#8.私得すぎる急展開!

「身長、体重、胸囲……採寸完了いたしました。こちらがデータになります」


「了解……っと。こんなもんでいいだろ。どうだ、お嬢。付け焼き刃で申し訳ないが……」


「うわぁ……なんか、お姫様みたい!」


渡されたドレスを、まじまじ見つめる。

即席でユウナギガ用意してくれたドレスはどこぞのお姫様のようで、私なんかがきていいのかと思いつつ、嬉しさで顔がついにやけてしまう。


あれから数時間、赤ん坊だった私の体は、なんともあろうことか喋っても何も違和感のないくらい大きくなった。


人間で言うと、十歳くらい……かな?

頭からちょっとツノが生えているところをみると、やはり魔王の娘ということを自覚できる。


しかし……持ち前の金色ヘア〜、ボブくらいの短い髪型、子供とは思えない胸囲……

こうしてみたら私、結構いけてない!!?

やはり持つべきものは美しい親!! まさか自分が美少女になれるとは、ありがたすぎる!


「一体何がどうなってんのか説明しなさいよ! さっきの光は何!? あんた、何をしたの!?」


そんな私に構わず、マヒルが苛立ちを隠せない様子で睨みつけてくる。

相変わらずこの子はおっかないねぇ〜そんな睨まなくてもいいのに……

とりあえずここは、知らないふりっと……


「どうやら、魔法が使われたようですね。本のページから察するに、促進魔法に間違いありません。本来は植物を育てるために使うものなのですが……人体にもかかるんですね、初めて知りました」


アサカが、私のそばにあった本を手に取る。

無論、魔法全書である。

みていたページがそのまま置かれていたせいで、なんの呪文かわかったのだろう。

その言葉を受けて、一番に顔を顰めたのはサヨだった。


「さっきの動き……最初からこの本を探していたみたいだった。絵本に目もくれず、あたかも自分一人で唱えるために……あなた、最初からこれを狙っていたんじゃない?」


ぎくっ! さ、さすがサヨ……気づいてしまっか……

そう、これは全て私の計算どおり。

私の目的は、はなから魔法を使って、自分の体を大きくさせること!


異世界において、基本中の基本である魔法の存在。

ろくに話せない、体も動かせない、その上愛されない……そんな状態で、じっとしてろって方が無理やろ!


とはいえやったこともないし、赤ん坊状態でできるとは思ってなかったけどねぇ……

ま、結果オーライってやつ??

とはいえここは……!


「だって……みんなと早くお話ししたかったんだもん」


みよ!! この私の子供っぽい反応を!!

すこぉし体を縮こませることで悪いことをしたという引き目! 上目に瞳を向けることで、怒られるのが怖いと分からせる態度!!

明らかに反省してるってわかるやろ!!? さすが私! 主演女優賞もらえてもおかしくない!


ここで一応悪いことはした、ってしとかんさぁ!? 生意気な子供って思われたら計画がパーだもの!

いい子ちゃんの方が、子供は可愛がられるっていうし!


「……そっか。そんなこと考えてたのか。とはいえ、魔法は危険なのだってある。使い方を誤ると危ないから、むやみに使わないようにな」


そんな私とは逆に、唯一ユウナギだけが私の頭を撫でてくれる。

さすがだ……こんな状態になっても優しいなんて……天使すぎる……

正直心が痛むなぁ……いやいや、ここは純粋無垢な子供を演じるのに徹して……


「……ごめんなさい、ユウナギ。次から気をつけるね」


「それにしても、さすが主様の娘、といったところでしょうか。促進魔法は上級魔法といわれています。ろくに練習もしていない中、赤子の状態でも使えてしまうとは……」


え?? そうなの???

促進魔法って文字しか探してなかったから、ろくに見てなかったな。

もしかして私、結構すごい人だったりする???


「へぇ? 上級を使いこなせるなんてやるじゃない。どうやらディアボロスの娘ってのは、本当のようね」


なんだか、悪寒がする。

ゆっくり振り返ると、今の今まで怒り顔しか見たことなかったマヒルが、何とも楽しそうに笑っていた。

まるで、何かを企んでるようなー……


「……マヒル、お嬢に何させるつもりだ」


「決まってんでしょ! 特訓よ、特訓! ディアボロスは一人前の後継者にしてほしい、って言っていたもの。四天王最強であるこのあたしが、強くてたっのもしぃ魔王にしてあげるわ! 感謝なさい!!」


「……呆れた。才能があるとわかった途端に、掌返すなんて。やっぱり脳筋ね」


「なんですって?!」


私のことなんてまるで無視とばかりに、サヨとマヒルが、今にも殴りかかりそうな勢いで睨み合う。

まったく本当にこの二人は、すぅぐ喧嘩しようとするなぁ。

しかし、そうは問屋がおろさないのだよ!!


「け、喧嘩はだめーーーーー!」


やめてほしい、という一心を声に乗せ、二人の間に割って入る。

そんな私に、みんなギョッとした視線を向ける。

大丈夫。子供らしく、とにかく可愛く、純粋に……


「ママが言ってたでしょ! 四人で仲良くって。けんかばっかりしたら、め! なんだよ!」


「はぁ!? 何よ、ガキのくせに!」


「私! みんなには仲良くしてほしいの! せっかく一緒に暮らしてるんだもん……四人には、仲良くしてほしい!!」


「お嬢……」


「私、一人前になるから! みんなのこと、もっと教えてほしい! だからまずはリンネと、仲良くしよっ?」


子供っぽさを意識しながら、言いたいことをまっすぐ告げる。


私の大きくなった目的。それはこうして、話すことだけではない。

四人を今よりもっと、仲良くさせること!

そして何より、私自身が四人と仲良くなり、四人それぞれの恋愛感情を知ること!!


女性には恋愛感情はつきもの!

だからきっといるはずだ。好き、とか気になってる、とか想う相手が!

相手が同性かどうか、そもそもいるかわからないけど……

そんなの関係ない! ないなら作るまでよ!!


四天王のため、恋のため、もはや私のため!

こうして私ーリンネの野望が、ようやく動き出したのです!


(つづく!!)

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