第10話 しまった!! 踊りにつられてしまった!

 昔々、因幡国に金剛城(こんこ)の城があったという。その城を守っていたのが今回の話の主人公である兵主源六であった。


 この兵主源六は無骨もので勝気な性分であり、歌舞音曲が好きなどお祭り男でもあったという。


 この金剛城には、織田軍である羽柴秀吉の軍勢も攻め入った。この時には、鳥取城も攻められていたという。


 しかし、兵主源六は織田軍の背後を突くように奮戦したという。


 「わしにはここの地の土地感がある。織田軍の背後をつくのは容易じゃ!!」

 

 「うおおおおおおぉぉぉぉ――――――!!」


 このように兵主源六は奮戦しながら、土地を知っている国衆ならではのゲリラ戦法で織田軍を翻弄していたという。


 「どうじゃ、わしの攻勢に羽柴の軍勢は何もできずに翻弄しておるわ!! かはははははは!!」


 兵主源六は大笑いしたそうな。


 しかし、翻弄されてばかりで羽柴秀吉が黙っているはずがなく、金剛城攻略のためにある武将を秀吉は呼んだのである。


 その武将は、鳥取城攻めで貢献し、鹿野の城を守っていた亀井茲矩(かめいこれのり)であった。


 この亀井茲矩は尼子家の旧臣で、山中鹿介らと共に尼子家再興に奔走していた人物であった。


 茲矩は、兵主源六が立てこもる金剛城攻略を任され、攻め滅ぼすための一策を考えたのであった。


 

 一方、今度攻め寄せてくる敵の大将が亀井茲矩であることを知った兵主源六は高笑いしていたという。

 

 「尼子家の旧臣の亀井茲矩は結局、主君や山中鹿介らを見殺しにした男だ。恐れることはなにもない。亀井茲矩も今まで攻め寄せてきたもの同様、追い返してやるわ!! かはははははは!!」


 このように勝ち続けていたためか性分なのか勝ち誇っていたそうな。


 

 そして時が経ち、亀井茲矩は盆のある日、金剛城のふもとで踊りを催すことになったのである。


 亀井茲矩がたてた策とは、歌舞音曲が好きな兵主源六を金剛城のふもとで催す踊りに誘い出し、その間に城を攻略することであった。


 「殿、本当にこんな策に兵主源六が引っかかるのでしょうか!?」


 「この周辺の民たちに兵主源六は歌舞音曲が好きと聞いた。必ずや兵主源六は現れる。安心してみておれ!!」


 亀井茲矩は、家臣の質問に己がたてた策に自信をのぞかせながらそう答えたのである。

 

 すると、金剛城のふもとで催す踊りに、金剛城から家臣を引き連れてのこのこと出てくる人物がいるではありませんか。


 「うおおおおおぉぉぉ―――!! わしの好きな歌舞音曲が流れておる。しかも踊っておるぞ!! はよう行って踊らねば―――!!」


 そう、その人物こそ、金剛城の城主である兵主源六でした。


 茲矩公の策略とは知らず、兵主源六は歌と踊りに誘われて金剛城のふもとにやってきてしまったのです。


 その様子を見ていた亀井茲矩と家臣たちは、笑いをこらえながら、兵主源六が留守にした金剛城に兵を送り、火をつけて攻め落としたとつたえられている。


 それを見ていた兵主源六は、「そんな‥‥‥馬鹿な‥‥‥」と絶句しながら城が落とされるのを見ることしかできなかったという。


 その後、兵主源六は城へは帰らず、いずことともなく落ちのびたという。


 これ以来、金剛城はおどり見の城と呼ばれるようになったそうな。


 

 以後、この誘うことに成功した踊りは亀井踊と言われ、このときの攻略を讃えて踊られるようになり、今現在も続いている。


 


 

 


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る