第26話
「はぁ?」
「まあそうなるよね。交通事故に遭った日あるでしょ、その交通事故が切っ掛けであの日からわたしゾンビになったの」
「ゾンビって︙︙映画とかに出てくるあのゾンビ? 全然会話とかも出来てるし五体満足じゃん」
旭は袖を捲くって右腕の縫い跡を見せた。
「信じてくれる? この腕も、縫ってないとすぐ取れちゃうの」
「︙︙特殊メイク――でもなさそうだな。ドッキリ仕掛けられる心当たりも無いし、旭はこんな冗談する奴じゃない。うわ、マジか。友達がゾンビとか笑えねー、まだ半分信じられない」
「わたしがゾンビ化したのってさ、黒魔術を使ったからなんだけど」
「黒魔術ぅ? よくやったよねそんな馬鹿らしいもん」
「わたしも最初は信じてなかったんだけど、一回試しにやって成功しちゃったんだよね」
「うわ、成功したならなおさらそこで止まっておけよ。代償なしってわけじゃ無かったんでしょ?」
「うん。代償はあったよ。それで、わたしが術者となって行ったのは絶対叶うおまじないでね、【先輩と結ばれるまで死にませんように】ってお願いしたの。だから結ばれる前の今はゾンビみたいなものになって死んでないわけだけど」
「うん」
「でもその絶対叶うおまじないの代償は術者の死なんだよな」
「うん。……は?」
「つまり、先輩がわたしのことを好きって言って付き合ったりしたらわたしは死んじゃうってこと……」
「何考えてんの?」
「その時は先輩信仰から抜け出すことに必死で何も考えてなかったんだよ」
「先輩信仰って何」
「だから、わたしが先輩に向けてる感情って信仰とか崇拝であって恋じゃないんじゃないかって思ってたの! そうじゃなくてこれは純粋な恋なんだって確かめることができるまで死ねないって思って、だって純粋な恋をして結ばれたなら死ぬってわかりやすいでしょう!?」
「確かめられたら死んじゃうんじゃん」
「両思いになれたら死んでもいいかなって思って」
「はっ倒すよ」
「何で!?」
「あんた周りのことなんにも考えてないじゃん。あんたは恋が成就して死んで満足かもしれないけど、好きな女の子が目の前で死ぬ先輩のこと考えた事あった? 両親と弟のことは? 私のことは? ――生田のことは?」
「あうう」
旭は頭を抱えた。
「そういう問題もあったか」
「馬鹿。解呪できないの」
「できない」
「じゃあ先輩のことは諦めな、悲しむ人数のほうが多い」
「諦めたくないし、仮に諦めたとしたら永遠にわたし生き続けないといけないし……」
「やっぱ黒魔術って碌なもんじゃないわ。旭は考えなしだし」
「うぐ」
早見は深いため息を吐いて脱力した。
「どうすんの」
「どうもしないよ。このまま先輩の一番側に居たい」
「じゃあ、例えば先輩に彼女ができ……なさそうだなあ……あの人……」
「でしょ? 少なくとも在学中は彼女できないだろうしできるとしてもわたしだと思うんだよね」
「なんたる傲慢、しかし否めないのがなんとも……」
「今度は水族館に一緒に行くの」
「デートじゃん」
「わたしも先輩もそう思ってないからデートじゃないよ」
「口に出して付き合ってくださいって言わない限りどれだけ近づいても平気なのかな」
「その辺はファジィだよね」
「もう一生その関係で居たら?」
「わたし我慢できるかなあ……」
「しろ」
「んんー……」
旭はアールグレイを一口飲んで喉を潤した。
「どうしようかなあ……」
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