第8話 魔法の試行錯誤

         第一章

       魔法の試行錯誤


 昼からは朝に中断してしまった魔法の続きをしようと思う。庭に魔導書を持って出ると何もない方に向かって手を向ける。

 今回も周りへの被害が少ない水を選択する。


 「敵を貫く矢として、悪き存在を振り払わんとする。水の力をもって我が願いを叶えたまえ。ウォーターアロー。」


 ボール系より少し多めに魔力を取られ針の様な形になった水の塊が真っ直ぐに飛んでいく。うん、アロー系って感じだな。

 他には…ランス系とスロワー系とウォール系か。


 「敵を貫き穿つ槍として、強大なる敵を討ち果たさんとする。水の力を持って我が願いを叶えたまえ。ウォーターランス」


 バシュンッ

 手のひらから打ち出された水の槍は矢とは違って物凄い速度で打ち出されたが、矢の1/3程の距離で消えていった。

 おぉ!これは矢の3倍くらい魔力が持ってかれた!

 次は…


 「敵を薙ぎ払うためにその力を放射させんとする。水の力を持って我が願いを叶えたまえ。ウォータースロワー」


 うーん。大量の水を出すホースみたいなイメージ?これは水だと畑の水やりに使えるくらいのイメージしかわかないなぁ、やっぱり火とかの方が威力高そうだけど…

 ちなみにスロワー系だと土風光闇は無いみたいだ。

 

 「最後はウォール系か…水でやると無くなった時にビチャビチャになりそうで嫌だな…風にしよう。」


 「風の力を持って敵の攻撃から我が身を守らんとする。あまねく物を防ぐ壁となれ。ウィンドウォール!」


 …うーーーーん。なにか壁があるのはわかる。気流が渦巻いているって感じだな。けど、これは…どれくらいの防御力があるかわからないな。

 父さんに矢でも撃ってもらうか?いや、自分で撃つか。というか並行して魔法って使える物なのか?やってみるか。


 先ほど使った様に魔力を臍の下に集めて今度は手のひらから空中に向かって矢を形作るイメージで俺の斜め右上にウォーターアローが出来上がる。

 後は…あれ?どうやって射出するんだ?全て魔力をウォーターアローを作るのに使ってしまった。一度作り出したウォーターアローの魔力の制御を手離すと水がバシャっと落ちていく。

 今度はウォーターアローを作った後に少しの魔力を残しておき、残った魔力で撃ち出すイメージで発射する。


 お、今度はうまく行った。さっき詠唱で作ったものより速い速度でウィンドウォールへと向かっていく。

 ぶつかった瞬間にアローは霧散し、ウォールはぶつかった部分の周辺が消え去った。他の箇所の魔力が流れていき補って修復された。

 もう1発撃つと今度は両方とも霧散した。

多分だけど、許容できる攻撃魔力の量を超えると防御魔法は消え去るのかな?


 「うし!どんどん試していこう!」


 「まずは、ウォーターボール自体の大きさを魔力量によって増やして…うわ!さっきのアローと同じ様に射出したのにぜんっぜん進まねぇ!」


 ボールを大きくし過ぎた弊害で詠唱時よりも多い魔力で射出した筈なのにふわふわ〜と進んで元の距離の1/10程で離散していった。

 なら、10倍の魔力を射出に込めて…!


 「やった!できた!!!…けど速度おっそ!」


 距離は伸びたものの速度が相変わらず遅いままだった。うーん。なら更に10倍だ。合計20倍でいこう。


 「おお!下のスピードと距離ででっかいウォーターボールだ!」


 やっぱりだ、魔法自体の効果範囲?と射程距離、速度はそれぞれの倍数を合わせないといけない様だ。

 詠唱はそれをベストな形で作り上げている。

なるほど、そういうプロセスを踏んでいる訳ね。

 ウィンドボールでも同じ様に順番に試してみようとする。


 「あれ?速度も距離もあんまり減っていない。なんでだ?」


 ウィンドボールは何故かウォーターボールよりも減衰率がとても少ない。他の属性でも試してみる。

 ファイアボールの際は流石に危ないのでウォーターウォールを魔力多めで展開しておく。各属性の結果を纏めると


 闇>>>>>土>>水>>>火>風>光


という順番で魔力量のロスが多かった。多分何かの法則があるはずなんだ。

 考えられるのは質量か?なら、なんで火と風で差が生まれるんだ?

 それに闇と光はこの法則から外れているだろう。少し日光が照って来て熱いので木の影に隠れて魔法を試す。

 もう一度闇と光を使ってみると今度は光を作り出すのが少し難しくなって闇を生み出すのが簡単になった。


 「そうか!そもそもの属性の生み出しやすさも関係しているのか!なら土も改善できるのでは?」


 俺は手を地面に当ててそこにある土を利用するつもりでアースアローを唱える。

 周囲にあった土がぼこぼこと飛び出て魔力の方に集まりアースアローが出来上がり射出される。


 「やっぱり!格段に魔法が使いやすい!」


 他の属性も試した結果、多分だが属性本体の作りやすさや利用しやすさでまずは魔法の基本的な魔力量が決まる。

 次に質量に応じて射程距離や速度などの効果に及ぼす魔力量も変化する。

 他の魔法を試していないから分からないが、まず間違いないはずだ。


 「やったー!!!これで魔法の練習が捗るぞ!」


 今度からは今ある魔法だけでなくてオリジナルの魔法や中級以上の魔法の再現なども試していけるな。

 だが、まずは焦らずに今覚えた魔法の発生速度を上げることを考えなければな。

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