第3章 第3章 加速せよ、百合ロード! 後半戦!
#34.ノーラブ、ノーライフ!!
「せりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
何かを叩く音と、叫ぶ声がする。
あまりの大きさに、せっかくの夢見心地から目が覚めてしまつ。
二度寝しようとするも、何度も何度も同じような音がするものだから、寝付ける気がしない。
仕方なく諦めた私は、重たい体を起こすように、窓を開けるとー
「ふぁ……おはよ〜マヒルぅ」
そこには、大きな大きな斧を持ったマヒルがいた。
目をこすっていたせいか、彼女は怪訝に顔を顰めさせている。
「あんた、まさか今起きたの? 呑気なものね、ろくに修行もしないで」
「マヒルこそ。こんな朝早くからやるなんて、精が出るねぇ」
「当たり前でしょ。武道大会が近いんだから!!」
最近のマヒルは、毎日のように大会へ向けての特訓をしている。
朝だけでなく、もはや一日中だ。
別にやるのはいいんだけど、朝からその音で起こされるんだから、こちら的にはたまったもんじゃないんだよなぁ……
……おや? マヒルがお腰につけてるのは、まさか……
「あーそれ! サヨからもらったお守り! ちゃんとつけてくれたんだ!」
「なっ!? ど、どこみてんのよ!」
「可愛いよね〜それ〜似合ってるよ〜」
「む、無駄口叩く暇あるなら、あんたも出てきなさい! ついでに特訓つけて……」
「あー結構でーすご飯食べてくるー」
「ちょっ! こら! リンネ!!」
マヒルの声を無視するように、自分の部屋をあとにする。
彼女を振り向かすため、サヨと一緒に作ったお守り。
ああやって大事にしているのをみるあたり、彼女に届いてると実感する。
それってやっぱり、提案した私のおかげじゃない!!?
よぉし、このまま百合ロードを突き進んで……
「ではユウナギ様にとって好きとは、一緒にいたいと思える相手……と、いうことですね」
部屋から出てすぐ、何かがおかしいと感じた。
アサカが、メモを片手にユウナギへ詰め寄っていたからである。
そりゃあもう、息がかかるくらいの近さで。
さすがのユウナギも、少々困惑しているようでー
「そ、そうだけど……これ、まだ続けるのか? そろそろ魔物の餌やりに行かなきゃ行けないんだが……」
「ではなぜ突き放してしまうのですか? 冷たい言葉ばかりかけてるようにみえますが、あれも好きだからなのですか?」
「そ、それは……」
んーーーっと?? これはぁ、何事??
「あら、リン。やっと起きたのね。あれ、助けてあげて」
私の部屋を出てすぐの場所にいたサヨが、困ったように笑う。
なぜか彼女も、ユウナギと同じように疲れていた。
そのことで私に気づいたのだろう。アサカの視線は、途端に私へ切り替わってー
「おはようございます、お嬢様。お手数ですが、お嬢様にも質問させていただけませんか?」
「いい、けど、なにを?」
「簡単なことです。好き、と言う感情は何か……それを私に、ご教授いただきたいのです」
あん、だと!!?
「好きって、え!? あの好き!!? アサカまさか、好きな人ができたの!?」
「何故そんなに食い気味なのですか?」
「いいから答えて!!」
「………別に、興味があるだけです」
わぁ、何最初の沈黙ぅ。絶対何かあるやつじゃぁん??
まさかあのアサカから恋愛の話題を振られる日がくるとは……みぃんな私を鬱陶しがってたのに……
「さっきからずっとこんな感じでね。うちにも好きとは何かの質問攻めばっかり。答えろって言う方が無理じゃない?」
「ほんっと、困ったもんだよ。ユサと付き合ったとはいえ、答えづらくて仕方ねえ」
「ほえ〜でもなんで急に?」
「私は元ぬいぐるみです。感情を理解しようとするのは当然のことかと」
「当然、ねぇ……それなら、好きにこだわる必要はないと思わない? 最近、やたら恋愛本ばっか読んでる気がしたけど」
そういうサヨの目線には、アサカの本棚がある。
彼女はとにかく博識だ。隅から隅まで、本で情報を得ようとする。
私にとっては難しいことだらけで、寄りつきたくもない場所。
ところがどっこい。見ない間に、恋愛関連の本に変わってるではあーーりませんか!!!
「……私は、知りたいのです。好きとは何か……彼女が……アミが私を捨てた、本当の理由を……」
アミ、というのは無論、彼女の元持ち主のことである。
垂れ耳猫型の獣人族でぇ、魔王とも仲が知れてる錬金術師なんだよね!
え? 覚えてないって?? しょうがないなぁ、じゃあ#23を見直そう!
「アミって……確か、アサカを戻しに行った時にあった、あの錬金術師の獣人……だっけ。あの人不思議な人だったよなー」
「あの猫、うち苦手なのよね。胡散臭くて」
「いやいや、そもそもサヨが苦手じゃない人なんていな……」
「彼女を馬鹿にしないでください!!!!」
途端、怒ったような声がする。
当然サヨでも、ユウナギでもない。
発したのは、あのアサカだった。いつも無表情で、怒ることすらない彼女が。
でもそんな私たちよりも、何より自分自身が驚いている表情でー
「そんなに言うなら、直接本人に聞いてきたらいいじゃない」
そんな中、タイミングよくマヒルが帰ってくる。
まるで聞いていた、とでもいうように、彼女は一枚の紙を渡してきてー
「ちょうど明日開かれるバザールに、あいつが参加するみたいなのよ。ここで聞いてたって解決しないわ。満足するまであんたの言いたいこと、ぶつけてきなさい」
バザール、だと???!!
やれやれ、どうやらまた、面白いことが起こりそうです!!
(つづく!!)
転生したら魔王の娘だったので、美少女四天王の百合を楽しみたいと思います! Mimiru☆ @Mimiru_336
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