屋の中がチラッと映ります。


「何となく見覚えのある部屋」

と有子は感じますが、

これは自分の部屋を見たのだから当然の事。

一瞬だったからよく判らなかったのです。


違和感を覚えた有子は、

丁度ホームに上がってきた十和子に携帯を借り、

真中と喋りながら隠れて真中の携帯に電話しました。


真中はそれまでに…

「俺の携帯の電池残量も尽きてきてるから、そろそろ切るわ」

と言っており、携帯でビデオ電話をしていた筈。


ビデオ電話中の真中の携帯で、割り込み着信も何も無く、

十和子からの電話を取れる筈ありません。


このとき真中はいつも持ち歩いていた

ノートパソコンでビデオ電話をしており、

携帯は横に置いていました。

だからビデオ電話中に十和子からの電話も取る事が出来たのです。


そして真中が服を着替えた理由。

これは帰宅した有子の母親と弟を殺し、

その返り血を浴びていた為でした。


それを隠す為、真中は自分の服を脱ぎ、

タンスから男物の服を適当に探します。

でも母親と有子の服は女物だから着れず、

弟の服は小さ過ぎて着れません。


だから形見に残された有子の父親のパジャマしか無く、

それを適当に選んで着ていた訳です。


真中はそれまでストーカー染みた事は何もしていませんでしたが、

有子と出会ってからその気質が開花してしまいます。

おまけにサイコパスの気質も目覚めてしまい、

「まさかあの人が…」的な状態になっていました。


真中が背景を野の花畑にしていた理由も、

有子が「野の花が好き」と言ったから。


どんな手を使ってでも有子に対する自分の思いを遂げる…

それ一色に染め上げられた衝動的犯罪と言う所でしょうか。


この後、

帰宅した有子は壮絶な光景を目にする事になるでしょう。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=4klxSCUyYFI

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