長年付き合っていた彼女に浮気をされて別れた29歳の俺、初めてマッチングアプリを利用してみたところ、何故か知っている女性とばかりマッチングをしてしまうのだが?(それも美女ばかり)
第20話 まさかの月曜日はまだ終わりません。
第20話 まさかの月曜日はまだ終わりません。
ほんっとに最悪だ。
何で俺がこいつ、木村のゲロの世話を...。
しかも、とりあえず、あの時に歩いて向かっていた最寄駅から俺の家は一駅。こいつ家は何駅も先ということもあって、一旦ではあるが、木村は今、俺のマンションの自宅にいる。
「すまねー。佐藤。お水くれー」
ゲロまみれのこいつを一人放っておくことは全然できたし、それがむしろ最善手であったことは間違いないだろうが、酔っていたこいつがまた今度は電車の中で吐いたりでもしてみろ。もう目も当てられないし、こいつなら割と真面目にやり兼ねない。
まあ、それすらも俺の知ったことではないが、俺の悪い癖だ。ついつい、こういうする必要のない余計で面倒くさいことを気が付けばしてしまっている...。
「でも。とりあえず、佐藤。シャワー。ありがとな...」
そして、糞気持ち悪い。気持ち悪すぎる。俺の目の前には何故か、そう言って急にしおらしい態度をとってくる、俺の貸したTシャツを着た姿のバカ木村。
もう本当に嫌だ。
最早、悪すぎる意味でこいつが俺の運命の相手なんじゃないか?
厄病神。厄病神すぎる。
ありえないけど、これが、これが、今田ちゃんや倉科さんならどれだけ良かったか。
想像...したくてもできねぇ。目の前のこいつの存在感が強すぎて、どうしても脳内にも今はこいつが出て来てしまう。
さっきまではこれでもかと俺の脳内を支配してきた彼女たちが、いまや地獄の様に木村の顔一色に...。
しかも、只今の時刻は夜の11時45分。
本来であればすぐにシャワーを浴びさせて、着替えだけ貸して帰らせるはずだったのに。何で、何で、この糞バカはあんなにシャワーが長いんだよ!女子か!
その短い髪に何をそんなに時間がかかる。
そして、当然。もうこいつの終電は間に合わない。
はぁ、最悪だ。何が楽しくて、こいつを月曜日から家にお泊りさせなければならないんだ。
「へぇー、でも、佐藤の家ってこんな感じなんだー」
「うるせぇ、殺すぞ...」
いい歳した男が、初めて自宅に泊まりに来た彼女みたいなことを言うな。気持ち悪い。
まあ、こいつとこの会社で、それも同期として出逢ってしまったことが運のつき。正直、少なくとも今はもう諦めてこの状況を受け入れる以外の選択肢はないことはわかっている。
と言うか、たまたま視界に入って思いだしたけど。そう言えばさっきポストに入っていたこの封筒は何だ。有名なホテル予約サイトから来ている手紙?
案内パンフレット的な何かだろうか?
とりあえず、俺はしょうものないものであろうとは思いつつも、一応、丁寧にその封筒を手に取り開ける。
えーっと、あ。
「ゲロ...」
そうだった。思い出した。ゲロ...。
「ん? ゲロ? どうした佐藤。お前も吐きそうなのか?」
そうだ。数か月前、元カノと行けたらいいなと思って、もし当たれば絶対に喜ぶだろうなと思って、抽選に応募したんだった...。
「......」
とりあえず、今。俺の手には、とあるリゾート型ホテルの一泊二日ペア宿泊券...。
そう。ゲロはゲロでも下呂温泉街や山々を一望する高台にある、いかにも高級そうなリゾート型ホテルのペア宿泊券...。
今までこんな抽選に人生で当たったことなんてないのに。なんで、なんで...こんな時に限って、当たってしまう...。
まだ元カノと付き合っていた時のことを思い出して、ただただ虚しくなるだけだろうが...。
「って、うお。佐藤。何だよ、それ!下呂温泉の宿泊券?もしかして何かの抽選に当たったのか?」
「ああ、まあ...そうみたいだな」
今こんなのが当たって届いても、一緒に行く相手がいない俺にはただの紙キレでしかないんだけどな...。
「って、プッ、おま、それ、ペア宿泊券って誰と行くんだよ!ハハハ、このタイミングで、おま、行く相手もういねぇじゃんー!そうだ。俺と、俺と行くか!傷心旅行!」
「テメェとなんて死んでも行かねぇよ...ゲロ野郎」
何だ何でもお断りだ。
「佐藤、ほんっとお前ってついてないよなー。面白れぇ。ハハハ、また皆に言いふらしてやろーっと。まーたお前のネタが1個増えちまったよ」
こいつ...。
「おい、木村。俺がついていないのは99.9%はお前のせいってわかっているか...?とりあえず、今日はもう野宿でもするか?」
「す、すまん...。あ、そうだ。佐藤くん。肩でも揉みましょうか...?」
「おう。30分コースな」
「うす...」
はぁ、まあ。もう何でもいい。
とりあえず、肩でも揉ませて、そのまま気持ちよくなって寝るとするか。
「.....」
でも、ペア宿泊券か。
ほんと、何でこういう時に限って、こういうのに当たってしまうのだろうな...俺。
無駄すぎるだろ...。
「おい、木村。もっと内側を揉め」
「うす...」
「もっと強く!」
「うす...」
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