第9話 ロストモンスター

「あれ?」


イベント終了後、三日ほどかけてレベル50になった俺は『きりがいいし』とかいう感覚的な理由で、Aランク装備制作に必要なミスリルを手に入れる為にミスリルダンジョンと呼ばれる場所を訪れていた。


ここは元々、初心者用のダンジョンだった場所だ。

だが、他に効率の良い狩場がアップデートで追加されてからは見向きもされなくなったため、最終的には完全リニューアルされ今の状態に落ち着いていた。


主な魔物はミスリルゴーレム系な訳だが、狩りをしているとそこに何故か青色のぷよぷよした魔物がぽつんと一匹混ざっている事に気付き、俺は首を傾げる。


「あれってひょっとして……スライムか?」


スライム。

ファンタジー系のゲームならよく見る、おなじみの雑魚モンスターだ。

OTLにも昔――俺が始める前に――はいたそうだが、アップデートで消されてしまった最弱モンスターである。


何でも、運営のトップの孫が殴られて弾け飛ぶスライムを見て可哀想だと言った事から消されたとかなんとか。

ま、あくまでも噂だが。


なので現在、OTL内でスライムの姿を見れるのは、初期からのプレイヤーがテイムした従魔に限られていた。


「そういやここ。元々はスライムの出る場所だったっけか」


かつて出たモンスターのポップ。

何かのバグだろうか?


「むう。スライムなんて何の役にも立たない雑魚な訳だが……古参しか持てないテイムモンスターと考えると……」


既に手に入らない、古参の証的な存在。

それがテイムされたスライムだ。


これがゲーム内なら迷わずテイムするところだが、此処はゲーム世界である。

他のプレイヤーにドヤ顔できる訳も無く、そのため、連れて歩くメリットはほぼ皆無だ。


だが、なんとなく欲しい。


そう、なんとなく欲しいのだ!


「ランク1ならスキルポントはいらないけど……でも、デスペナルティがあるからなぁ……」


引っかかるのはデスペナルティだ。

テイムモンスターは死ぬと消滅し、その飼い主はペナルティとして総経験値の10%を失う事になる。


全体の10%は結構と言うか、無茶苦茶デカイ。

ましてや、最弱のスライムとか直ぐ死ぬのは目に見えている。

言ってしまえば、スライムのテイムは経験値地雷を引き連れる様な物だ。


「うーん……レベルは下がらない仕様だから、カンストしてからテイムするってのが一番丸いんだろうけど……」


問題は、このスライムがずっとこの場に居続ける保証がない点だ。

バグでぽっと発生した個体だと考えると、いつ消えてもおかしくはない。

仮に消えなかったとしても、他の誰かに狩られるかテイムされる可能性も出て来る。


そう考えると、今この瞬間こそが最後のチャンスと言う可能性も……


「よし!テイムしよう!」


ペナルティはアレだが、どうせこの世界で生きて行かなければならないのだ。

経験値が減ったらその分狩ればいいさ。

まあ勿論、そんな物はない方が絶対良いので、死なせない様気を付けはするが。


俺は速攻で街に戻ってテイマーギルドを尋ね、そこでイベントを熟してスキルを習得。

テイム用のアイテムを購入し、ダンジョンへと急いで戻って来る。


「よし、まだいるな」


俺はスライムにテイムアイテムを使う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る