第4話

8場

〇ドン・キホーテ・レジ前・日中

レジで何やら買い物をする明里


店員「2,200円になります」


明里、財布からお金を出す

明里「これで」

店員「ちょうどですね、ありがとうございますー!」


ドン・キホーテから出る明里



〇ドン・キホーテ・店前・日中

明里、ドン・キホーテから出てくる

ドン・キホーテの買い物袋を手にし満足そう


明里「あったあった。流石ドンキだなー。これであいつも満足して、きっと成仏するでしょう」

妖、どこからともなく現れ、後ろから明里に声をかける


妖 「あいつってのは、こいつのことか?」

明里「ビックリした! え、なに。ずっと私にくっついてるわけ?」

妖 「(無視して)で、満足するものって?」

明里「そうそう。ついに見つかったのよ! これが…(袋から藁人形を取り出し、どや顔で)じゃーん! 初めてでも簡単! 藁人形セット! 五寸釘も入ってるんだって。まぁ今回は必要ないだろうけど。いやーこんなものも売ってるんだねー」

妖 「(ドン引きで)…お前、変わった趣味を持ってんだな」

明里「いやいやいや、私が好きで買ったわけじゃないから。依り代って、藁人形のことでしょ?」

妖 「(冷静に)そんなわけないだろ」

明里「噓でしょ!? もう買っちゃったんだけど!!」

妖 「はっはっはっ。やってみればいいじゃないか。案外ハマるかもしれないぞ」

明里「そんなわけないでしょ!」

妖 「まぁ趣味に精を出すのも構わんが、時が迫っていることも忘れるなよ。」

明里「趣味じゃないって! もう…そういえばお父さんに聞いたけど、お爺ちゃんそんな話したことないって」

妖 「そりゃそうだろう。記憶を消すんだから」

明里「え!?」

妖 「話してなかったか?」

明里「話してなかったか? じゃないわよ! なんでそんなことすんのよ」

妖 「なぜかは詳しく教えてくださらないから憶測だが、神も、ふと我に返ったときに、恥ずかしくなるんじゃないだろうか。全く、それを行う側の苦労もわかってほしいものだよ」

明里「なによそれ…記憶が消されるってどこまで? この数日間全部?」

妖 「いや、神にまつわることだけだ」

明里「まぁそれくらいなら…?」

妖 「で、今日はタピオカは持ってないのか?」

明里「無いよ」

妖 「これから買いに行く予定は?」

明里「無いよ。そんなお金ないしね。(藁人形を示して)こんなもの買っちゃったからね!」


途端に明里に興味を失う妖


妖 「ふぅん。しけているなぁ。じゃあまた。遊んでないで、しっかり探してくれよ」

明里「はぁ!? あ、ちょっと、嘘でしょ!? …行っちゃった…はぁ。どうしよう…これ」

妖、人ごみの中へ消えていく

藁人形を手にし、途方に暮れる明里

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年7月5日 21:00
2024年7月12日 21:00
2024年7月19日 21:00

戯曲『八雲さす』 @koth1113

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