第2話 開始!
「ダメか……」
増殖バグをしてから既に1時間経つ。
ポーション以外も同じ様に増やしてみたのだが、
「GMはいないって事か……まあ他に方法があるのかもしれないけど、今の所は帰還は出来ないって割り切った方が良さそうだな」
ゲームは好きだが、ゲーム世界で一生を過ごすのはノーサンキュー。
そんな思いからバグを使ってGMとの接触を試みたのだが、どうやらその類の存在はいない様だ。
「どうしたもんかな……」
俺は少し迷う。
何に?
増殖バグの事だ。
ゲーム時代は運営による厳しい監視があったのと、俺自身、多人数系のゲームでそれをするのは好ましくないと思っていた。
だが、ここはゲームそのままの世界であっても、ゲームではない。
他にプレイヤーなどはいないのだ。
ならば我慢する必要は……
いや、ちょっと待てよ。
ひょっとしたら、他のプレイヤーもここに連れて来られてる可能性もあるか。
「そうなるとバグ使用は……うーむ……」
他プレイヤーの事を考えるのなら、バグ使用は控えるべきだろう。
だが、居るか居ないかも分からない者達に気遣うのも何だかばからしい。
「ぶっちゃけ……バグ使用プレイしてみたいんだよな」
OTL内における俺は、よく見積もっても中の中って所だった。
とてもではないが
ゲーム好きならもっと頑張れよ?
いやまあそうなんだけどさあ、人間色々と事情がある訳よ。
俺が微妙なポジションにいた理由は三つ。
そもそもゲームを始めるのが遅かった事――先を走ってる連中は、ウサギと亀のウサギの様に立ち止まってはくれないからな。
それと苦学生って程ではないが、ある程度生活費を稼ぐためにどうしてもプレイ時間が少なくなりがちだった事。
そして最も大きかったのが、ソロ専――誰とも組まず寂しく一人プレイ――だった事だ。
「仮に俺が初期組でプレイ時間をガッツリ取れてても、ソロじゃ限界があるんだよなぁ」
普通にプレイしていたのでは、廃人層の場所まで辿り着く事は出来ない。
強くなるためには、同じ志をもつ仲間が絶対に必要不可欠だ。
じゃあ仲間を作ればいい?
それが出来たら苦労しないっての。
何故なら……俺はコミュ障だから。
他人と接触したり、話したりが真面に出来ない程酷い訳じゃない。
ただ果てしなく面倒臭く感じてしまうのだ。
他人に気を使う事が。
なんで楽しむためのゲーム内でまで、他人に気を使わなきゃならないんだって話。
「よし決めた!バグは使いまくる!そしてトップ層と同じようなEXレジェンド装備を手に入れて見せる!!」
ソロの限界を超える為。
そのために俺はバグを使用する。
もう決めた。
やると言ったらやる。
そして俺は最強装備を手に入れるのだ!
「だいたい、他にプレイヤーが居てもそいつらもきっとバグを使うに決まってるしな」
制限をかける運営が居ない以上、そうなる可能性は高い。
人間ってのはそう言う生き物だ。
なので、俺だけが気にする事自体ナンセンスである。
「よーし!じゃあ俺の最強伝説、かっこバグあり始動だ!」
こうして始まる。
俺の自重しない、バグによるゲーム世界攻略が。
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