#18.来たれ、私の時代!! 

パン、パンと花火が上がる音がする。

パッと目が覚めた私は、飛び起きるように窓の外をあけ、部屋を出る。

外ではたくさんの鳥たちが飛び立っており、まるで何かの始まりを告げているかのようだ。

そんな光景を目に、一目散に魔王城へとかけてゆくー


「こんな感じ……かな? よし、できた」


「おはよう! みんな!! わぁ、すっごい!!」


ドアを開けるが否や、飛び込んでくる景色に思わず声を上げる。

部屋のドアを開けると、そこに広がっていたのは天井に届きそうなくらいい大きな大きなケーキがおかれていた。

よりどりみどりのフルーツに、甘そうなホイップクリーム。

積み上げられたスポンジの下で、エプロンを下げた彼女が私に微笑む。


「お、お嬢。おはよ」


そう、無論作成主のユウナギである。

彼女は私を見るが否や、安心したように肩を撫で下ろした。


「その調子だと、よく眠れたようだな。帰れなくてごめんな、意外と時間がかかっちゃって」


「しょうがないよ、もう式典本番だもん! にしてもこれ全部ユウナギが作ったんだよね? すごいね! 今食べたい!!」


「こらこら、あくまでも式典用ってことを忘れるなよ。心配しなくても、あとでたくさん食べれるから」


そう、今日は待ちに待った建国記念日当日だ。

そして私が、魔王の娘だと紹介される日でもある。

この日のために、四天王は昨日から準備で家を開けていて、私一人ってことが多かったけど。

それでも寂しさなんてものはない。だってこんなにも、立派なケーキが用意されるのだから!!


「でっかいケーキね……誰が食べるのよ、それ」


そんな中、ため息まじりでマヒルがやってくる。

護衛役、ということもあってなのか、彼女は重たそうな鎧装備を纏っていた。

いかにも戦士、って感じだなぁ。さすがマヒル、戦闘体制バッチリじゃん……


「そりゃ、全種族の偉い人が集まるからな。これくらいはないと、すぐなくなるだろ? それにしても、すげー疲れてないかマヒル。サヨは一緒じゃないのか?」


「し、しらないわよ、あんなやつ! それよりまだ見つからないの! こんっっなに魔力探知してるのに!!」


「お、落ち着けって……何かあったのか?」


「とっちめてやる……! あたしにあんな思いをさせて、絶対に許さない……!!」


ユウナギにいわれても、彼女の怒りが収まらないというように体がわなわな震えている。

彼女がこんなに怒っているのは、いうまでもなく私のせいである。


あの部屋に閉じ込めて以来、あの魔力は誰だとばかりに怒り狂っている。

さすがに私が使ったとは思っていないようで、あの一連のことが私の仕業だとはいまだバレていない。

その上魔力探知しているのは、いうまでもなく巳胡さん。

持つべきものは、強すぎる協力者!!

へへっ、見つかるわけがないもんねーだ。


「お待ちしておりました、お嬢様」


そんな中、アサカがぬっと私たちの間に入ってくる。

すると何人ものメイドっぽい人たちが、私を取り囲んできて……

え?? 何?? 何事???


「時間がありません。お嬢様にどれが似合うか、このアサカが見定めさせてもらいます」


パチンと、アサカが指を鳴らす。

するとメイドたちが、次々に私の服を脱がしていって……


「あ、アサカ! 着替えくらい、自分でできるよ!」


「ご安心ください、私は元主の影響で幾度となく服を着せられた、着せ替え人形でもあります。服装のセンスはお任せください」


「そういうことじゃないよ!!?」


「お嬢様をかわいく、美しくする。それが私の役目であり、我が主様の命です」


もう!! ママのせいで、アサカが変な方向に張り切ってんじゃん!

や、やめてぇ! ここでは一応私未成年よぉ!?


「……建国記念日は、記念すべきウヨシンテができた日。それと同時に、ディアボロス様と巳胡陛下が結婚した、記念日でもあります」


ドレスを繕われながら、彼女がいう。

アサカの顔を見ようと目線だけ動かすが、アサカはどこか真剣な眼差しだった。


「上級魔族や、地位が高い人間はあなたを一目見に、ここに来られるでしょう。世の中には、優しい人だけではありません。くれぐれもお気をつけください」


「う、うん……」


「とはいえ、今日は記念すべき晴れ舞台です。お嬢様にとって素敵な1日になるよう、お祈りしています」


そういうと、彼女はカーテンを開ける。

お姫様のように施された自分は、まるで違う自分で……


「それではぁ、みんなに紹介しまぁす。巳胡とディアちゃんの娘、リンネちゃんでぇす」


割れんばかりの、歓声が聞こえる。

こうして、建国記念日はゆっくりと幕を開けたのです!


(つづく!!)

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