第57話 上限
「ふぅ、サクサク上がるな。いやー、プリティサミー様様ですよ」
ドラゴンゾンビ討伐後、俺はレベル上げに腐心していた。
今やってるのは敵を集めての範囲狩りだ。
バグリンと俺で空中からの神雷の刃で敵を集め、そこに召喚したサミー婆さんの超強烈範囲魔法でドカンするだけの簡単なお仕事である。
そしてこれがまたとんでもなく稼げた。
何せレベル90後半の、二桁以上の数の敵を一網打尽な訳だからな。
単体狩りとは次元が違う。
まあ欠点としてその一発で俺のMPがほぼなくなってしまうってのがあるが、それも聖女印のエリクサーさえあれば三分に一回は満タンだ。
そして三分に一回の魔法でありえない高効率が出て、やめられない止まらないである。
「困った時はサミーにお任せ!」
サミー婆さんが可愛らしいポーズをとる。
その年で魔法少女になり切るとか、恥ずかしくないんかね?
まあ勿論言わんけど。
あ、そうそう。
ドラゴンゾンビの報酬として、俺は見事にドロップ装備――ドラゴンボーンセット(軽装・レジェンド)をせしめている。
更にレアドロップである竜の心臓が二個出ていたので、それを使ったスペシャルアイテムをユミルが作ってくれるそうなので――絶対役に立つとの事――ドラゴンゾンビには心から感謝だ。
「そういや、ドラゴンゾンビ討伐の時に気になったんですけど……なんであいつ、一発で沈んだんですかね?俺の攻撃力じゃ、サミーさんの魔法の補助があっても無理だんですけど?実はバフデバフが10倍以上だったりとかしません?」
俺の計算だと、あの一発で削れるのは精々8割程度の筈だった――まあ8割でも大概だが。
それが何故か一発で沈んでしまったのだ。
短剣はダメージ幅が小さいから、どう頑張っても9割もいかない筈だし。
なので俺は、サミー婆さんの魔法の効果が申告された物より大きかったんじゃないかと考えていた。
「いんや、アタシの魔法の効果は合わせて100倍だよ。過小申告する意味なんてないからね」
どうやら違った様だ。
じゃあなんでドラゴンゾンビは沈んだんだ?
ひょっとして、ゲームの奴よりHPが低かったのか?
「それでしたら私のスキルの影響かと」
「ユミルさんの?」
今現在、光の精霊は中身(ユミル)入りだ。
そして普通に喋っている事からも分る通り、サミー婆さんには彼女の事を伝えてある。
あまり他人に知られない方が良い情報ではあるが、婆さんは屋敷から出られない幽霊だからな。
なので、吹聴される心配も無いので問題なしだ。
「タリスマンのゴッドブロウは、私の能力に影響を受ける様になってるんです」
「そうなんですか?」
そういや、スキルを確認した時に詳細が無かったな……
光の精霊もユミルの影響を受けた能力になる様なので――神雷の刃の威力はユミルの魔力で増減する――攻撃スキルのゴッドブロウもそうなってもおかしくはない。
「はい。丁度討伐前に魔法の威力が二倍になる、聖女としてのスキルを覚えましたのでその影響かと」
「二倍……」
サラリと強スキル習得してやがるな。
俺にも威力二倍のスキルが欲しい物である。
因みに、威力アップはダメージアップより基本的に効果が高い。
ダメージアップは敵の防御力の影響が大きいからな。
それに対して威力アップは、相手の防御力を無視して火力が上がる。
「奇跡の祝福かい?」
「はい」
「サミーさんの知ってるスキルなんですか?」
もちろん俺は知らない。
流石にNPC関連のスキルまでは網羅してないからな。
廃人共ならまた話は変わってくるうだろうが。
「ああ。HPMPSPと魔法威力が二倍になって、更に敵から受けるダメージが半減するってスキルだね。聖女様限定のスキルさ」
二倍だけじゃないのかよ!
