第八話 反撃

 踵を鳴らし歩み寄った学習机の引き出しからカッターを取り出す。左腕に刃先を当て手前に引く。血が滲み出る。『心無い人に嫌がらせをされて傷ついた』と一言添えて、その画像をSwitterに投稿する。


 すると、いつもより数は減ったけどコメントがつく。『ミッシーを傷つけるなんて許せない』、『ちなみに誰なの』、『仕返ししてやりたい』、『誰かにガセの情報流されてハメられたんだよね』、『よしよし、気持ちが少しでも楽になりますように』とコメントがつく。


 何人かに個別にメッセージを送り、チバとエミリに攻撃された旨を伝えると、そのうち天誅てんちゅうさんという一人のフォロワーから『徹底的に追い詰めておくね』、『潰すわ』、『アカウントを凍結させやる』と返事が来た。


 ぜひお願いしますと伝えるとスマホを置き、背もたれに寄りかかりながら、意識的にゆっくりと呼吸を整える。その度にお腹が膨らんだり凹んだりするのが見える。段々とガムを咀嚼できようになった。


 もうフォロー離れ防止するための自撮り写真を撮る気はしなかった。天誅さんの報復を確認したら、このSwitterアカウントは削除しよう。


 削除してしまえば、繋がる人を全てブロックできる。そして、また新しい別のキャラになり新規アカウントを作れば、そのブロックを解除できるも同然だ。これまでも何回かこのやり方をしてきた。

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