第2話
4場
大学内・構内ではいたる所で様々なサークル・部活が、学園祭に向けて準備をしている
建て看板
〇大学内・サークル棟・部室内・夕方
成田「(亀井に対して)神社の近くで銅鏡が見つかったんだって」
亀井「らしいなーあそこ俺らがこの間見学させてもらったとこだろ? なんで俺らが行ったときに見つからないかねー現場に立ち会いたかったわ」
岩田「(会話に入ってくる)いつの時代のやつなんだろうね? 邪馬台国出雲説を裏付ける重要なものだったりして!」
成田「ありえるかもね! あの神社、古墳の上に建ってるわけじゃん。なんとかしてその銅鏡を、今度の文化祭の展示の目玉にできないかなぁ」
岩田「(ノッてくる)いいねそれ! 私たち、歴史研究会に箔が付きそうだし! 亀井君のゼミの先生、発掘チームの一員でしょ? お願いして、1枚くらい借りれないかな…?」
成田、手を合わせて
成田「お願い!」
亀井「確かにうちのゼミの教授ではある。それは間違えない。ただ、この歴史研究会の顧問でもあるんだから、岩田! お前が行けよ!」
岩田「そんなに接点ないのに、そんなときだけ行くのもなんか気まずいじゃん?」
亀井「じゃあ、成田が行けよ!」
成田「無理だよ、俺、政治学科で接点ないんだもん」
亀井「なんでお前は、この歴史研究会のメンバーのくせに政治学科なんだよ」
成田「しょうがないじゃん、歴史学科は落ちちゃったんだから」
亀井「で、なんで政治学科なんだよ」
成田「滑り止めの一つが政治学科だったんだよ。ここの政治学科と別の大学の比較文化学科に受かったんだ。で、どっち行くか悩んでるときに、当時の歴史の先生に相談したら『偏差値的にも政治学科にしなさい』と『政治史という見方をすれば政治学科でも歴史を学べる』って」
亀井「それで、実際は?」
成田「(急にヒートアップして)全然違った! 自分が勉強したかったのは、戦国時代とかなのに、政治学科は近現代しかやんないんだもん。比較文化学科だったらやりたいことできてたと思うわ。完全に騙された!!」
岩田「(特に成田を諭すわけでもなく)でもさ、そのおかげで私たちも出会えたんだから」
成田「まぁそれはそうなんだけどさ…」
岩田、さっと亀井の方に向き直り、手を合わせ
岩田「というわけでお願いします!」
亀井「どういうわけだよ!」
成田、岩田に続き手を合わせて
成田「(危機感を煽るように)お願いします! 今回の文化祭の展示には我々零細歴史研究会の存続の危機がかかっていることをお忘れか!?」
亀井「(二人の圧に気圧されながら)わかった、わかった。今度会ったら聞いてみるから」
5場
〇繁華街・タピオカ屋前・日中
タピオカ屋でタピオカミルクティーを購入する明里と橋本
店員からタピオカを受け取り、橋本、先行して店を出る。続いて明里、タピオカをまじまじと見つめながら店を出る
明里「(タピオカをまじまじと見つめながら、橋本に問いかけるように)今どきタピオカ飲んでるのなんて、うちらだけじゃない?」
橋本「(意に介さず、徐々に熱を帯びてくる)美味しいんだからいいじゃない! そもそも私はタピオカがあんなにブームになる前から目をつけて、飲んでいたんだから! それがいつの間にかブームになってて、流行りに乗っかってる人みたいになって、飲みづらかったんだから!」
明里「(落ち着かせるように)はいはい。それにしても、こんな田舎で、早々にタピオカに目をつけてたのはさすがだよねぇ」
橋本「恋愛マスターってのは、常に最新のトレンドを押さえておくものなのよ。さ、インスタにあげよ」
橋本、スマートフォンで自撮りをし始める
明里「(再びタピオカに視線を戻し、独り言のように)タピオカって別に最新じゃ無くない…?」
妖、どこからともなく現れ、明里の背後から話しかける
妖 「よう、順調か?」
明里「わーーー!!」
橋本「わーーー! ちょっと! しゃ」
妖 「おっと忘れてた」
妖、少し慌てた様子で指パッチンをする
時間は止まり、橋本も動きが止まる
明里「(動揺は収まってない様子)なに? なんなのよ! ていうかほんとにいた!!」
妖 「やっぱり信じてなかったか。まぁだからこうして、またお前の前に顔を出したわけだが。いままでの奴らもそう簡単には信じてなかったからな。で、どうだ? 見つかったか?」
明里「…」
妖 「この様子だと、探してもいないといったところか?」
明里「ねぇ、なんで私なの?」
妖、明里の持つタピオカが気になる様子
ちょこちょことタピオカに視線を向けながら話を続ける
妖 「お前の持つ、そのニオイだ。そのニオイこそ、代々神の癇癪を鎮めてきた一族の証だ」
明里「え、代々って私以外にもうちの家族でやった人がいたってこと?」
妖 「あぁ。前のやつの名はなんといったかな…? (思い返してるような動きをする)そうだ光修(みつのぶ)だ」
