第5話
「まずは関係者に事情を聞かないとだね」
才乃はこれを探偵ごっこか何かだと思っているのだろうか。友だちが傷害事件を起こし、その証拠が学校中に広まりハブられているにしては冷静すぎる。
「森谷?」
「そ」
てっきり放課後とかの話かと思っていたが、才乃の行動力を舐めていたらしい。
ホームルームが終わるなり、教室を飛び出した。私はついていく。
「森谷くんいますか?」
『森谷』という名前に反応してその場にいた全員が一気に振り返った。
がたっという大きな音がした。扉に一番近い席の人が立ち上がった音だった。
森谷だ。
「あ、待って!!」
森谷は教室を飛び出した。私たちと違って一限までに帰るつもりはないだろう。
正直一限は別に出なくてもよかった。今も数学の
『追いかけなくてよかったの?』
才乃と机の下でLINEのやり取りをする。
『廊下は走っちゃダメだしねー』
本気か冗談か分からないメッセージ。
『それに荷物をおいてったから。ここから何か推察できるかもしれない』
森谷が出ていき、慌てる生徒たちの目を盗んで、才乃は彼のリュックサックを奪ってきたのだ。
才乃が言う、『どうにか』とは一体どこまでなんだろう。
昼休み、才乃はなんの躊躇いもなく彼のリュックサックを開けた。
教科書、ノート、筆箱。私のリュックサックの中身との違いなんて変なオカルト本ぐらいしかない。
「スマホは入っていないね」
才乃は教科書とノートをぱらぱらと捲った。
そして全てを広げ、写真を撮った。そのままスマホをすいすいと動かした。
「森谷は学年LINEに入っているようだね」
嫌だな。その意味を言いたくない。
「つまりLINEを追加し、動画を拡散することは可能ということ」
「そ」
森谷の焦った表情が私の胸で騒めいていた。
右隣は変わらず突っ伏したままだ。
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