第37話 ボコボコです!

「いやー、まさかのエッさんが来るとはねー」

「それはこちらのセリフです、クローディオ様」

「……状況が読み込めないんですが。説明お願いしても宜しいですかな?」

「あらあら。クロちゃん、お茶どうぞ」

「わー、ありがとうー」


そう言ってお茶を飲んでまったりするクロ。

……エクチルさんがガチガチに固まってるんだけど。

な、何事ですかな?

エクチルさんって悠久を生きる長命なエルフの方ですよね?


「エクチルさん、クロとはどういうご関係で?」

「く、クロ?クローディオ様、クロと呼ばせているんですか?!」

「まぁ、本名長いし?最初はトカゲ野郎とか言って殴ってきたからねー。それに比べたら名前が少し入ってるし、いいかなーって」

「そんな雑な……ゴホン、センタロー様。この方がどのような御方か、ご存知ですかな?」

「……どのような、と言われても」

「よく食べよく寝てよく遊ぶ。いい子じゃないですか?」

「よ!カズハ!わかってるー」


これ、婆さん。

クロをおだてるでない。

話が進まん。

ほらー、エクチルさんが固まってしもた。

とりあえずお茶を飲んでもろで……


「……ぷはっ。リョクチャは落ち着くな。あ、落ち着きますね。ではクローディオ様がどんな御方かと言いますと……」

「その前に、口調どーにかなりませんかな?堅苦しくて聞きにくいですわい」

「そうそう。エッさん前はそんな口調じゃなかったでしょ?ボクに爆撃してきたりしてさー」

「……あの時は無知だったからです。今は知識をつけたので、クローディオ様の前で無礼は働けません」

「もー、そんなの気にしないってのー」


クロが呆れるけどエクチルさんはガチガチのまま。

これがそんなに偉いのかね?

人の布団で寝るし。

飯食べても口ベトベトに汚すし。

孫たちにゲームに負けて顔中落書きされてるし。

寝起きワイバーンしばかれてるし。

龍ってだけでそこまで偉いわけでは……


「あ!そういえば。お爺さん、昔ネスさんが言ってませんでした?」

「ネスさん?……あぁ!創成の黒龍伝説!確か大地の女神と天空の黒竜がこの世界を作ったとか何とか。クロが自慢げに喋って来てのう……ウザくて何度殴りつけたことか。あの話が何じゃって?」

「な、殴りつけた?!クローディオ様を?」

「そうなんだよー。このジジイ、ボクを殴りつけてあまつさえ甘いものすら奪うんだよ?ひどくない?!ボクに殴りつけてきたのはシンイチも一緒だけど彼はボクを敬ってくれたにさー」

「……敬うも何も勝手に村の備蓄のはちみつを舐めたのが悪い」


ほんと、冬場の糖は命に関わるんじゃからな!

勝手にぺろぺろ舐めよって……

半殺しにしようとボッコボコに殴ってたらネスさん達に止められたっけか。

懐かしい記憶じゃわい。




……あれ?エクチルさん?

……き、気絶してる?!

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