第3話 種銭
「ヒールリーフは普通に拾えるな」
俺は落ちていたドロップ品を拾い上げる。
上限数に達しているためインベントリへの回収は出来ないが、こうやって手に取って拾う事は出来た。
この辺りはゲームと、ゲーム世界の違いって感じだな。
「ポケットはどうだ?」
試しにポケットに入れてみる。
特に弾かれたりはせず、所持は可能だった。
「おお、これならいつでも増殖し放題だな」
増殖バグを行うには、店売りしていないドロップ品でエラーを起こす必要があるのだが、1000個目をインベントリ外で持ち運べるのなら、バグの為に一々魔物を狩る必要がなくなる。
非常にありがたい仕様だ。
「じゃあ換金しに行くとしよう」
俺は狩場を離れ、街へと戻った。
今回増やしたアイテム類を売って金にする為に。
そしてその金でより高額なアイテムを増殖させ、更に効率よく金を稼ぐ算段だ。
街に戻った俺は、風呂敷をいくつか買って人目のない所で――何となく後ろ暗い気分なため――インベントリからアイテムを取り出した。
訳だが――
「面倒くさいな……」
インベントリからアイテムを出す際は、一個一個取り出す必要があった。
なので取り出す作業を998回しなければならない――運営は一気にアイテムを受け渡しできない様にしている。
正確には3種類増やしたので、合計2994回だ。
因みに999個取り出さないのは、いつでも増殖できる様に一個残しておくためである。
増殖換金は高額品にシフトするとは言え、ポーションなんかは普通に使ったりするしな。
「おっも……」
ポーション300個出したあたりで風呂敷が限界になったので、持ち上げてみたら結構な重量だった。
「複数持ち運ぶのは無理だな。筋力を上げればもっと一気に持てるんだろうけど、バグありプランは筋力は上げないし」
ステータスの配分はもう決まっていた。
因みに、OTLはレベルアップ時にステータスポイントが配分されて自由に振り分けるタイプのゲームだ。
一レベルにつき二ポイント。
言うまでも無く、このゲーム世界も同じ仕様である。
「この世界に高ランクの装備が出回ってないのはもうわかってるからな。自分で作らんと」
冒険者ギルドでちょろっと情報収集した感じだと、SSランク武器が王家の至宝扱いされてる様だった。
装備にはランクが設定されており、Fが最低で、E、Dと上がって行き、A以降はS、SS、SSSと表示される。
そして更にその上には、レジェンド、EXレジェンドというランクがあった。
上から4番目にあるSSランクはゲーム内だと、
そんな物が王家の至宝になっているのだから、世界全体に流通している装備の品質はお察しである。
んでまあ、このゲームは装備で強さが大きく左右される――特に高ランクは――バランスになっていた。
勿論、ステータス配分やスキル構成、それにプレイヤースキルも大事だが、OTLにおいて一番物を言うのはやはり装備である。
だから俺は自分で装備を作るため、制作特化のステータスにするつもりだ。
ステータス的にあまり戦闘向けではくなってしまうが、それでも強装備を身に着けられるなら、その程度は容易く跳ね返せるくらい強くなれる。
「バグが無かったら、絶対考えなかっただろうけどな」
高ランク装備制作には、高額な素材が大量に必要となって来る。
なので俺の計画は増殖バグありきだ。
「全部で179、640ギルか」
売ったのは三種類。
ポーション(100ギル)と解毒ポーション(120ギル)、それに銅鉱石(500ギル)だ。
基本、売値は買値の4分の一になるので、売単価は25ギル、30ギルと、125ギルになる。
で、それぞれを998個売って合計したのが179、640ギル。
因みに途中から運ぶのが面倒くさくなって――銅鉱石とかデカくて重かったし――直接アイテムを出したら『あんた面白いスキルを持ってるなぁ』とか驚かれたが、まあそんな事は別にどうでもいいだろう。
「さて……種銭も出来た事だし、この金で高額品を買うとしよう」
単価を上げて効率よくお金稼ぎだ。
冒険者ギルドと提携しいてる買取屋を出た俺は、次は制作用素材アイテムを販売している店へと向かう。
街で売ってるアイテム系の販売品で一番高いのは、制作用アイテムだからだ。
因みに、装備品とかは増やせない。
強化とかがあるため、インベントリ内で一纏めに出来ない為だと思われる。
装備品まで増やせたらもっと簡単だったんだけどな。
まあ出来ない物はしょうがない。
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