第45話

 静夜の態度が、明らかに変わった。

 これまではメッセージを送ってもすぐに返事が返ってきていたのに、レスポンスが目に見えて遅くなった。

『今日、木村研行きますか?』

 尋ねると、

『はい』

 二時間後くらいにこれだけが返ってくる。いままでだったら『はい、三峰さんもですか?』だったのに。

 あれ? わたしどこで間違った?

 もしかして好きと言いすぎた?

 心当たりが多すぎる!

 なんでゲームみたいに選択肢を提示してくれないんだろう、この世界。

 急いで生徒会業務をこなし、木村研に向かう。

「こんばんは」

「はいこんばんは」

 木村教授に続いて山口が口を開く。

「三峰、ジュース買ってきてくれない?」

「コーヒーなら淹れますけど」

「今日オレンジジュース飲みたいんだよな」

「はあ、まあいいですよ」

 山口さんにそう言われ、百二十円を渡される。

「月岡、着いてってやれよ」

「三峰さんはひとりでおつかいくらいできますよ」

「いいじゃん、学内デートしてこいよ」

 山口さん、今それ地雷――。

 旭はへらっと笑って言った。

「ひとりで行けますから、大丈夫ですよ。静夜さんは読書を続けててください」

「そうですね。校内なら安全でしょうし」

 静夜のその言葉を聞いて、やはり距離感を感じた。いつもならなんやかんや理由をつけて着いてきてくれるのに。

 泣きそうになりながら、「行ってきます」と木村研を出た。

 扉を閉めたあと、うずくまる。

「ああああ」

 なんでこんなことになっちゃったんだろう。

 こんなことなら、

 こんなことなら――好きなんて伝えるんじゃなかった、なんて、言えない自分が嫌い。

 後悔はしていない。でも間違った気はする。ここからなんとか立て直さなきゃ。

 ちゃんと伝わりきっていない気がするのだ。静夜を恋うるこの気持ちが。静夜にわたしを殺してほしくてしょうがないのだ。

 立ち上がって、旭はオレンジジュースを買いに購買へ行った。

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