第19話 二人の名将を父にもつ鎮西一の者
昔々、筑後国に立花宗茂なる人物がいたそうな。
その宗茂は、高橋紹運と立花道雪という名将二人を父に持つ武将であった。
また、宗茂はこの二人の父から名剣をもらっている。
一つは、長光という。紹運が長光を宗茂に渡す際にとあるエピソードがある。
高橋紹運は、もし自分と相まみえるときがくればいかがする、という話でこのようにいったという。
「養子に行ったならばもはや高橋の人間ではない。立花勢の先鋒となってわしを討ち取れ。今後はこの紹運を父と思わず道雪公を父と思うように努めよ」
このように諭し、長光を与えたそうな。
もう一つは、雷切という。雷切に関しては、道雪とのとあるエピソードがある。
道雪は枕元に立てかけていた千鳥の太刀を抜き合わせて雷を斬り、木の下を飛び退いたそうな。以降千鳥の太刀は雷切と呼ばれたという。
その後、その雷切は宗茂に渡された。
かくして、宗茂は二人の父から名剣を受け継いだのである。
そして、1586年、島津忠長・伊集院忠棟ら島津軍二万から五万の軍勢が筑前国に侵攻し、長光を渡した実父紹運は岩屋城にて徹底抗戦の末に討ち死にした。
「父上が死んだ‥‥‥敵と戦い最後は腹をかっさいて死ぬ壮絶な最後だったようだ‥‥‥」
宗茂は父である紹運を殺されて悲しんでいたという。
「何を悲しんでいる。折角、紹運殿が時間を作ってくれて、島津の兵士たちに大打撃を与えてくれた。今は悲しんでいる時ではないはずだろう」
宗茂の正室である立花誾千代は宗茂を鼓舞するため苛烈に発言したのであった。
「分かっている。父上の功績に応えるように島津軍相手に向かえ撃つさ」
「その意気だ!!」
こうして、宗茂は誾千代に励まされ、島津軍を迎え撃つ意欲をあげたのである。
しばらくした後、宗茂がこもる立花山城に島津の大軍がやってきたのである。
宗茂は頑丈な立花山城に立てこもりながら徹底抗戦したのである。
「決して、門を破らせるな。秀吉様の援軍が来るまで絶対に死守するのだ!!」
「「おお――――――!!」」
宗茂と兵士たちの士気は島津軍と違い高く、何日間も立花山城を死守したそうな。
その後、時間稼ぎのため重臣内田鎮家がある計を提案してきたという。
「宗茂様。私に策がございます。聞いてくださいますか!?」
「うむ。聞こう」
「ありがとうございます。では早速策を言います。まず、秀吉様の軍勢がもうすぐこの九州の地にやってこられます。そのため、ここは時間稼ぎのために降伏したように見せかけてはいかがでしょうか!!」
「降伏に見せかけるだと!?」
降伏に見せかけると聞き、一瞬、宗茂は困惑した表情をとりながら話の詳細を聞き出そうとしたのである。
「はっ! 降伏するように島津に使いを出します。そして降伏したと思った島津軍は秀吉様の軍勢に対抗するため一旦兵を退くでしょう。そして退き、途中で陣をしいたところに奇襲をかけるのです。さすれば島津軍は大敗北を喫するでしょう」
宗茂はその策を聞き、一瞬考え込んんだが、少しして決意を固めたのかこう返事した。
「よし。その策で島津軍相手に迎え撃とう!!」
「はっ! では早速そのように手筈を整えてまいりまする」
こうして、宗茂は島津軍に降伏の使いを送ったのである。
降伏の報せを聞いた大将の島津忠長は、秀吉の軍勢に対抗するため、余裕がなかったので、その報せを受け入れたそうな。
その後、島津軍は秀吉の軍勢に対抗するため、兵を引き上げたという。
「よし、島津軍が兵を引き上げたぞ。今こそ島津軍にさらに大打撃を与える好機である。ひそかに後を追い奇襲を仕掛けるぞ」
「「おお―――――――!!」」
宗茂が勢いよく発言したため、兵士たちの士気が上昇したという。
その後、宗茂の軍勢は静かに後を追いかけ、陣をひいていた島津軍の本陣の背後に奇襲攻撃したそうな。
奇襲攻撃をくらった島津勢はなすすべがなかった。
その結果、宗茂は数百人の首級をあげたという。
「見よ。島津勢が我らに恐れを抱き、撤退していくぞ。それにこれほどの首級をあげた。我らの大勝利だ!!」
宗茂は勝鬨を高らかにあげたという。
その勝鬨に兵士たちは大声をあげたという。
「「おお―――!! 我らの大勝利だ―――――――!!」」
士気が高かった宗茂とその軍勢はさらに島津勢相手に攻勢を強いたのである。
8月18日に岩戸にて兵糧を準備する原田信種勢二千を伏兵で撃退し七百余の首を取ったそうな。
8月20日には秋月種長隊二千を奇襲し四百余の死傷を出させたが、島津軍は紹運との戦いですでに消耗していたため、8月24日に撤退したという。
このとき宗茂は、友軍を待たずに島津軍を追撃して数十の首級をあげ、高鳥居城を攻略、火計で岩屋・宝満の二城を奪還する武功を挙げている。
「者ども。わが父上とその父上と一緒に戦った者達が討ち死にした岩屋城を奪還したぞ。父・紹運の仇を今我々は果たしたのだ!!」
「お見事でございます宗茂様。父上であられる紹運様の仇を果たせたのは見事という言葉に着きます。おめでとうございます!!」
「うむ。しかし、皆が一緒に戦ってくれたからこそ勝利できたのだ。お前達に深く感謝する」
すると宗茂は深々と礼をしたという。
「滅相もございません。頭をあげてください」
そういわれると、宗茂は頭をあげ、皆と勝利を分かち合ったそうな。
一方、島津軍が撤退したことにより、幽閉先から脱出した筑紫広門は家臣を集めて島津勢のわずかな守備の者と戦ったという。
「うおおおおおお――――!! 皆の者わしに続け~! わずかな島津の手勢を撃破するぞ~!」
筑紫広門は家臣と一緒に勢いよく敵勢に迎え撃ったという。
そして、守備の者達を打ち倒し旧領を奪還した。
「見よ~! 我らの力によって、旧領を無事奪還したぞ~。島津勢よ見たか。これがわしの強さじゃ。そうわしは狭門ではなく広門だ~!」
筑紫広門は自信満々に旧領を奪還したと言ったが、これは、秀吉の軍勢が来たことと、紹運と宗茂によって大打撃を与えたことによるところが大きかった。
ともかくこうして、島津勢に奪われた領地を奪回していったのである。
その後、筑紫広門と立花宗茂は、豊臣秀吉に謁見したそうな。その際、宗茂のことを「その忠義も武勇も鎮西一である」と揶揄したそうな。
また、この後、宗茂はさまざまな活躍をあげて西国無双と渾名されている。
さらに、実父・紹運の活躍を秀吉に説明し、秀吉は紹運のことを「乱世の華」と揶揄したという。
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