第23話 あけましておめでとうございます

 昔々、陸奥国に津軽為信というものがおったそうな。


 為信は、石川城を工事を装いながら攻撃して、上司である石川高信を自害に追い込み、石川城を攻略した。


 下剋上に成功した津軽為信は南部氏から梟雄と言われたのである。


 

 その津軽為信は津軽地方を掌握するため、1574年8月13日に大光寺城を4000の兵で攻めた。


 「津軽地方掌握のため、大光寺城を攻めとるぞ―――!!」


 「「おお――――――!!」」


 津軽為信が大光寺城を攻めとると宣言すると、配下の者達は一斉に声をあげた。


 そして、大光寺城を攻めたのだが、舘田林からの知らせにより、事態を悟った滝本重行なる者が700の精鋭を率いて、為信の本陣へ突撃したのだ。


「なんだ‥‥‥一体なにが起きたというのだ!!」


 為信は慌てふためいたという。


 すると、伝令の者が為信の前に現れた。


「報告します。敵襲が本陣に攻撃してきました。このままでは命が危うい可能性があります。どうかお逃げください」


「言われなくてもわかっておるわい」


 不意を突かれた為信は敗走し、命からがら居城に帰還したのである。


「くそ‥‥‥重行め、あやつのせいで敗走してしまった。今度はこうはいかんぞ!!」


 為信は敗走したことを唇をかみしめながら悔しがったという。


 

 為信の悔しさは相当なもので、準備を用意周到にしながら再び大光寺城を攻めたのである。


 しかし、前回のときのように普通に攻めれば撃退される危険性があったため、雪が積もる冬に攻めたのである。


 その時、為信は兵に、かんじきを履かせて雪に埋もれた大光城を攻めた。


 しかも、攻めた時は、1576年の正月元旦であった。



 「フハハハハハ。まさか雪の降りしきるしかも正月元旦に我らの兵が攻め寄せてくるとは思うまい!!」


 為信はこの攻城戦に自信があったのか、高笑いしながら攻め寄せたという。


 攻められた、重行勢は、再度の攻撃が正月という不意を突く攻撃だったため備えてはいなかった。


 「敵はわしらが攻め寄せるとは思わなかったようじゃ。見ろ、備えが少ないぞ!! これなら勝利できよう。皆の者、一気呵成に攻め寄せよ―――!!」


 為信が声高らかに叫ぶと兵士たちは士気をあげながら大光寺城を攻めた。


 その際、一部の兵士は「あけましておめでとう」といいながら攻め寄せたという。


 攻められた、重行の勢力は奮戦したが及ばず敗走したのであった。


 攻め落とした為信は声高らかに勝鬨をあげた。


 「皆の者、大光寺城を攻め落としたぞ―――!! 勝鬨をあげよ―――!!」


 「「えい! えい! お―――!!」」



 こうして、為信は大光寺城を落とし、津軽地方掌握を前進させたのである。


 

 一方、敗走した重行らは、小湊口から南部へ逃れたという。


 

 




 

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