第9話 帰宅後のシャワータイムです。
あー、真剣に疲れた。ようやく家に帰ってくることができたが、残るつもりのなかった月曜日からがっつり残業かよ。
一応名前のある企業だから給料はそれなりに高いとはいえ、ちょっとワークライフバランスが...。
そして今日も結局、午後に1件トラブルが発生して謝罪周りで予定が全狂い。俺のミスではないとはいえ、一応、下の子のミスは俺のミスでもあるからな。どうせ俺なんてそれぐらいしかできないし、尻を拭くぐらいならいくらでもやってやるけど...昔から俺、こういうのに巻き込まれてばっかりだよな...。
そんなことを考えながら、静かに自宅の浴室で俺、佐藤 健はシャワーを浴びているところ。
「......」
そう言えば昔、明らかにヤ〇ザだと思われる方の家にも謝罪に行ったこともあったっけ...。懐かしいな。あの時の上司が糞過ぎて俺が代わりに責任者として謝罪に行かざるを得なかったんだけど...。
その時はマジでチビリかけたからな。いや、半分チビッていたからな。
トラブルの当時者だった後輩。あのイケメン....そうだ。倉科だ。あいつもあまりにもらしくもなく普通に目から涙をポロポロ流していたからな。結局、部署も別々になってその2年後ぐらいにあいつは別の会社に転職してしまったけど、元気にしてんのかな。
あー、でも全然あいつとは関係ないし、会社も違うけど。どうせ倉科なら、あの時にあの倉科さんみたいな美人の尻を拭えていればもしかしてたら今頃...。
いや、ないか。ないな。俺だからな。
それに倉科さんみたいな人間ならそもそもあんなトラブルは確実に起こさない。
まあ、とにかくあの時の体験に比べたら、ただの謝罪なんて全然マシだと思えるようになるぐらいにはやばかった。
でも、本当に...。
別にこんなことはもちろん表立っては言わないけれども、どうせなら男ではなく女性のトラブルの尻ぬぐいをいっぱいして尊敬されたい人生だった...と声を大にして言いたい。器の小さい人間だと思われてもいいから言いたい。言わないけど。
ただ、ほんとに昔から決まって、俺の近くでトラブルを起こすのは男の後輩ばかり。
別にトラブルを起こしてしまうのは仕方がないし、俺だって起こしてしまうことはある。そもそも明らかなカスハラ案件だってあるし、そこについては仕方のないことだと割り切れているが、それでも何でこうも男ばっかり...。別に男からいくら尊敬を集めても...。本当にもったいない。
実際、俺が長年付き合った彼女と別れた時にlineをくれたのも100%男。後輩20人くらいから連絡が来たけど...。
それも心配している体で、結局のところ、あいつ等は普通に俺のことを面白がって舐めていただけだからな...。
『そんな女、佐藤さんにはそもそも釣り合ってなかったんです。ほら、飯行きましょう。佐藤さんの奢りで』とか。『俺が佐藤さんの彼女になります。だから飯行きましょう。佐藤さんの奢りで』とか...。
いや、俺はお前等の友達かよ...。
まあ、そう考えれば...。ああ、俺、男からも全然尊敬されてないな...。いや、全くされていないな。
しかも最近は俺の今の状況とは相反して、そいつらの結婚ラッシュ。そして何故か、もうそういうノリになっているのか、ふざけているのか、俺を招待してスピーチをさせる流れが頻発しているという意味のわからない状況が連発されているのだが、ちょっとそろそろ本気でやばい。
別にスピーチはもう慣れたから100歩譲っていい。いいのだが、お金が...。
生活が脅かされるとか、そういうレベルではもちろんないけれども、やはり3万円がこうも頻繁に財布から出ていくのはちょっと真剣に...ただ、他の奴の結婚式には行って、別の奴の方には行かないって言うのも何と言うか...。
あと、よくよく考えれば、いや、よくよく考えなくても、あいつ等が全員女だったとしても、多分と言うか、結局、俺だから普通に誰ともどうもなっていないな。
やばい。一気に現実に戻った...。
まあ、もう何でもいいけど、さすがにシャワー代ももったいないし、そろそろ出るか。
あ、そう言えばさっき自己紹介欄を変更したマッチングアプリ、どうなっているのだろうか。
まあ、顔と名前出し無しで自己紹介欄を変えただけで、何かが変わるとは思わないが、一応な...。
そんなことを考えながら、俺は静かに浴室からあがって、髪をタオルで拭きながら
洗濯機の上に置いてあったスマホの画面を確認。
さすがにまあ...え?
「へ?」
嘘だろ? そんなことある? 自己紹介欄を変えて何だかんだで30分も経ってないぞ。
何か。誰かと1件マッチングしているんですけど...。
一応、また前と一緒で相手の顔はプロフからはわからない。名前もニックネームっぽくて、どんな人かはまたメッセージをしない限りは想像もできない。
でも、した。マッチング...。
二人目...。いや、実質これが一人目か。
まさかの自己紹介欄を変えただけで即マッチング。
おお...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます