第七話 決裂

 エミリちゃんなら何か知ってるかもしれない。前にチバさんがワタシの悪口を言いふらしてるのを教えてくれた。寝起きの喉の渇きや尿意を感じつつ、親指を素早く動かしメッセージを打つ。


『一方的に悪者にされてメッセージとか晒されてるんだけど、何か知らない』

『知ってるよ。チバさん以外からも相談受けたから』

『こういう嫌がらせ、やめてくれるようにエミリちゃんから言ってくれないかな』

『チバさんとか他の男の人達が怒るのも無理ないと思うよ』

『ワタシは何も悪いことしてないよ。悪いのは男の方』

『そうかな。ミッシー、気を持たせるようなこと言って男の人からお金とか洋服とかもらってたのは悪くないの』

『ないよ。だって話してあげてるんだから。それくらい当然。キャバクラだって、カウンセリングだって有料だよ』

『有料のサービスとわかってて払うのとは違うと思うけど』

『男なんて下心あるからお金やプレゼントをくれるんだよ。やましい魂胆があるんだよ』

『全ての男の人がそうだとは限らないよ。それに年齢や外見を偽るのはどうかと思う』

『なんで、エミリちゃんだって可愛くなるように加工したりするでしょ』

『そうだけど、あくまで写ってるのは自分じゃん』

『外見で女子を判断する男が全部悪いんだよ。意味わかんない』

『好きになりそう。こんなに優しくしてくれる人なんて今までいなかった。こんな彼氏がいたら幸せなのにとか言って、変に期待させたのは何なの?』

『はっ。なんでワタシだけ、こんなに批判されなきゃならないの。奢ってもらったり、プレゼントもらう女なて山ほどいるのに。もう話したくない』


 会話が途中だったがエミリをブロックした。女の敵だ。


 グミを食べて気分を落ち着かせようとするが、顎の食いしばりを解くことが出来ず思うように噛めない。


 咄嗟にエミリからもらった誕生日プレゼントの箱を凹むくらい強く掴むと、ありったけの力で壁に投げつける。大きな音を立て壊れた箱から幾つかのハンドクリームのチューブが床に落ちる。一つだけ違和感のする音がした。


 ダサいキーホルダー。こんなもの見た記憶がない。変な胸騒ぎを覚えインターネットで探してみると、位置情報がわかるスマートタグだった。


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