明里「光修って、おじいちゃんじゃん!」
妖 「そうか、お前はあいつの孫だったか。(昔を懐かしみ)あいつは抜けてるやつだったが、良いやつだったからな。それより、お前が持っているそのカエルの卵のようなもの。なんだそれは?」
明里「ちょっとやめてよ! 飲み辛くなるじゃん! これはタピオカっていう、若い女子に流行ってる、流行ってた? 飲み物なの」
妖 「ほぅ。最近の人間は、カエルの卵を食べないといけないほど、食うのに困っているのかと嘆いていたのだ」
明里「飲んでみる?」
妖 「いや、いい」
明里「良いから飲んでみなって」
明里、妖に無理やりタピオカを手渡す
妖、訝しみながら飲む
妖「ほぉ…味はまぁ、普通のミルクティーと変わらないが、なかなか不思議な食感がして、これはこれでありだな」
といって飲み続ける妖
明里「ミルクティーは知ってるんだ…気に入ったならそれあげるよ」
妖 「(嬉しそうに)いいのか!?」
明里「うん。(おじさんが飲んだのは)なんかもういいや」
妖 「そうか! すまんな! じゃあ引き続きがんばれよ!」
妖、嬉しそうに回れ右をして、明里のもとから去っていく
明里、歩き始めた妖の背中に向かって声をかける
明里「あ、ちょっと!」
妖、さえぎるように指パッチンする
時間は動き出し、橋本も動き出す
妖、どこかにいなくなっていた
橋本「写真ぶれたじゃん! 」
明里「(呆然としながら)ほんとにいた…夢じゃなかったんだ…」
橋本「はぁ?なにいってんの?」
橋本に声を掛けられ、我に返る明里
明里「え!? あ、ううん、なんでもない。」
橋本、明里の手元にタピオカがないことに気が付く
橋本「ていうかあかり、タピオカどうしたの?」
明里「(自分の手を見て)え…?(しらを切るように)飲んだ、よ?」
橋本「うそでしょ!? 今買ったばっかじゃん」
明里「うん。こう…ぐいっと」
橋本「タピオカってそんな一気に飲むもんじゃなくない?」
明里「まぁたまにはね」
橋本「ふーん」
と言いながらスマートフォンで自撮りをし始める橋本
撮った写真をInstagramに乗せる
6場
〇大学内・サークル棟・部室内・夕方
岩田と成田が離れたところに座っている
成田、歴史系の雑誌を読んでいる
岩田、スマホでInstagramを眺めている
橋本の投稿したタピオカの写真を見つける
岩田「(独り言で)タピオカって最新のトレンドじゃなくない?」
成田「(岩田に声をかけられたと思い)え? タピオカがなんだって」
岩田「あ、ごめん、なんでもないの」
成田「そういわれると気になるじゃん」
と言って岩田に近づく成田
岩田「(急に距離を詰められ少し驚きながら)そう? いや、たいしたことじゃないんだけどね。私の好きなYouTuberが、インスタにタピオカの写真をドヤ顔で上げてたから『え?』って思っちゃって」
成田「なるほど。その人は何系のYouTuberなの?」
岩田「恋愛系かな。(スマホの画面を成田に見せながら)この人のモテテクすっっっっごいんだって! ちょっと恥ずかしくなっちゃうようなのもあるんだけど、効果抜群なんだって!」
成田「へー!ちょっとそれやってみてよ!」
岩田「(急に恥ずかしくなり、顔を成田からそらしつつ)いやいや、恥ずかしいよ…」
亀井、扉を勢いよく開け、テンション高く部室に入ってくる
手には布にくるまれた銅鏡を持っている
亀井「やぁやぁ諸君。ご機嫌はいかがかな?」
成田「やけに上機嫌だね」
亀井「(遮るように)そんなお主らに朗報じゃ!」
成田「会話が出来ねぇ」
亀井「お主らの所望していた銅の鏡、無事にこの手に収めたぞ!」
岩田「えぇ! ほんとに!?」
亀井「(銅鏡の布をめくりながら)この銅鏡が…(露になった銅鏡を二人に見せつけ)目に入らぬかー!」
岩田「おぉー!」
成田「(亀井に対して深く礼をしながら)かたじけない…かたじけない…かたじけない…」
岩田と亀井、寸劇が始まる
女王岩田
家臣亀井
岩田「して、そち。それはいかようにして手に入れたのかな?」
亀井「(女王に対してへりくだりながら)地域住民にこの偉大な発見を知らしめるためにうんぬんかんぬん…我が校の学生達に、もっと考古学に興味を持ってもらうためにうんぬんかんぬん。と、最もらしい言葉を並べまして…」
岩田「そうかそうか。首尾よく事が運んだようでなにより。大義であった。誉めてつかわす」
亀井、へりくだりすぎてほぼ土下座のような状態、しかし銅鏡は捧げている
亀井「ありがたきお言葉、恐悦至極に存じまする」
成田「(寸劇には乗らずに)じゃあ今年の目玉はコレに変更で! さーて、企画の練り直しだ!」
三人、文化祭の企画展示の打ち合わせに入っていく
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