#3.美しいだけじゃない四天王さん


「お前ら四天王に、最初の指令だ。ここにいる我が娘・リンネを、次期魔王として一人前に育ててもらう」


魔王の声が、城内に響く。

どうもみなさん、こんにちは。人間から魔王の娘になってました、リンネです。

とはいえ言葉もろくに発せない、体も手足しか動かせない赤ん坊にはかわりないんだけど。


魔王といえば四天王、四天王といえば魔王の側近。

ということでやってきたのは、四人の女の子達だったんだけど……


「はぁ!!? あんた、正気で言ってるわけ!? なんでこのあたしが、ガキの面倒みなきゃいけないのよ!!」


その中の一人の女の子が、魔王に負けない辛い大きな声で叫ぶ。

肩や胸に銀色のアーマーがあることから、戦士かなにかだろうか。

ピンク色のハーフツインテールがゆれてたり、吊り目がかなりせりあがってることから、かなり怒ってるのが伝わってくるなぁ。


「少し声量を落とせ。赤子が泣き出したらどうする」


「知らないわよ! いきなりそんなこと言われて、はいわかりましたってなるわけ……」


「主様に対して無礼です。減らず口は慎むようお願いいたします」


法衣のような服を着た、清楚そうな女性が静かに制する。

短い紫色の髪が、とても綺麗だ。話し方からして、丁寧さが目に取れる。

その顔からは、何の感情すら読み取ることができなかった。


「主様の命令とあらば、私は従います。なんなりとお申し付けくださいませ」


「ちょ、ちょっと待てよ。いくらなんでも、請け負かねます。このメンバーで子供の世話なんて……生活用に用意された部屋だって使ってねぇのに……」


自分の体より大きな杖を持った少女が言う。

フードを被っている下で、長い黒髪をのぞかせている彼女は、さながら魔法使いのような格好だ。


なぜか肩にはさっきまで部屋を飛んでいた小鳥が止まっており、彼女に懐いてるのが目に見える。

可愛らしい見た目なのに、口調は男っぽいけど……それもそれでよき!!


「付き合ってられないわね。うち、そんなに暇じゃないんだけど」


長い三つ編みを一つにまとめた青髪の子が、呆れたように言う。

胸や裸が見え見えな、なんとも破廉恥な格好はまるで水着を思わせる。

というか、見間違いじゃなきゃあの人の足の部分、尾鰭だよね?? 絶対人魚だよね!?


いやぁ、なんていうか多種多様!! 他の人の種族はぱっと見わかんないけど!

どこをとっても美! 美! 美! 異世界ってすんげぇな!


「想定内の返答だな。暇じゃないのは我も妃も、同じことであろう。これでも我はお前たちの実力を高く評価している」


「そ、それは……光栄なことではあるんですけど……」


「多くの種族がいる中、お前らは六代目四天王に選ばれたのだ。もし娘を育てることができないと言うのなら、今ここで四天王の名を剥奪するが?」


「な、なんですって!!?」


まるで脅しのような言葉にも、彼女達の態度は変わらない。

RPGでみてきた四天王は、どこも強く、魔王に忠実なイメージがあった。

あったんだけど……それにしては、あーだこーだいいすぎじゃね? 実際の四天王ってこんな??

現実と理想じゃ違うって、本当にあるんやなぁ。


「時間だな。では、あとは頼んだぞ」


「ちょ、ちょっと! まだやるとは……!」


「忠告しておく。お前らは任命された四天王同士だ。喧嘩せず、仲良くやること。万が一娘に何かあったら……その時は、命はないと思え」


魔王の眼差しが、ギロリと向く。

正直向けられてない私でも、ビクッとするほどに。

かくして、魔王の娘に転生してしまった私は、流されるがままに異世界生活が始まったのです!!


(つづく!)

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