第36話 呪い
――エリクサー・聖女の祈り。
聖女が生み出した唯一無二の回復薬。
HP・MP・SPが全回復し、攻撃力と防御力が10分間50%増加する。
再使用時間・3分。
――虹のペンダント・聖女の願い。
聖女が生み出した唯一無二のタリスマン。
HP・MP・SPが30%。
筋力・敏捷・体力・器用・魔力・幸運が20づつ上昇する。
・特殊オプション【想い】
聖女と距離を無視して念話での更新が可能。
・特殊オプション【不屈の英雄】
HPが0になった際、死亡する事無く全てのステータスが二倍になって全回復する。
ステータス増幅効果・1時間。
再使用時間・2時間。
・特殊オプション【愛】
聖女ユミルの分身である光の精霊を召喚。
召喚された精霊は聖女ユミルの能力に準拠し、聖女がコントロールするか、それが出来ないい場合は自動で行動する。
・特殊オプション【転】
MPを消費し、物理法則を無視して瞬間移動する。
距離1から20メートルで、消費MPは距離×5。
再使用時間・10秒。
・特殊オプション【破】
究極の光の一撃、ゴッドブロウを放つ。
再使用時間・5分。
・特殊オプション【絆】
一度装備すると装備解除が出来なくなり、取得経験値が50%ダウンする。
「……え?」
インベントリに入れた二つのアイテムの確認し、その強力な効果に満悦だった俺だが、ペンダントの最後の特殊効果に目を通して驚く。
『一度装備すると装備解除が出来なくなり、取得経験値が50%ダウンする』
「なんでこんなデバフが混ざってるんだ?」
これではまるで呪いの装備である。
あれ?
でも待てよ?
今思いっきり首から外してインベントリに入れてるんだが?
「どういう事だ?装備からは外れてるよな……あっ!」
ステータスを確認してみると、インベントリに入っているタリスマンが装備されたままの扱いだった。
どうやら外したりインベントリに入れても装備している判定の様だ。
捨てても戻ってきそうだな……
こっわ。
「聖女が作った捨てられない呪いの装備と来たか……」
正直、装備解除できないのは大したデメリットではない。
この効果なら常用で全く問題ない程強力だからだ。
仮に他のタリスマンを手に入れたとしても、これの代わりになる様な物はないと断言できる。
問題は経験値のマイナス効果だ。
90以降は必要経験値が10倍以上跳ね上がる。
そのため、レベルアップには相当時間がかかる仕様となっていた。
なので経験値が半減するという事は、その長い時間が倍になってしまう事を意味している。
「うーん……でもま、いっか」
これがショボい装備の呪いなら憤慨物だが、それを補って余りある能力をこのペンダントは秘めている。
それに比べれば、レベルアップの時間が倍になるぐらいどうって事はない。
「今の俺は時間を気にする必要ないしな」
無限増殖バグをつかえるこのゲーム世界において、俺を縛るしがらみの様なものは何もない。
そう、自由なのだ。
だからレベル上げが倍になった所で、大した問題とはならない。
「だいたいレベルがカンストさえすれば、このデメリットはなくなる訳だしな。誤差誤差」
実質無料!
全然関連はない気もするが、何故かそんな言葉が頭に浮かぶ。
「にしても、本当に強力だな」
ステータスの超上昇効果に加え。
死んでも超強化して復活とか。
瞬間移動とか。
聖女の分身召喚とか。
そしてゴッドブロウなる、強そうな名前の攻撃スキルまで使えると来ている。
デメリット部分を考慮しても完全に神装備以外何物でもない。
「宿に戻ったらバグリンに攻撃して貰って一度死んで……いや、でも瞬間的な痛み自体はあるからなぁ……」
ステータスが二倍になるなら、製作成功率も二倍になる。
そうすれば時短できる訳だが、如何せん痛みの部分がネックだ。
「別に痛い思いしてまで短縮する意味なんかないよな。よし、やめとこう」
チキった俺は、【不屈の英雄】の効果は使わない事を決める。
器用と幸運が20づつ上がっているし、それで満足するとしよう。
これはあくまでも死んだ際の保険って事で。
「さーて、さっさと宿に帰って製作の続きすっか」
さあ、レジェンド装備製作だ!
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