第6話 オークキング相手に ~フランツ・フードルフィ~
「はぁ……はぁ……皆、無事か?」
「な、なんとかダナー」
「き、キッついですわー。エーテル無くなりそう」
「と、砥石忘れた。歯がボロボロだ……」
皆の顔には疲れが。
それもそうだ。
時間にして約2時間、俺たちはオークと戦闘を続けているんだから。
俺の名前はフラン、フランツ・フードルフィ。
大盾持ちとしてギルドに所属し、チーム『森の盾』のリーダーだ。
チームのメンバーは俺含めて4人。
黒魔道士のリーム、ヒーラーのキリア、大剣使いのアンカー。
「魔力もそうだがポーションもつきそうダナ。『ファイヤーボール』が後5発打てるかどうかダナ。キリア、ヒールは打てそうか?」
「もう手一杯ですわ。正直あと魔力的にも数回が限度ですわ」
「俺の剣もギリギリってとこ。せめて脂が拭えれば話は変わるが……フラン、お前の盾もやばいだろ」
「うむ、正直、直撃は避けたいな。大きな傷が入っててあと何回持つか……だが、もうすぐ川に着く。川を渡れば時間が取れる!そこで応援を呼ぼう」
「応援……狼煙見てくれるか、ダナー」
今日は王都ギルドからの特殊任務。
4つのパーティが合同で森林を探索している。
俺たちが住む国メルカティア王国と隣国ラセ帝国の間に広がる大森林【クローディオ大森林】
通称『暗黒の森』と呼ばれる高難易度のダンジョンだ。
伝説では創造神シロエル・デイラックマスと対を成す創造龍クローディオ・ヲーツワキカイトが最初に降り立った地とされているが本当なのかは誰も知らない。
半世紀ほど前、まだメルカティアとラセが戦争中だった際、開拓使団と称して難民を送り込んでいたそうだが連絡が取れず未探索の領域とされている。
今回の任務はクローディオ大森林の探索と可能であれば開拓使団の痕跡を見つけるとこ。
もしかしたら生き残りがいるのでは、という話らしい。
正直、高ランクの探索者ですら数時間で死ぬと言われているこの森で約50年も一般人が生きているとは思えない。
「……正直探索どころじゃない!ただのオークだって?ありゃソルジャークラスだぞ!ソルジャーがいるってことはキングがいるってことだ!」
「フラン、愚痴はもう少し後な?オークキングがいるのは確定、後はジェネラルクラスが何匹いるかってとこだ」
「そうですわ。オークキングは最低3パーティ12人以上で戦うもの……私達では到底無理ですわ。応援を呼ぶにしても帰還するにしてもまずは川に向かわないと!」
「……ダナ、といいたいところだけど、奴さん、お出ましのようダナ……魔力もケタ違いダナ」
リームの言葉に一同に緊張が走る。
森の奥から枝を掻き分けて出てきたのは今まで倒してきたオークの何倍ものでかさの緑の巨体。
頭にモンスターの牙で作られた王冠のようなものを被ってにやり顔でやってきた。
オークの中の王、オークキングのお出ましだ……
「……最後の言葉、みんな言っとく?俺は……結婚したかったー!幼なじみとか許嫁とか居なかったけどなー!!!」
「ちょ!フラグってやつですわよそれ?!けど、それも仕方ないですわね……はぁ、ラセの同人即売会に行きたかったですわー……カイマキャット先生の新刊、欲しかったのに!!!」
「あ、キリアそういう趣味あったの?俺も来月ラセの同人即売会行く予定があったんよ……新作のコスプレ衣装用意してたのに……寝ずに作ったんだぞー!!!」
「2人ともカミングアウトの内容が濃いんダナ!1番まともなのがリーダーってそりゃおかしいんダナ!俺はせめて酒飲んで死にたかったんダナ!けどやるだけやって死ぬんダナ!『ファイヤーボール』!!!」
ゴッという音を立ててオークキングの顔にリームの魔法が当たる。
それを合図にアンカーがオークキングに接近し、足を切り付ける。
目を潰され、足にダメージをおったオークキングはゆっくりと倒れる。
そこにすかさずキリアの移動速度アップのバフを受けた俺が接近し盾を押し当てる。
盾の中に内蔵されている爆薬が炸裂し、その反動で鉄の杭が射出される。
ドスン!
「……っ!皮が、硬い!」
「ダナ!横!」
「あっ、グォ!」
俺は目の前が真っ暗になる。
すぐに猛烈な獣臭が襲う!
くっ、掴まれたのか!
装備している鎧がメキメキと音を立てて凹んでいく。
もう、ダメなのか……!
「……脳天唐竹割り!」
ふと、そんな声が聞こえ閃光が走った。
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