第8話

才乃は珍しく私よりも早く来ていた。

ロッカーの前で騒がしくしている。

終わったのか、突然振り向いた。顔はこの一週間で誰よりも輝いた笑顔だ。


「ごめんっ」


才乃はその勢いのまま机に突っ伏した良太にぶつかった。良太は石造のように動かない、と思われたが、ぎろりと才乃を睨んだ。


「お前、楽しそうだな」


まずい。才乃は人の気持ちを上手く汲み取れない。明らかな皮肉に気づけない。


「うんすっごく楽しいよ」


その場にいた人全員。何が起こったのか。吞み込めなかった。ガタンと大きな振動だけが床を伝っている。


「良太?」


良太が机を倒すさまを目の前で見た才乃は目を丸めて驚いていた。


「お前さ、見下してんだろ俺のこと。いい暇つぶしの材料としか思ってねぇんだろ。こそこそこそこそ鳩村となんかやってんのは知ってんだよ」


突然自分の名前が上がって私は固まった。あんな様子で周りのことを見ていたのか。


「失せろよ」


そういうと、良太は机を戻し、再び突っ伏した。



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