第9話 異国の王様になった男 山田 長政

 昔々、駿河国に山田長政なるものが誕生したそうな。


 その後、山田長政はすくすくと成長していき、沼津藩主・大久保忠佐に仕え、六駕籠かきをしていたという。


 1612年には、朱印船で長崎から台湾を経てシャムに渡ったらしい。


 後に、津田又左右衛門筆頭の日本人傭兵隊に加わったという。

 

 「この傭兵隊で活躍し、功績をあげて出世するぞ!!」


 山田長政は傭兵として、アユタヤなどに迫りくる敵を追い払ったり、蹴散らしたりなど功績をあげていったという。


 長政は、頭角を現しアユタヤ郊外の日本人町の頭領となった。


 「よし!! 活躍して功績をあげたことで、アユタヤ郊外の日本人町の頭領に成れたぞ」

 

 長政は大いに喜んだという。そして家臣一同を自身の前に呼びこういったという。


 「日本人町の頭領に成れたのは皆が支えてくれたおかげだ。礼を言う」

 

 すると、長政は傭兵隊の配下の者達に頭を下げたという。

 

 「お頭、頭をあげてください。当たり前のことを俺達はやっただけのことです」


 配下の者達がそのようにこたえると、長政は頭をあげて、感謝を告げたという。

 

 そして、その場では笑顔が広がっていたという。


 

 その後、山田長政はアユタヤの日本人町の頭領として配下と共に活躍し、また配下の者達の統制をよくとっていたらしい。


 だが、そんな順風満帆な長政にとんでもない事態が発生するのである。


 なんと、スペイン艦隊がアユタヤを襲うとしてきたのだ。


 アユタヤはこのスペイン艦隊に対抗するため、自軍の部隊を集結させたという。


 さらに、日本人町の傭兵隊にも召集をかけたのであった。


 「どうやら‥‥‥スペイン艦隊がアユタヤを狙っているらしいな‥‥‥」


 長政は不穏な表情をしながら言った。


 「いかがいたしましょうか‥‥‥頭!?」


 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 長政は少し沈黙しながら悩んでいた。


 そして決意をしたのかこう答えた。


 「アユタヤの味方をして、スペイン艦隊を打ち倒すぞ。もし、アユタヤがやられれば俺達は路頭に迷うかもしれん。ここは、アユタヤに味方する以外に道はない」


 「はっ! 頭がそういうのであれば従います」


 こうして、長政たちは、アユタヤに味方をすることにしたのである。


 

 その後、しばらく時が経った。長政の元にある報せが入った。


 「長政様‥‥‥急な報せが届きました」


 「それでその報せにはなんと!?」


 「これには、スペイン艦隊が川を下りながら、アユタヤに攻め入ると書いてありまする」


 「あい分かった。配下の者達を緊急事態として招集してくれ」


 「はっ!!」


 長政は配下の者達を招集し、少しして配下の者達が集った。


 「皆の者よく聞け。敵のスペイン艦隊がこのアユタヤを川を下りながら襲ってきているという。この艦隊を打ち倒し、アユタヤを守りぬくぞ!!」


 「「おお―――――――――――――!!」」


 決意が固まっていた長政たちは、武装しながら、スペイン艦隊が下っていくであろう川の中間に傭兵隊を配置したという。


 他に、アユタヤの兵もその川の中間に配置されていたのである。


 

 そして、スペイン艦隊が少し早いスピードでやってきたのである。


 艦隊の船は、とても大きく丈夫そうな船であり、船の飾りにより、威厳があった。


 その艦隊が下るであろう先の両岸に、伏兵となった王国の兵と日本人傭兵隊が配置されていたという。


 そして、スペイン艦隊が伏兵として隠れていた場所までやってきたとき、両岸にいた兵たちが一斉に弓矢や鉄砲で襲い掛かったのである。


 襲い掛かられたスペイン艦隊は煙をあげながら停滞したのであった。


 「よし飛び道具の攻撃は上手くいった。ではこれより俺達は率先してスペイン艦隊を撃破するぞ。俺に続くのだ―――――――!!」


 長政を先頭にしてスペイン艦隊の船まで泳ぎ乗り込んだのであった。


 乗り込んだ先には、スペイン艦隊の乗組員がいて、斬り合いや取っ組み合いが行われたのである。


 その時、斬り合っていた剣がぶつかる金属音が鳴り響いていた。


 「負けるな。一気呵成に敵を斬って斬って斬りまくるのだ―――!!」


 長政の合図の元、配下の者達も一気呵成に攻撃したのである。


 「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ―――――――!!」

 

 その気迫に負けた敵の乗組員は次々と斬られていったのである。そして、しばらく斬り合いが続いたが、敵の乗組員の数が減り負けを悟ったのか降伏していったのである。


 こうして、この戦いはアユタヤの勝利となったという。


 そして、アユタヤ侵攻を退けたのである。


 「皆の者我らは勝利したぞ。勝鬨をあげよ―――――――!!」


 「「えい、えい、お――――――――!!」」


 配下の者達と共に勝鬨をあげ、こうして勝利を遂げたのであった。


 

 その後、長政達は今回のと合わせて2度にわたりスペイン艦隊を退けたという。


 その功績により、アユタヤー王朝の国王であるソンタムの信任を得て、シャムの王女と結婚したという。


 ソンタム王の死後、長政はソンタム王の遺言に従い、シーウォーラウォンと共同でチェーター親王を王に即位させたという。


 しかし、チェーター王はシーウォーラウォンに不審を抱き排除しようとして失敗し、シーウォーラウォンに処刑されたらしい。


 この時、当時アユタヤの貿易を独占していた日本人勢力と対立関係にあった華僑の勢力の圧力が宮廷内に及び、長政はリゴールの防衛を理由にリゴール王に封じられたという。


 その後、長政は1630年、パタニ軍との戦闘中に脚を負傷し、傷口に毒入りの膏薬を塗られて死亡したという。

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