#2.ここまではよくみるお決まり展開
たくさんの視線が、私に向いている気がする。
まるで、物珍しいものを見つけたとでも言うように。
何か言いたくても、うまく言葉が出ないのは彼等が人ではないからだろうか。
右を見ても魔物、左を見ても魔物。
ここまで条件揃ってると認めざるをおえない。
どうやら私は、転生してしまったようだ。
察するに0歳の赤ん坊、だろうか。
おそらくここは、私が思う天国ではない。
異種族が存在する、つまり異世界だ。
一応前世でゲームやアニメを嗜んでいたから、そのへんの知識は少なからずある。
とはいえこの種族はこれ! みたいにはっきり言えるほど詳しくないから、わからないことがほとんどだけど。
ただ、魔王とかそういうワードがでてるあたり、私は魔王の何かしらに転生してるわけで……
「リンネが起きたというのは、本当か?」
声が、する。
とても低く、凛とした声。
周りに群がっていた動物達が、ばっと膝をつく。
同時に階段から、一人の女性が降りてきた。
黒髪に灰色のメッシュ、長いケープの下にはお胸がバッチリ見える黒いドレスが顔をのぞかせている。
マグマのように赤い瞳にイヤリング、そして頭には鹿のような角が立派に備わっていて……
瞬時にわかった、彼女が魔王であること。
そして、かっこいいと言われる系の魔王だと!!
「ご苦労だったな。あとは我がやる、戻っていいぞ」
「はっ、かしこまりました」
「……やけに人が多いな……ここには上級魔族の賢者しか呼んでいないはずだが?」
「あ、いや、赤ん坊が狙われたら大変じゃないっすカ!」
「御託を並べるくらいなら、今すぐに四天王を呼んでこい」
「す、すみませんでしたぁ!!」
たった一言、二言しか言っていない。
それだけなのに、威圧、威厳が半端なく伝わってくる。
これが、本物の魔王ってやつなんだ。
いやぁ……想像してた100倍にかっっっっこよくない!!!?
魔王も魔物っぽいの想像してたのに! めっちゃイケメンやん!
「まったく、騒々しい連中だ……時が来るまでは表沙汰にはしたくなかったのだが……」
さっきとは一風変わった優しい声がする。
それが私に向けられていると気づいたのは、優しい感触が頭に伝わってきたからだ。
魔王は私のことを、なんとも優しい目でみつめ、頭をなでてくれて……
「我はディアボロス、お前の母だ。今日からお前の名前はリンネだ。分かるか?」
はうわ! う、美しい……!! なんて美しい笑みなんだ!!
てっきり怖い系だと思ってたのに、身内には優しい系!?
魔王は男性が主流だと思ってたのに、まさかの女性で! しかもギャップ持ちとか!
やめてくれ、私のライフはもうゼロよ!
「お待たせいたしました、主様」
「……きたか、まっていたぞ」
そんなことを思っていた、矢先だった。
何やら、足音がする。
また誰か来たのか? なんて思っていると、彼が私をヒョイっと抱えてみせて……
「お前ら四天王に、最初の指令だ。ここにいる我が娘・リンネを、次期魔王として一人前に育ててもらう」
抱き抱えられたことで、ようやく誰が呼ばれたかみえる。
そこには、見た目は普通の人間となんら変わりない四人の女の子達が私を睨むように見つめていたー
(つづく!!!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます