第7話 道具持ちの黒人 弥助

 昔々、イエズス会は信長の元に黒人を連れてきたそうな。

 

 その黒人を見た信長は、見た信長は、肌に墨を塗っているのではないかとなかなか信用せず、着物を脱がせて体を洗わせたところ、彼の肌は白くなるどころかより一層黒く光ったという。


 彼の肌が黒いことに興味を抱いた信長はこの黒人に大いに関心を示し、ヴァリニャーノに交渉して譲ってもらったそうな。


 「 信長公記 」の筆者である太田牛一末裔の加賀大田家に伝わった自筆本の写しと推測される写本には、この黒人である弥助が私宅と鞘巻(腰刀の一種)を与えられ、時には道具持ちをしていたという記述があるという。


 「おい、信長様の軍勢の中に黒人がいるぞ! あれがちまたで騒がれいる道具持ちの黒人か!!」


 弥助は甲州征伐に従軍しており、帰還途上の時、信長が徳川領を通った際、家康の家臣である松平家忠が目撃したと伝わっている。


 本能寺の変の際には弥助も本能寺に宿泊しており、明智光秀の襲撃に遭遇したという。


 「これは‥‥‥明智の軍勢‥‥‥毛利家に向かう軍勢がこの本能寺にいるとなると‥‥‥信長様が危うい‥‥‥!」


 弥助は信長の元にはせ参じたという。


 「信長様‥‥‥私も一緒に戦います!」


 「ならぬ。お前は信忠の元に向かい明智が襲撃したことをしらせるのだ!!」


 「されど‥‥‥」


 「いいからいかぬか」


 「はっ‥‥‥わかりました。」


 こうして、弥助は本能寺を抜け出して、二条新御所に向かったとされる。

 

 二条新御所に行って異変を知らせ、信長の後継者の織田信忠を守るため明智軍と戦ったそうな。


 「信忠様を何としても守るぞ―――――――!!」


 弥助は戦ったものの敵の軍勢の多さに根負けし、投降して捕縛された。


 

 そして、しばらく日数が経った後、明智光秀が弥助の前に現れたのだ。


 明智の家臣は、光秀にこの黒人である弥助をどう処分すべきか聞いたという。


 「黒奴は動物で何も知らず、また日本人でもない故、これを殺さずとして、インドのパードレの聖堂に置け」


 明智光秀がそう命じると、弥助は南蛮寺に送られて命拾いしたという。


 その後の弥助の消息は不明らしい。

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