第4話
次の日、学校に行くと不穏な空気が流れていた。
「良太はそんなことしないだろ」
「でも証拠が」
「良太くんひどいね」
「こないだの大会とかかっこよかったのに」
「シンプルに最低じゃない?」
廊下に小さく歪に反響する声。どうやらみんな良太の噂をしているらしい。
教室に着くと当の良太は机に突っ伏していた。
「大丈夫?」
言った後、馬鹿かと自分を責めた。これはスパイクがなくなったとかの問題じゃない。大丈夫なわけがないのに。
案の定良太は返事をしない。
「おっはよー」
約五分後に到着した才乃はこれまた案の定元気いっぱいである。
そのまま席に座ろうとして、いつもの返事がないことにようやく気付いたのか、良太を見る。
「えっ!?良太どうしたんお腹痛い!?」
良太はもそっと起き上がり、隈ができた目でこちらを見た。
「知らねーの」
「何を!?」
良太はため息をついて再び突っ伏してしまった。
「ねぇ良太くん。これ本当なの」
才乃が引き下がったのと入れ替わりに、先ほどからスマホを握りしめてもじもじとしていた愛菜が、意を決したように良太に問いかけた。
「『これ』って何の話なん?」
才乃はどうやら諦めたわけではなかったらしい。
愛菜は私たちにスマホを見せた。
それは短い動画だった。
部室で隣のクラスの
良太に。
「これは少なくとも素人に出来る合成じゃないね」
才乃はこのショッキングな動画をじっくりと見た後そう呟いた。
それを聞いた愛菜はさらに顔を赤くし、涙目にすらなっていた。
「噓だよねっ!!答えてよ良太くんっ!!」
良太は快活な、部活に打ち込む、真っ直ぐな少年だ。
その良太が、深刻な表情をしている。
口を開き、何かを言いかけて、すばやく飲み込んだ。
「噓じゃねーよ」
教室の異様な静けさをチャイムが切り裂いた。
朝のホームルーム。北井は気づいていないのか気づかないふりをしているのかいつも通りに進めた。
「秀ちゃん。これは私たちがどうにかしなければいけない」
主人公というのはどうして一人で立ち向かってはいかないのだろう。
私はただ頷いた。
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