第6話 脱落するもの。見えないプレッシャー。

レッスンの終わりに講師の方から厳しくも暖かい指導の言葉が飛ぶ!

『ダンスだけで言うとまだ本当に受かりたいのかなって人はまだ数人しか見えないです。だからしっかり次のレッスンでは上達してることを期待して待ってます!』

「はい!ありがとうございました!」


そんな中、心が折れて辞退する者も現れはじめた。

レッスン場の片隅でグループAのキャプテンであるミナミとひとりの候補者が話をしている。

「キャプテン、、、今日で合宿を終わることにしました、、、みんなと頑張りたい気持ちすごいあるし、最後までみんなとやりたいんだけど、気持ちと体がなかなかついて行かなくて、、続けることが難しいです。」

涙ながらにそう言う候補者をキャプテンは優しく抱きしめこう言った

『うん、、わかった。でも、諦めないで、、、夢は捨てないでね』

辞退者を見送りそれまでは涙を見せずに励ましていたミナミだが、辞退者の姿が見えなくなった途端、ミナミの目に涙が溢れた。

「もっとキャプテンの私があの子を頑張ろうって気持ちに持っていけたんじゃないか、、、もっと自分がキャプテンとしてしっかりしていれば、、、」

そんなキャプテンとしての自分の不甲斐なさをミナミは責めた。


そしてこの日もグループごとに分刻みのスケジュールをこなしていった。

そんな中でもダンスが得意ではない者はダンスレッスンの時間内だけではなく、大きな鏡のあるトイレの前や廊下の姿見の前で自分たちの休憩時間や睡眠時間を削って自主練習に励んだ。


2日目が終わる頃には私の楽感的な気持ちは全くなくなっていた。

精神的には踏ん張っているつもりでもこれだけハードなレッスンだ。膝や腰、体のあちこちが痛い。自分では最終審査までなにがなんでも駆け抜けようと思っていても、体が言うことをきかなくなってはそうもいかない。精神的にも身体的にも自分で自分を管理し、自分自身をいたわりつつ合宿審査の最後まで残っていられなければ全ての意味がなくなる。

私はまるでスポーツ選手みたいだなと思った。

まだ2日目だけど、私は押しつぶされそうな見えないプレッシャーを感じ始めていた。



3日目からはボイストレーニングや演技の稽古などもありとてもハードだった。

Dグループ内でもダンス中に急に泣き出してしまう子がいた。

すかさずキャプテンの真希ちゃんが駆け寄る。

『どうした~?』

その子は顔を両手で覆いながら下を向き、涙声で

『私1回もちゃんとできたことがないの、、、』

泣きながら悔しさをあらわにするメンバーに、

真希ちゃんが

『いやいや、そんなの出来なくて当たり前だし、私もまだそんなにできてるわけじゃないから。まだあと2日あるんだからこれから出来るようになればいい事じゃん😊』

と穏やかに諭す。

真希ちゃんは無理はよくないと判断したようで、その子に少しだけ小休止をするように心配りをしたようだった。


それを見ていた副キャプテンのカワチンが真希ちゃんに近寄り、

『大丈夫そう?』

と小声でメンバーの状態を確認する。

『うん!悔し涙を流すってことは、負けず嫌いの頑張り屋さんの証拠😊

物事に真剣に取り組んでいるからこその涙だよ。』

そう真希ちゃんが答えると、カワチンは安心したように微笑んで

『そっか💡よかった😊』

それを離れたところから見ていた私は、

この2人がキャプテンと副キャプテンで本当によかったと心からそう思った。


ここで先生から課題が出される。

『次の4×8はもうどこでも動いていい。今後ろにいる人が前に行ってもいいし、逆に前の人が後ろに行ってもいい。前のままでも後ろのままでも後半部分はチームごとの技術なので、それはみんなに任せます。いいですか?』

『はい!』

ダンスレッスンではダンス後半の振りやフォーメーションを自分たちで考える課題も出され、各グループごとに考える。

Dチームでは

「ふぁーってピラミッドみたいになるのどうかなぁ😆」

ふわふわ系のりえが楽しそうに身振り手振りを交えて発言した。

「いいじゃーん!それ~!」

キャプテンの真希ちゃんも気に入ったようだ。

それを採用し、今後はダンスの後半に自分達で考えたピラミッドスペシャルを取り入れることになった。


一方、ロニー率いるグループCなどはアクロバットなバク転やバク宙などを取り入れ、さながら派手なアクション映画のような見どころをふんだんに詰め込んだ。

こうしてダンスの後半部分の振りを自分たちで自由に考えることにより各グループごとに個性が生まれ始めた。


ちなみにこのレッスンの様子はTikTokやYouTubeで配信されていて、この時には多くのファンの方が見守ってくれている。

夜の食事の様子などもライブ配信され、少しでも多くの方々に知ってもらい応援してもらおうと言うプロデューサーさんの考えだ。

というのも、ファイナリストになるためにはファンの投票が鍵になっており、このあと控えているSNS審査での投票数や配信のコメント数、そして審査員票など総合的に評価される。

「はい!では今日はここまでにします!」

「ありがとうございました!!」

やっと今日のレッスンが終わったー!!疲れたなぁ。アザもできてるしボロボロ~💦でも頑張らなきゃ! 私はすぐにシャワーを浴びてDチームみんなで夕食を食べに大食堂へ。


このオーディションは課題曲が決まっており、その曲がデビュー曲になる秋山智さん作詞の『指差し援護兵』である。

この曲はとても激しく、ダンスも難しい。でもみんな一生懸命頑張っている。私も頑張らなきゃ!



ご飯を食べていると私たちグループDのテーブルへビデオカメラを持ったスタッフさんが来て一人一人自己紹介を求められた。

「何食べてるの~?」

と女性のカメラマンに聞かれると、みんな揃って「トンカツでーす!」と答えた。

私たちはカメラを向けられることに慣れていなくて困惑しながらも自分のゼッケンを見せながら1人づつ自己紹介をする。

まずはリエちゃんからのようだ

「Dチームの18歳リエです😊よろしくお願いします。」

すごく恥ずかしそうに自己紹介しているリエがすごく可愛い(⑉・ ・⑉)

次にマカロンちゃん

「Dチーム17歳マカロンです💡よろしくお願いします😊」

お人形さんみたいに可愛いマカロンちゃん✨

次にキャプテンの真希ちゃん

「最年長の25歳の真希です!Dチームのキャプテンです😊よろしくお願いします。」

さすが憧れの真希キャプテン!しっかりしたコメント😳

次に私!

「21歳の花です🌸千葉県出身です!お願いします。」

はぁ~緊張した~💦こんな短い自己紹介でもカメラを向けられると固まってしまう💦

最後に副キャプテンのカワチン

「22歳のカワチンです💡副キャプテンやってまーす!よろしくお願いします。」

私からするとリエちゃんとマカロンちゃんは妹で真希ちゃんはお姉ちゃん、カワチンはお菓子博士🍬🍭🍫

美味しいお菓子をいっぱい教えてくれる☺️

こうして夕食も終わり自分たちの部屋に戻った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る