#22.探そう! ゆr…じゃなくて錬金術師!

「えーっと?? ママが言ってたのはこっち……であってるはず??」


地図を見ながら、再び首を傾げる。

国の外にでた、とにかく外れのそのまた奥の方。

眠ったアサカを抱えてやってきたのは、魔王から言われた場所だ。


この世界は、とにかく広い。

たくさんの種族が集落を作って暮らしているというだけあって、地域も住み方もそれぞれだ。

かくいう私は、サヨの住む泉くらいしか行ったことないけど……それでも、まるで雰囲気が違う。


周囲の木々には、蝙蝠のような動物達がじっととまっている。

空もここ一帯だけがどんよりと曇っていたり、道もろく整備されていないようだ。

薄暗い森……不気味な雰囲気……これはひょっとして、心霊スポットってやつなのでは!!?


「いかにも何かでそうな場所ね」


「や、やめろよサヨ。お嬢が怖がるだろ……」


「まだこんな場所があったのね。てっきりディアボロスが手入れしてると思ったんだけど……こんなとこに住むってことは……錬金術師ってまさか、幽霊か不死族?」


マヒルの声と同時に、ユウナギは肩をビクッとさせる。

なぜか彼女はどこか落ち着かないように、目線をずっとキョロキョロさせていた。

その様子に気がついたのか、サヨがへぇと興味深そうな声をかけて……


「……ユウナギ。あなた、怖いの苦手なの?」


「に、苦手というわけじゃ……どうもこの雰囲気に慣れないだけだよ」


「普段から魔物とつるんでるのに、変な人ね」


ふーん……雰囲気に慣れない、ねぇ。

どれ、それじゃあひとまず……


「わぁ! なんだろぉ、あれ? 人かなぁ?」


「「!!!」」


私の言葉に、ユウナギだけでなくマヒルまでばっと身を翻す。

しかもよくみたら、マヒルは斧まで構えていた。

まあ、そんなことしても? 後ろには、誰もいないんだけどねっ! てへ!


「な、なんだ……誰もいないじゃないか」


「あれぇ? 気のせいだったみたい」


「……なんであなたまで、武器構えてるの?」


「う、うっさいわね!? 敵が来たら武器を構えるのは基本でしょ!? 安心しなさい、ユウナギ! どんな敵が来ても、あたしがこの斧でぶっ倒し……」


もうひとつおまけに、今度はマヒルの体をこちょこちょっと……


「うぎゃーーー!!! 何するのよ、この変態幽霊!!!」


その叫びと同時に、華麗なパンチが後ろへとんでくる。

運よく彼女の後ろにいたのは、サヨだった。

しかしサヨは、予測していたようにサラッとよけてしまう。

結果、そのパンチは密かに隠れていた私にあたることに……


「あだっ」


「えっ、お嬢! だ、大丈夫か!?」


「ほんっっと信じらんないこのクソガキ!! 今すぐ家に連れ返すわよ!!」


しょうがないじゃない……だって百合百合したいお年頃なんだもの……

心霊スポットっていったら、デートではおきまりなのよ??

この際だし、誰かにしがみつくとか、腕の裾を離さないとかあってもよくない?

ほんっとこの四天王は、百合要素が少ないというか……


「でも、本当にいるわよ。人」


……へ???


その言葉に、私ら三人の声が重なる。

言った本人であるサヨがほら、と指を刺す。

その先には、本当に人影があって……


「え? 何あれ?? 幽霊?? すごい! 本物初めて見た!! ねえ、近くでみよ!?」


「や、やめとけお嬢!! 幽霊族は会っただけで魂抜かれるんだぞ!?」


「はんっ、本当にそうか試させてもらおうじゃない! まずは一発……!」


「ちょ、マヒル! すぐ戦おうとすんな!! そもそも幽霊に武器が通じるわけ……」


「幽霊、ね……それにしては、足あるみたいだけど」


ん?? 足??

土を蹴る音が、近くなってくる。

同時にあかりのようなものが、こちらへ向かっているように見えた。

近くなれば近くなる程、どこか汚れが目立つ研究員のような、長い白衣がみえてきてー


「おーやっとみつけた。人の気配を察知したのに、全然来ないから迎えに来て正解だったよん。おいでませませ、お客人さん」


ほのかに照らされた灯篭が、肩にすらかかっていない短い茶色の髪を照らす。

赤縁の四角いメガネの下、なぜか彼女は呆れたように声を発したのだった。


(つづく!!)

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