第17話 それぞれの写真です。
「えーっと、今田さんって、佐藤さんの会社のあの今田さんですか?」
「え? 倉科さん、彼女のことを知っているんですか?」
それにしても、本当に何の用だろう。今田ちゃん。
もうすぐイルカショーも始まるし、当然今は倉科さんと一緒にいるところではあるが、正直今は、こっちがかなり気になってしまって仕方がない。
「あ、はい。今ちょうど佐藤さんのところで取引をさせていただいている担当の方でして、あのものすごくお綺麗な女性の今田さんですよね」
「え、そうなんですね。そうだと思います。あ、うちの今田がお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそです。こちらこそなんですが、休日にlineが来るってすごく仲がいいんですね。それともお仕事の内容かな?」
どうなんだろう。別に特に休日に仕事はないはずなのだが、何か特別なイベントとかがあれば話は別。
てか、今の倉科さんの会社と、うちで取引しているのは今田ちゃんだったのか。
そうか。良かった...バカの木村みたいな奴じゃなくて。
「いえいえ、よくはしてもらっていますが、僕なんかが今田さんと仲良くとは...」
って、また、さっきから彼女に見せている俺の妹たちの写真の上には、新たなlineメッセージが彼女から送られてきたことを知らせるポップアップ。
【ゆーか】『ここの猫カフェの猫ちゃん、すっごく可愛くないですか?』
猫...ちゃん? あ、先週話をしていた猫カフェの話か。
え? その話のためだけに俺にlineを? 今田ちゃんが?
「フフッ、へぇー、仲良くないのに佐藤さんに休日にこんなlineを送ってくるんですねー」
で、何だ。隣にいる倉科さんは相変わらず俺にこれでもかと可愛い笑顔を向けてくれている。
向けてくれているが...何かさっきまでとは感じが違う?
な、何か目の奥が...
「い、いや、違うんです。これは、あのー、この前たまたま僕の家の実家で飼っている猫の話になって、それで写真を見せて...って、あ。そうだ。写真と言えば、倉科さんのと弟さんの写真も見せてくださいよ。ずっと気になっていたんですよ!」
本当に、別に彼女とは...
って、何だよ。おい、いや、俺は一体何を慌てている?本当に。
別に俺は当然、倉科さんと付き合っているわけでもないし、今田ちゃんとどうこうあるわけでも当然ない。
なのに、何だ。この俺のよくわからない浮気がバレた男のような勘違い男ムーブは。
しかもその相手が会社の超絶天使である今田ちゃんと、取引先の最強美女であるこの倉科さん?
いやいや、ないないない。アホか俺。
倉科さんから一瞬滲み出たよくわからない圧?についついそんな糞反応を繰り出してしまったが、そもそも俺のその感じた圧自体が勘違いで被害妄想だろう。
ただただ、今の自分の勘違い男の反応に恥ずかしくなってくる俺。
「はい!フフフッ、そうでしたね!私の弟の写真ですね。もちろんです!ちょっと待ってくださいね!」
現に、もう一度、隣の彼女の表情を確認するも、普通にただただ綺麗で可愛い女性の笑顔がものすごく間近に。
そして、不覚にもそんな光景にまたドキッとしてしまう自分がいる...。
本当に何だよ。さっきの俺の勘違いは...
「はい!佐藤さん。これが私の弟です!」
そして、いつの間にか俺の前に差し出されている彼女のスマホ。
はいはい。絶対にイケメン...って
「え?」
俺は思わず無意識に目を見開いてしまう。
イケメン...であることは合っていた。しっかりとそのスマホに写っているのは俺の予想通り、いや、予想以上のイケメンの姿。
でも、そういう理由で目を見開いてしまっているわけでは別にない。
そう。俺が驚いてしまった理由はそこではなく、その写真に写っている人物にものすごく見覚えがあるから...
「えーと、倉科さん。こ、この方のお名前は」
「はい!
そして、俺が知っている人物と同じ名前が耳にも聞こえてくる。
「え?」
「フフッ、私、倉科 充の姉の倉科 梓です!」
倉科...の姉?
美女の弟はイケメンで、イケメンの姉は美女...。
違和感は何も....ない。
「えーっと...」
マ、マジか...。
とりあえずは驚きすぎて、俺の口からは何の言葉も出てこないが、でも、そうか...。
倉科さんの弟がお前のことだったということは
「......」
良かったな。倉科....
最後に転職する際の挨拶があってからは久しくやりとりもなかったから、元気にしているか心配だったけど。
新しい会社ではかなり良い上司に恵まれたみたいで安心した。
と言うか、普通に羨ましいな。
俺もそこに転職できないかな...
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