第5話 黒龍のクロ
『久しぶりに散歩に出たら何してるのさーセンタロー。汗だくで木切ってたし、暇なの?』
「何してると言われても道を作ってるとしか……お前こそいつも寝てるのになんじゃ?」
『キミの足ならすぐに王都まで行けるでしょ?高々半日の距離……ってのじゃ口調!……ププッ、クソ笑』
「……シバいたろか?あと、それはお前の基準だろう?人間はそこまで足早くないんじゃ!」
「はいはい。2人ともそれまでですよー。お茶準備出来てるから、クロも飲む?」
『もちろん!もらうー』
婆さんのお茶を飲むドラゴン。
飲むと言うよりは急須から直接口の中に注ぎ込んでもらっている。
ドラゴンに出会ってからとりあえず一発殴ったあと、一度婆さんの元に戻って来たところ。
先程儂の頭上に現れたドラゴン、名をクロという。
正式な名前も随分前に聞いたが、長いし覚えにくいので省略系のクロ、と呼んでいる。
クロとの出会いは40年前。
村の近くに洞窟があり、食材の貯蔵庫に使おうと開発してたら、洞窟の奥に寝ていた。
否封印されてた。
何でも自分で封印したらしい。
理由は何事にも縛られずぐっすり寝たいから。
……なんじゃいその理由。
起きてから色々話したけど、基本睡眠至上主義なので話している途中でも寝る。
何なら寝言で会話している。
そのくせ鼻息でワイバーンやグリフォンを倒せるほど強い。
ちなみに自称この世界を創ったドラゴンの1匹だそう。
……儂は信じてない。
だってその時の目、瞳孔開いてたもん。
寝ぼけてるやつの目だよ。
婆さんは少し信じてるみたいだ。
まぁ、儂より付き合いが長いからのう。
基本うちのベットで寝てるし。
子守りをしてもらってたから強くは言えないけど俺、家で寝る時いつも婆さんの部屋だったからな?
俺のベッドずっと占領してるしさー。
『本当、あのベッド気持ちいいー。もう地面には戻れないよー』
「そりゃ地面よりはいいだろうけどさー……自称世界を創ったドラゴン様なら俺のベッドよりいいベッド作れよ。お前が寝てるから儂、ここ数年、息子たちの家で寝てるんだからな?家に帰っても婆さんのベッドじゃし」
『いいじゃんいいじゃんー。夜はお熱いおふたりでしょ?あと、ボクは夜と睡眠、破壊と混沌を司る神龍もといドラゴンなんですー。ものづくり?無理無理カタツムリー』
「……なんでそのネタ知ってるんだよ」
「けどクロちゃん、ぬいぐるみとかはしっかり作ってるわよねー。部屋に飾ってたし」
『ちょ!カズハ!それは言わないで!あれは別腹!』
「別腹て……何を言っとるんじゃ」
恥ずかしそうに頭を隠すクロ。
……いや、知ってたからな?
……もう何年の付き合いだよ。
しれっと村の倉庫から羊毛とかをパクってるとこ報告に上がってるからな?
あと儂の部屋に置きっぱじゃし。
片付けろよ!棚作って置いてあるんだから!
「……まぁ、その辺は置いておいて。クロは何で散歩?お前絶対体力使わない派だったじゃろ?あと数年は寝るとか言っとったろ?」
『んー?あぁ、それね。今日は珍しく森に人間の気配を感じたからさー。魔法バカスカ撃ちまくってるし、暇だから見てみるかーってとこ』
「……へ?」
「あらあら、ほんと?流石ドラゴン、感知範囲広いのねぇ。私でも気づきませんでしたよ?」
婆さんが感動しているけどそれとこれは話が別!
人がいる!?この森に!?
ならすぐに助けに行かねば!
ここ数十年人がいてもすぐにモンスターに食べられてたからな!
「おいクロ!場所教えてくれ!すぐに助けに向かう!」
『えぇー、弱肉強食の世界で助けるの?暇人なの?あ、暇人じゃないと道なんて作らないか』
「いいから!そこ茶化さない!どの辺におるんじゃ!?」
『んーとねー。ちょい待って……あー、あそこだ。オークの村の近くだねー。確か川沿いのガルーダの爪で作った王冠を被ってるブサイクが長やってるとこ。無駄に子ども作ってたよねー』
「川沿い……オーク……ってオークキングのいる村じゃないか!儂の息子達でも骨が折れるってところに!婆さん!行ってくるぞ」
「……私もついて行きます。クロ、連れて行って頂戴」
『えぇーまーじ?カズハもやる気ー?めんどいんだけど』
「そこをなんとか。今度オーク肉、秘伝のタレで焼くから。お願い出来ない?」
『……はぁ、そう言われたらやるっきゃないよね!よしきた!ミソダレ、マシマシでお願い!』
……わぁ、よだれダラダラやん。
とりあえず婆さんとクロと儂の3人で人がいるという場所まで飛んでいく。
……間に合ってくれよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます