第4話 修行開始

         第一章

        修行開始 


 あれから5年の月日が経った。生まれたのはどうやら春だったらしく、少し熱めの夏が来た後に秋が来て、厳しい冬も過ごした。

 父はどんなに激しい雨の日や風の日でも必ず鍛錬をし、必要な時には獲物をかってくる。

 多分だが父はこの村を守るために配属されているのだろう。

 ガチャりという音がして扉が開いた先を見ると今日も父が獲物を仕留めてきて帰ってきたようだ。


 「おかえりなさい!お父様!」


 「おお!エルか!今帰ったぞ〜。」


 走り寄ると勘違いしたのか俺のことを抱き上げてくる。


 「今日は何を狩ってきたのですか?」


 「今日はな〜、なんと!グレイトボアだ!美味しいお肉が食べられるぞー!」


 「おぉ!お母様が作るシチューはとても美味しいですものね!」


 こんなふうに普通の父と子をやるのにも抵抗がなくなっていた。最初のうちはどう接しようとか考えていたが本能的に抵抗がなくなったのだ。

 俺はこの人の子供だし、この人たちは俺の親なのだ。


 「今日は腕によりをかけて作るわね!」


 「「やったー!」」


 「ならまずは貴方は身体を綺麗にしてくること!」


 「おう!エルも一緒にくるか?」


 「うん!行く!」


 歩けるといってもまだ2歳の俺は大人の父と比べれば歩幅が小さく速度が違うため肩車してもらって近くの井戸まで向かう。


 「父様、父様は強いのですか?」


 「お、どうしたんだ?いきなり。そうだなぁ、多分だけどこの村の中では一番強いな。男爵領、いや伯爵領の中でも上の方に入る!…と思いたいな。」


 それはすごい。多分だがここは辺境の地だ。辺境伯なら実質侯爵と同じくらいだとラノベ設定だと多い!つまりは父はこの世界でも有数の実力者なはずだ!…と思いたい。


 「凄いんですね!!父様は強いからこの村にいるのですか?」


 「うーん、そうとも言えるし、違うとも言えるな。少し難しい話だがエルになら多分わかるはずだから説明するな。俺は元々冒険者をやっていたんだ。生まれが騎士爵だったけど3男で家も継げなかったしな。」


 父が井戸から水を汲み上げ布巾を濡らす。


 「その時に結構活躍していたんだが、それが今の男爵様の目に留まってな、仕官しないかと誘われたんだ。その時に結婚もしようとなってよく通っていた飯屋の看板娘だったお母さんと結婚したんだよ。そういった理由でこの村にいるんだ。」


 「そうなのですね!なら僕も父様みたいに強くなれますかね?」


 「そうだなぁ、エルが毎日母さんの言うことを聞いて良い子にしていたらきっとなれるさ。まずは食べて寝て大きくなれ。そうすれば俺もお前に稽古をつけてやることもできるしな。」


 父が嬉しそうな顔で俺を抱き上げなから話しかける。

 そのまま家の中に戻ると席についてご飯を食べ始める。


 「そう言えばお母様はいつも指先から火を出したりしてますがあれは何ですか?僕も今度やってみたいです!」


 「うーんとね、あれは魔法っていうものなの。魔法はね使うと、とーっても力を使っちゃって気持ち悪くなって頭も痛くなるの。だから、大人になって我慢できる様になってから少しずつ使っていくのよ。」


 母が困った様に眉を顰めながら心配そうに話しかける。

 だが何度も魔力を使った俺ならわかる、あれは使えば使うほど強化されるタイプだ。しかも年齢による制限はない。


 「僕我慢できます!一回やってダメだったらちゃんと諦めますから教えてください!」


 「あなたはどう思う?」


 「うーん、俺は魔法をほぼ使わんからなんとも言えないが、やってみてできなかったり辛かったりしてもワガママを言うんじゃないぞ?それともし使って苦しかったとしても大人になってからしっかりと訓練するんだぞ?約束できるか?」


 「うん!約束できる!」


 「じゃあ明日からやってみましょうか!」


 「はーい!!!」


 次の日の朝、母が起きてきたのを見計らってすぐに話しかける。


 「お母様!教えて下さい!」


 母は少しびっくりした顔をしてすぐにクスクスと笑い始める。


 「エルは本当に楽しみにしていたのね。分かったわ。お母さんは家の事をしながら魔法について教えるから聞いててくれる?」


 「はい!」


 母は着替えた後にエプロンをつけ部屋の掃除を始める。


 「魔法はそもそも、魔力を扱う才能がある人のみが使えるの。

 その為に魔力を使えるかどうかを確認する方法があるのよ。それが生活魔法を唱えられるかどうかって事なの。

 唱えられた人は才能があるから魔法の訓練に入る。無かったらそこで諦めるの。」


 ん?それだと最初から生活魔法も使えない魔力量でありながら魔法を使える才能がある人は埋もれてしまうのではないか?


 「それは一回だけなのでしょうか?年を経るごとに確認したりはしないのですか?何度も挑戦したりとか。」


 「うーんごく稀に後になってできる様になったとか何度もやっているうちにできる様になったと言う話は聞くけど、本当にごく稀な話なの。できない子は倒れてしまったりなんの反応もなかったりするから…。」


 やっぱり、気絶する子は魔法の才能がある子なんだろうな。まあ、ここで証明する方法もないし黙っていていいだろう。


 「そうなんですね!では魔法の才能があるかどうか確認するために何か教えて下さい!」

 

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