第22話
中間テストが迫ってきた。明日からテスト準備期間に入り、午後の授業が丸々休みになって、授業もテスト向けにシフトチェンジしている。氷鷹学園はエスカレータ式だとは言え、厳しいテストに落ちたら普通に留年させられるし内申も下がるので、外部からの編入学試験と難度はさほど変わりがないのだ。旭は内部進学で氷鷹学園の大学に進学するつもりだったので、気合を入れて勉強をしていた。
旭は暗記系が得意だったので英単語や元素記号などを覚えるのが楽しくて好きだった。ただ、今回のテスト範囲はあくまで中間なのでそんなに覚えることは多くない。演習を主に繰り返していた。
時計を見ると午後十時。帰宅してから一時間は勉強していたことになる。
少し休憩するか、とリビングに降りると、無駄に長い足で晴日がソファを占領していた。
その脚を折りたたんで自分のスペースを作って座る。
「なんだよ姉ちゃん」
「休憩に来たら脚が邪魔だった」
「声かけてくれたらいいのに」
晴日が姿勢を変えて起き上がる。
「晴日、今度のテストは大丈夫なの?」
台所で明日のご飯の仕込みをしていた母にそう指摘され、晴日は見るからに嫌そうな顔をした。
「俺、別に内部進学じゃなくていいし……」
「お姉ちゃんに教えてもらったら?」
「ええー……」
「わたしは別に構わないよ。自分の分は夜やればいいし」
「勉強したくねえよ︙︙」
「大丈夫大丈夫、わかるまで教えてあげるから」
「俺平均取れれば大丈夫だからね? 朝までコースとかやだよ?」
「そんなことしないよ」
「ここわかんない」
「わからないの何でだと思う?」
「んー……ここの途中式が間違ってるとか?」
「正解。そこから計算し直したら解けると思うよ」
「当てずっぽうだけど…………うわ、ほんとに解けた」
「今みたいに遡れるようになると割と何でも解けるようになるからね」
「さんきゅー。あとは自分でやる」
「がんばれー」
旭は晴日の部屋を出て自室に戻って演習の続きを始めた。
翌日、午前授業が終わった旭はまっすぐに木村研へ向かった。テスト準備週間は生徒会も休業だ。この時間帯は一番人が少なくて集中できるのだ。
「こんにちは、木村先生」
「はいこんにちは。来ると思ってたわ」
「あら先生、エスパーだったんですね」
「毎日来とるやつが何を言うか」
「他のゼミ生の方達は?」
「みんなして特盛の定食屋に行ったわ。全部食べたら無料のとこ」
「ああ、あの食べるのが絶対不可能な盛りの……」
「あいつらバイトしてる暇ないからな。飯は一食で済ます言うて毎回挑戦しに行っとんねん」
「でも食べ切れたことあります?」
「無いな。翌日飯抜いとるわ」
「無茶するなあ……」
「満腹の多幸感は得られるからええんやろ」
「そんなものでしたかねえ。今わたし食欲無いからなにも共感ができません」
「ダイエットって食欲もなくなるもんか?」
「そうみたいですね」
旭はすっとぼけ、指定席に座って古文のワークを広げた。
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