第15話 流石は勇者様の村!その1 ~フランツ・フィードルフィ~

「ハイポーションにエーテル……この解毒薬は、なんて色の濃さだ!こんな色の解毒薬は王都でも見たことがない!」

「お、兄ちゃんわかるか?この辺はモンスターも強いが薬草も強いんだ。……毒性も強いがな。という訳でポーションの質も上がるってもんよ。ま、平均的なポーションの質なんてのは俺にゃ分かんねぇから先々代の知識でやってるんだが」

「薬屋のミロロさんは村一番の薬師なんです。先々代のホロロさんから直に教わったお弟子さんなんです」

「……なるほど。これでも一応探索者ですから。先輩から『ポーションの質は命に関わる』って教えられて知識はしっかり入れてます……それにしても、これは……」


俺の手にあるのはどう見てもポーションの最上級品だ。

ハイポーション、いや上級ハイポーションと言ってもいいだろう。

解毒薬にしたってそうだ。

万能薬とも言われても疑いようがない……!

ただの薬屋でこのレベルとは……勇者の村『リュウガタケ』……恐ろしい所だ。


俺は村の住人であるセキという青年に案内されて村の広場にいる。

この村、周りが城壁に囲まれているが中は区分けされていて見た目以上に広く感じる。

セキさんに教えてもらったがこの村、大きくわけて三区画あるらしい。

今いるのは一番下の商業区、通称『龍の尾』。

目の前の薬屋しかり、食堂や雑貨屋、なんと学校まである。

ここの学校は保育所も兼ねているそうで赤子も一緒に授業に参加しているそう。

それは参加ではなく寝ているのでは?というツッコミは野暮だな、うん。


「外から来た兄ちゃん!このバッグ買っていかねぇか!?この村じゃ物々交換になるんだが外のもんが欲しいんだ!」

「ンな!このバッグ!素材はレッドテールサーペントなんダナ!高級革製品の代名詞なんダナー!しかも欲しがっているのがこの使い古したバッグなんて!?ダメすぎるんダナ?!」

「いいっていいって!俺っちは外の世界なんて見たことねぇんだ!外の世界の鞄職人の技術が見たいんだ!」

「……これ、オートマタで作られた既製品なんダナ。技術とかそんなものは無いんダナ」

「オートマタ!?ってことはゴーレムで作られているのか!尚更欲しいぞ?!オートマタなんてセンタロー様ぐらいしか使えないからな!」


リームは鞄屋で押し売りされているようだ。

押し売りしてくる品物が最上級の革製品なのは如何かと思うけども。

レッドテールサーペントって俺でも知っているモンスターだぞ。

石をも溶かす毒を吐き、締め付けられれば鉄の鎧ですら紙のようにぐしゃりと潰す。

危険度が高すぎてソロ討伐は禁止されているほどだ。

強さもだが、警戒心も強いので市場に出回らないことでも知られている。

ついこの前王都のオークションで人の大きさの皮が金貨1万枚で取引されたってギルドの掲示板に書いてあったな。

金貨1万枚とか、平民なら一生働かなくても暮らして行ける額だぞ……

そんなもので作られたカバンなんて……


持っておくだけで肝が冷えるな……

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