第11話 村まで一緒に
「さぁさぁ、見えてきましたぞ。あれが儂らの村じゃよ」
「お爺さん、押してくれてありがとうねー」
「なーに、婆さんは軽いから力が要らんわい」
「もう!お爺さんったら」
『……惚気は自宅でやりなよ』
クロが呆れた目で見てくる。
……いつまで経っても惚気たいんじゃい。
道づくりの拠点から儂らの村までみんなで歩いてきました。
いやー、道整備しててよかったわい。
クロの背中に乗って空を飛ぼうとしたらフランさん達が振り落とされそうになったからのう。
儂?儂は婆さんの車椅子を押してクロと併走しただけじゃよ。
まだまだ足は動くようで良かったわい。
フランさん達の連れは探してみたけど近くにはいなかった。
クロ曰く、はるか遠く、街道の近くに数人ほど魔力が強い人達が固まって行動しているそう。
フランさんに聞いたら魔力の感じ的に別チームっぽいそうな。
人数が聞いた限り少ないから恐らく森のモンスター達にやられたようだ。
ここは弱肉強食の世界。
致し方無し。
合掌。
「……さて、村のもんはすぐそこですじゃ!フランさん、クロから降りて歩きましょう。そろそろ暗くなりますぞ。流石に夜の森は危険ですぞ」
「……あ、ありがとうございます。ですが、こんな村、見たことないですよ」
「……んダナー。俺の村なんてここの半分のないんダナー。でっかい門なんダナー」
「……私の実家の保養地の村と比較しても数倍発展してますわ……!こ、これは村ではなくて町では?!」
「櫓に堀に木の柵……はっ、柵の下はホワイトグラビティストーンの石垣か!……猛獣対策にしても堅牢過ぎないか?国境付近の城塞レベルだろ……」
……あ、これは。
異世界特有のアレですな。
なんとこの歳になってラノベを思い出すとは。
俺、なんかやっちゃいました?ってやつじゃな!
「……まぁ、比較対象が今まで無かったですからのう。あの時は命懸けで人々も守らねば、と思っておりましたし。ちょっと異世界の知識と儂と婆さんの魔力でやってしまいましたわい。ホッホッホッ」
「ふふっ、そんなことは無いですよお爺さん。この堀なんてワイバーンを捻りながら一晩で作ったじゃないですか。ネスさんが怒鳴りつけた事件」
「あれこそ理不尽極まりないぞい。こっちは寝る間も惜しんで堀作ったのに……まぁ、命捨てる覚悟じゃったからのう」
『へーそーなのかー。センタローたまに命投げ捨てるもんねー。あ、この魔力。そろそろニンゲンになるかー』
クロがそう言って4人を下ろしたあと光り始める。
光が収まるとそこには背の高い人が。
真っ黒の角に白い髪、背は高いけど中性的な顔。
この顔、ガチでイケメン。
村のメンバーで数人ガチ恋しとったもんな。
いやー……あの時は大変じゃった。
これがクロの人型の姿。
これで儂のベットで寝とるんじゃもんなー……
一時期不倫とか言われて頭抱えたわい……
「ふぃー、やっぱ人は背が低い!見にくいったらありゃしないよー。歩幅も小さいしさー、不便すぎない?腰の筋肉も弱いしさー、ポキッといっちゃいそう」
「そこ言われても儂らには分からんよ。腰は儂もどーにかして欲しい……で、魔力と言っとったが、誰か来るんかのう?」
「あ、お爺さん!向こうを見て」
婆さんの指さす方向を見ると槍を構えた男達の姿が。
各々槍や剣を持って走ってくる。
先頭にいるのは赤い布が巻かれた槍を持つ男が……
「じいちゃん!この時間になんでまた!?」
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