第24話 家康 人質時代に馬鹿にされた
昔々、三河国に竹千代という人物が生まれたそうな。
その竹千代は、人質として駿府に送られたのである。
駿府に送られた家康の養育にあたったのは、祖母にあたる華陽院(けよういん)だったそうな。
身内が誰もいない人質生活のなかで、家康は祖母に養育されながら、成長していったという。
また、家康は臨済寺の住持・太原雪斎の教えを受けることもあったそうな。
雪斎は今川義元に仕えた僧侶で軍略にたけていたため、教えを受けた竹千代は知略にたけるようになっていくのである。
さて、その竹千代は、臨済寺にずっといたわけではなく、きらびやかな駿府の中にある家々の一つにひっそりと暮らしていたそうな。
されど、竹千代は戦国大名の跡取りということもあって、町民からは注目を浴びる人物であったという。
ある時、竹千代が家の一室でくつろいでいると、家の塀の上によじ登っている人物がいたそうな。
竹千代は松平家の跡取りということもあり、命が脅かされると思い、緊張がみなぎっていたそうな。
その時である。なんと塀をよじ登っていた者が無礼な発言をしたという。
「あれが松平家の跡取り息子か。されど、家にとじこもり、何もできないさまは滑稽と言わざるを得ないな!! ははははは」
こうして、塀をよじ登っていた者に竹千代は馬鹿にされたという。
その際に、竹千代の家臣が来て、塀によじ登っているものをしかりつけその者らを捕まえようとした。
塀によじ登っていた者らは捕まってたまるかと言って地面に降りて、そのまま駿府の町の中に消えていったのである。
「くそ‥‥‥見失ってしまったか」
外まで追いかけた竹千代の家臣は結局、竹千代を馬鹿にしたもの達を見失ってしまったという。
その後、家臣は家の中に入り、竹千代に会った。
すると竹千代はプルプルと全身を震わせ拳を強く握りしめていたのである。
竹千代はそれほど怒りをこみ上げていた。
「わしはどこぞのものともわからぬ者に馬鹿にされた!! 本来わしは松平家を継いで大名になるはずじゃった。こんなどこぞの者ともわからぬ者に馬鹿にされて言い訳がない!!」
竹千代は怒りのあまり大声をあげたそうな。
「落ち着いてくだされ。竹千代様。怒っても何にもなりませぬ。馬鹿にしてきたもの達の思うつぼにございます」
「されど、この屈辱何かで晴らさねば気が抑まらぬ」
「そこを抑えてこそ、松平家を継ぐ立派な方と言えましょう。どうかどうか怒りを抑えてください」
何度も家臣に落ち着いてくださいと言われ、ようやく家康は怒りを抑えたという。
「すまぬな。迷惑ばかりかけて」
家康は怒りを抑えた後、家臣に謝ったという。
「なんの。怒りを抑えられた竹千代様はえらいですぞ」
その後二人は笑ったという。
しかし、馬鹿にしたものは知らなかった。後に、この馬鹿にしたものが日の本を天下統一する人物になることを!!
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