第10話 婆さんの回復魔法

「おじーさーん、こちら終わりましたよー。おや、そちらも無事ですね」

『なーんだ、誰も死んでないじゃーん』

「こらクロ。そういうこと言わないのよ」

『……無詠唱で岩落とすのはNG』


ガサガサと音がしたと思うとクロと婆さんが顔を出した。

クロの頭に車椅子に乗っているのは何か違和感半端ないのう……

後ろにいたフランさん達は口を開けて放心状態です。

そりゃそうだ、だってドラゴンだもん。

Theファンタジーの王道、ボスキャラ筆頭。

しかも黒はどのファンタジーでもラスボスクラスじゃし。

普通の人からしたら生きた気持ちしないもんだ。


「これクロ。もう少し小さくなってから出てこんか!フランさん達が驚いて固まってしもたわい」

『えーボクのせい?ドラゴン見たら固まるのは生物の性だってー。固まらないのはセンタローと子ども達ぐらいだって』

「まぁまぁ……あら、皆さんまだ傷が完全に治っていませんね。『ワイドヒール』」


婆さんが魔法を発動する。

周りに暖かい風が吹き、みるみる体力が回復する。

婆さんは回復補助魔法を使わせたら右に出る者はいない。

……まぁ、村の中で魔法使えるのが少ないから比較対象が儂かクロなんじゃが。

それでも転生前から他のヒーラーより能力があったからのう。

転生時のボーナス的なやつで強くなったんじゃろうて。


「……はっ!気絶していた。あれ?腕の痛みが?!」

「んな!古傷が取れたんダナー!」

「なんと!私でも治せなかったフランとリームの傷が!なんて回復量なんですの?!」

「異世界の聖女って奴?マジこの森すごくね?何で50年探索されてないんだよ……」


気絶から回復したフランさん達が目を丸くする。

確かに、婆さんの回復量はすごいからのう。

どんな傷でも治す、は戯言でもなんでもない。

皮膚細胞を活性化させ、元通りにする。

婆さん、大学時代は応用生命を専攻しておったし生物の細胞については優秀じゃったからのう。


「とりあえず傷も回復したんですし、お爺さん。村まで案内してあげたらいかがですか?そろそろ日も暮れますし」

「おぉ、もうそんな時間かのう!フランさん、ここは中々モンスターが強いですじゃ。儂らの村に行きませんかな?儂らも戻る予定でしたので」

「なんと!それはありがたい!」

「んなー!助かったんダナー」

「そろそろ日持ちする食料もなくなり困っていましたの!本当に助かりますわー!」

「確かに。徹夜で起きておくのはもうキツくてキツくて……」


夜はモンスターが襲撃してくる可能性が高いから寝ずの番が必須だもんな。

特にこの森、夜は特にモンスターが活発になる。

オークキングなんて比じゃないからのう、夜のモンスターは。

村を作っている理由も夜のモンスターの襲撃から身を守るためじゃったからのう。

堀作りながらモンスターを相手したから骨が折れたわい……物理的にも精神的にも。

聞けばフランさん達も森に入って数日過ごしていたらしいけど消耗が激しくてそろそろ帰る予定だったらしい。

数日だけでも耐えてたのか。

オークキングに挑むだけあって強いんじゃなぁー。






―――――――――

閲覧ありがとうございます!


地味に強めのパーティなフランさん達でした。



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