第16話 蛍大名と揶揄されてしまう

 昔々、明智方について、身を隠していた京極高次という武将がいたそうな。


 その人物は、浅井長政の妻である市と再嫁していた北ノ庄城の柴田勝家を頼りにいったという。


 しかし現在の福井まで向かう道は大変過酷であり、高次は崖から落ちそうになったり、病気になったりしながらもなんとか北ノ庄城までたどりついたそうな。


 そして、柴田勝家に会い直訴したそうな。


 「お願いします。何卒私を味方の勢力に加えさせてください」


 高次は頭を垂れてお願いしたという。


 されど勝家の家臣や味方の者達からは、信長に謀反を起こした光秀に組した高次を味方にするのはやめるように言ってきたという。


 されど勝家はできるだけ兵力が欲しかったのか、高次を味方に引き入れたらしい。


 「いや高次殿を味方とする。これはわしの一存じゃが、反対の者はおるか」


 勝家がそういうと、反対するものはいなかったという。


 こうして勝家側の勢力に組した高次であったが、その時、勝家の嫁であるお市とその娘である浅井三姉妹とも遭遇したらしい。


 「これは、これは、高次殿ではござりませんか。お久しゅうござりまする」


 「こちらこそ。私に何か用でも」


 高次は、まさかお市からあってくるとは思えなかったそうな。


 なぜなら、高次は浅井長政を強く恨んでいたことは周知の如くであったため、まさかお市が面会に来るとはゆめゆめ思わず、びっくりしていた。


 「いえ、高次様は小谷城出身であり、長政様と顔が似ておられます。それゆえ娘たちに会わせたかったのです」


 高次は長政と顔が似ているといわれ不服そうな表情を一瞬したが、浅井三姉妹にそのような表情は見せられないと表情をもとに戻したそうな。


 「そうでしたか。それですぐ近くにおられるのが‥‥‥」


 「そう娘達です!!」


 高次は浅井三姉妹と面会した。しかし、二人の娘は、しぶる表情をしたそうな。されど一人嬉しそうな表情をしたものがいる。


 それが、後のお初であった。二人は面会し、楽しそうに話し合ったという。


 お市の方と浅井三姉妹とは別れた戦の準備を行ったそうな。


 

 その後、高次が組した勝家は、秀吉と戦ったが裏切者などがでてきたこともあり敗走したという。


 そして、北ノ庄の城に帰還した。それを見た高次は勝家に見切りをつけてまた逃亡したという。


 だが、逃亡する前にお初に会い、「どこに行かれるのですか。私たちを置いて行くのですか」と言われたそうな。


 それに高次はこういったらしい。


 「私には家臣があります。私が死ねば京極家再興の夢が途絶えてしまいまする。それゆえここを出ます。ご容赦ください」


 しかし、言われてもお初は引き止めるように言ってきたが、高次はその場を抜け出したという。


 その後、逃亡していたが、秀吉の勢力に捕縛されてしまった。


 「このままでは、殺されてしまう‥‥‥」


 光秀や勝家に組し、長浜城を攻略した高次を許さぬだろうと考えたのである。されど、秀吉は寛大な処分で済ましたのである。


 理由は2つと考えられている。


 一つは、秀吉の側室となった高次の妹である竜子が生きながらえるようにしてくれと嘆願したこと。


 二つは、北近江の代々の領主であった京極家の名が北近江統治に利用できると考えたからという。


 この二つの理由により、高次は生きながらえることができた。

 

 これら、家の威光と、妹の竜子など女性に助けられてばかりいることから、蛍大名と揶揄されたそうな。


 

 一方、勝家は、お市と共に北ノ庄の城を枕に切腹したという。


 だが、浅井三姉妹は高次同様生きながらえたそうな。


 三姉妹はこの後、高次同様、過酷な道を歩むことになる。


 


 

 

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