第14話
眠っていないはずなのに、どの授業でも頭は明瞭に働いた。そろそろ眠くなってくれないかな、と思ったりもしたけれど、旭は本格的に化け物になってしまったのだろう。
ああ、化け物という言葉が頭から離れない。
昼休み、屋上で(鍵を持っているのは生徒会長特権である)静夜さんにメッセージを送った。ツインテールを揺らす風はまだ冷たい気がした。
『静夜さん、わたしは化け物でしょうか』
すぐに既読がついて、返事が来た。
『化け物はそんなことで悩みはしないと思いますよ。』
強張った心がゆるやかに解けた。心做しか風も暖かくなった。
『どうせ生徒会室か屋上にでも居るのでしょう。木村研にケーキがあるので食べに来たらどうですか』
ああ、そういうところが好きなんです、わたし。
そういうところに恋してる。
目を瞑って思う。
わたしは、先輩に恋してる。
まだ信仰との区別はつけられないけれど、少なくとも恋はしていると神に誓える気がした。
その日のお風呂上がり、自室でボディクリームを身体に塗り込んだわたしは、先輩から貰った刺繍糸で自分の身体にステッチをした。針を刺すときに少し勇気がいったが、刺してみると全然痛くなかったので、あとは簡単だった。右前腕部の付け根、右前腕部の裂傷、左大腿部の裂傷。身体の利き手側に針を通すのは難しかったので少し歪になったが頑張った。静夜さんから貰ったものが身体の一部になった気がして嬉しかった。
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