第10話 いや、名前に入ってんのかよ
――テイム。
それはテイマースキルを持つ者が、特定のモンスターを手なずける事を指す。
OTLにもその要素があり、ファッション感覚でモンスターをテイムする物もいるが、死亡時の完全消滅や経験値ペナルティの重さ、最高ランクですら大した強さでない事からガチ勢にはほぼスルーされている――レベルダウンがない仕様なので、一見レベルカンストならありかと思うかもしれないが、守るのが面倒くさいと言う理由で結局見向きもされない。
テイム出来るモンスターには等級があり、最高が11となっている。
獲得できるテイムモンスターのランクはスキルレベル+1で、ランク1のモンスターをテイムするだけならスキルポイントを裂く必要がないためリーズナブルだが、当然ランクが低いとその分更に糞弱くなってしまう。
また、テイム時には専用のアイテムを使う事になるのだが、ランクが高い程その成功率は低く、11ランクに至っては一万分の一以下と言われていた。
なのでアイテム999――最大所持数――個程度でテイムできる事は稀で、アイテムを買いに戻って使い切ってまた買いに行ってを繰り返すのが基本となっている。
で、だ。
俺のテイムしようとしているスライムのランクは1。
まあ最弱のモンスターだからそこは当たり前だよな。
そしてその成功率は10%程なので、楽勝でテイム出来る。
とか思っていたのだが――
「おかしくね」
――既に100回近く失敗していた。
「リアルラック悪すぎ?」
まあ10%程度なら、100回ぐらい嵌まる事は稀によくある。
スマホゲーのガチャをした事のある者にとって、それくらいは常識に等しい話だ。
「ま、その内テイムできるだろう」
因みに、テイムできないモンスターにはアイテム自体使えないので、バグモンスターだからテイム対象じゃないって事はなかった。
俺は単に運が悪いだけだろうと思い、そのままアイテムを使い続ける。
何せこちとら無限増殖持ちだ。
多少嵌まった所でビクともしないからな。
はっはっは。
「……はぁ、まじか」
それから500回は投げただろうか。
スライムは微動だにする事無く、俺のテイムを拒み続けた。
正に鉄壁。
此処まで来ると、流石にこんな思いが浮かび上がってくる。
バグモンスターだからテイムできないんじゃね?
という考えだ。
「時間の無駄だったか……いや、ひょっとしたらバグモンスターだからバグで確率が凄く低くなってしまっているって可能性も……」
正直、どっちとも言える状態だ。
だから迷う。
引くのか進むのか。
「むむむ……まあ、出来なくても多少時間を無駄にするだけだからな。取り敢えず続けてみよう」
日常生活があるならともかく、今はこの世界が日常だ。
流石に何日もかける気はないが、数時間ぐらい粘っても罰は当たらないだろう。
アイテムは無限に使える訳だし。
そう判断した俺はテイムを続ける。
そして――
「きたーーーーーーーー!!」
――遂にテイムが成功する。
だいたい6時間程かかっただろうか。
たぶん、アイテムは一万個以上使っただろう。
だがなんにせよ成功だ。
頑張ったな、俺。
自分で自分を褒めて上げよう。
「ふぅ。出来るかどうかわからない状態で我を通したから、中々の達成感だぜ。どれどれ、ステータスでも……ん?」
俺はテイムしたスライムのステータスを確認する。
するとそこには――
『バグスライム』と出ていた。
「いや、名前にまんまバグっては入ってんのかよ!!」
広い洞窟に、俺の突っ込みが響く。
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