俺が95でサミー婆さんから教えて貰った
ずるさマックスもいいと所である。
まあバグ利用しまくってる俺が言うのもアレだが。
「えぐいスキルですね」
「ああ。あたしもマックスレベルの120で知恵者の祝福を取ってるけど、こっちは全部50%アップで防御効果はないからねぇ」
50%アップでも十分……ってちょっと待て!?
レベル120つったか?
「えーっと……サミーさんって、レベル120なんですか?」
因みに、OTLのレベルの上限は99である。
「ああ、当然だろ?こう見えて、世界を救った勇者パーティーの魔法使いなんだよ。レベルがカンストして当り前さ」
どうやら間違いなく彼女のレベルは120の様だ。
情報交換した時は、レベルの上限が違うなんて考えもしなかったから尋ねもしなかったが、まさかそこに食い違いがあろうとは……
そらババア強い訳だ。
だってレベルが20以上高いんだから。
あと、知恵者の祝福なんて素敵スキルも当然OTLにはない。
「いや、どうも俺とレベルのカンストが違うみたいなんで」
「ん?違うってのは?」
「OTLでは……つまり、俺のレベル上限は99なんですよ」
「そうなのかい?」
「はい」
「ふーん、出典の違いって奴かねぇ。まあでもあんた、レベルの割に相当強いから別にいいじゃないか」
「はぁ、まあそうですけど……」
強弱で言うなら、確かに今の俺はOTLプレイヤーの中でもダントツレベルだと思う。
ここから更にレジェンド+武器も手に入る訳だし、まだ伸びしろもある。
でもやっぱ、どうしても狡く感じてしまう。
同じ世界に放り込まれてるんだから、同じ仕様にしろよな。
まったく。
いや待てよ。
混ざってるんだったら、俺の上限も120になってる可能性も……
「かなりいいステータスしてるじゃないか。けど、確かにレベルの上限は99みたいだね」
サミー婆さんが何かの魔法――恐らく鑑定とかその辺りのなのだろう――を発動させ、俺の幻想を吹き飛ばす。
ふふ、果てしなく短い夢だったぜ。
「そう言えば、聖女のアンタはレベルいくつなんだい?」
「私は現在レベルは108になります」
108!?
当たり前の様に99突破してるのもそうだけど、俺より全然レベルたけぇじゃねぇか。
瞑想だけでそんなにもりもり経験値貰えるのかよ。
いくら何でも優遇されすぎだろうに。
いやまあ、ユミルが強くなるのはプラスに働くから俺的には歓迎するべき事ではあるんだが。
ドラゴンゾンビもお陰で一撃で倒せたわけだし。
「……」
その時、ふと思った。
俺は99が上限だ。
サミー婆さんは120だが、そもそも違うゲーム出身だ。
そして聖女であるユミルは存在自体が特別だから、99以上に上がる。
なら、明らかに枠からはみ出ているであろうバグリンはどうだろうか?
名前にバグなんてツイてる程だ。
こいつもレベルの壁を突破してるんじゃないだろうか?
「サミーさん。ちょっとバグリンの能力も見て貰ってもいいですか?」
「構わないよ」
サミーが再び魔法を使う。
今度はバグリンに向かって。
「む、見えないねぇ」
「ダメでしたか」
バグモンスターは鑑定できない様だ。
「なあバグリン。お前って後一個しかレベル上がりそうにないか?」
「ううん。もっともっといっぱいあがるよー」
駄目元でバグリンに直接聞いてみたら、嬉しい返事が返って来た。
「おおそうか!偉いぞバグリン!」
バグリンのレベルが上がる。
大量の補正が貰える。
実質俺のレベルアップに等しい!
俺最強!
いやー、本当にバグリンは良い子だなー。
ほっぺですりすりしちゃうぞ。
「えへへへへー」
ま、唯一不安点ががあるとすれば……
レベルを上げるための餌としてやれるレジェンド+装備の数に、制限がある点だ。
交換できる奴だけで、ちゃんとカンストまで持ってけるかな?
一応グレートレイドでも落ちはするんだが、確率がかなり低いっぽいからなぁ……
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