第31話 なんかイベントの方からやって来た

「よし!89達成!」


『たっせいだー』


バグリンのレベルが89に達成する。


「取り敢えず……まだ上がるか一応確認しないとな」


駄目だとは思うが、決めつけは良くないからな。

俺は再度SSSランク武器を作り、それをバグリンに食わせてみる。


「まだ上がりそうか?」


『んーん。でもおいしいよー』


ま、分かってはいたがやはりだめだった様だ。


「そっか。じゃあ次はレジェンド武器だな」


幸運は補正込みで99だ。

ここからは6%強の成功率で、更に0.5%を引き当てる作業になる。


いくら素材アイテムが無限とは言え、確率を考えると骨でなんだよな……


ま、確実に手に入る訳だから、それすらも時短したいとか考えるのは流石に我儘すぎるが。


「ま、頑張ると――ん?」


その時、宿の扉がノックされる。


「誰だ?」


俺を尋ねて来る人間に心当たりがなく、首を捻る。

この世界での知り合いと言えば、アックスかバッカスくらいなものだが……彼らとは知り合い程度で、別段仲がいいわけではなかった。

なので、宿の場所など一々教えたりはしていない。


「どちらさん」


再度ノックされ、取り敢えず誰が来たのか扉を開けて確認してみた。

一応、外からは見えない様に短剣を左手に装備して。


世の中何があるか分からないからな。

押し込み強盗なんかの可能性も考慮し解かんと。


「初めまして。わたくし、ハーミール教の司祭のデトロスと――」


「間に合ってるんで結構です」


ドアを開けたら、そこにはローブ姿の司祭っぽい人間が2人いた。

なので速攻で扉を閉じた。


「まさかゲーム世界に来てまで宗教の勧誘を受ける事になるとはな」


宗教恐るべしである。


「あの、お話を……」


「しつけぇな」


断りの言葉を告げたってのに、しつこくドアがノックされる。


ほんと、宗教ってしつこくていやだぜ。

これで自分達は良い事してる気になってるんだから手に負えない。

こっちにとっては迷惑以外何物でもないってのに。


「どうかお話を……」


更にノックされる。


「悪いけど、俺は宗教なんざ興味ないんだよ。しつこくするなら容赦しねぇぞ」


余りにもしつこいので、ドアを開けて脅しつけてやった。

抜き身のナイフ片手に。

さっさと失せろ。

シッシッ。


「あ、あの、落ち着いてください。我々は勧誘に来たのではありません。聖女様の遣いとして、タカダ様にお会いしに来たのです」


「聖女?」


聖女?

新しく就任したって奴か?

なんで聖女が?


「はい。そうです。ですので……その……武器をしまって頂けると有難いのですが……」


「ふむ……」


此方の名前も知ってる様みたいだし、まあ本当に勧誘ではないっぽいな。

俺は手にしていた短剣を腰の鞘に納める。


「で?聖女様が俺になんの様だ?」


「はい。是非ともタカダ様にお礼がしたいとおっしゃられて」


「礼?杖の件の事なら、ちゃんともう報酬は貰ってるけど?」


「いえ。ハーミール教納められた杖ではなく、以前命を救ってくださった事に対してお礼をしたいそうで」


「命を救った?」


聖女とは面識などない。

というか、俺が面識のある女性自体が皆無だ。

当然面識がない訳だから、聖女を救ったなどという事実は成立しえない。


そもそも俺、人助けとかやった事ないからな……


「人違いじゃないか?同名の別人とか」


名前は一致しているが、高田なんてありふれた名前だ。

いやまあ、異世界だとそうでもないんかな?

とは言え、俺以外いいないって事も無いだろう。


「いえ、間違いないかと。場所もあっておりますし、特徴も完全に一致しておりますので……」


場所と名前と特徴が一致してるならまあ、俺って事でいいんだよな。

けどその情報はそもそもどうやって手に入れたんだ?


「まあ仮にそれが俺だとして……なんで場所が分かったんだ?俺は誰かに自分の居場所なんて告げてないんだが?」


「ほっほっほ、それは聖女様の奇跡の御業と申しましょうか」


「奇跡の御業……ああ、ひょっとしてユニークスキルか」


このゲームのNPCの中には、プレイヤーでは持ちえない固有のスキルを持っている者がいたりする。


相手は仮にも聖女なんて御大層な肩書持ちだ。

なんらかの情報系の特殊なスキルを持っていてもおかしくはない。


「奇跡の御業で御座います」


司祭が笑顔で訂正して来る。

どうやら彼らの中でそこは譲れないらしい。


これだから宗教は……


「まあこの際御業でもなんでもいいけど……それで?お礼って何してくれるんだ?言っとくけど、言葉ならこっちも暇じゃないんでお断りだぞ。あ、後、金にも困ってないからな」


「……」


俺の言葉に司祭の二人が顔を引きつらせた。


自分から出向いて「その節はどうも」って言うんならともかく、此処にいないって事は俺を呼び出すつもりなのは明白だ。

まあ立場上しかたない事なのかもしれないが、こっちがそれをおもんばかってやる謂れなどない。

だからそれ相応の誠意が無いようなら無視する。


当たり前だよな?


「で?どうなんだ?何にもないなら帰れ」


「あ、い、いえ。もちろん貴重なお礼品を用意させて頂いております」


「本当か?もし嘘だったら……俺、聖女を罵らずに済ませる自信がないけど?」


まあもちろんこれは只の脅しだ。

実際に罵ったら死ぬ程険悪なムードになってしまうからな。

せいぜいちょっとした嫌味を言うぐらいのもんである。


「ご、ご安心ください。貴重な品と聞き及んでおりますので……」


「そうかい。じゃあお礼を貰いに行くとするよ」


俺は司祭に連れられ、ハーミール教の神殿へと向かう。


さて、なーにくれるかな。

エリクサーとかだと死ぬ程有難いんだが。


後、聖女って結局誰だ?

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