第130話 ゾンビ片付け



 王都で氷鬼と戦っている。

 私は木刀を手に、王都の街を駆ける。


『うひゃー! ボロボロやんけー』


 竜姿で空を飛ぶ古竜。その背にはミブロが乗っている。


「最初に氷鬼が攻めてきたとき、街の住民を皆殺しにしたからな」

『それってあんたも関わってたん?』


「いや。氷鬼が一人でやってた」

『ほんとにぃ? あんたが覚えてないだけじゃないの? おっさんに気に入られたいからって嘘はよくねーんじゃねーの?』


「…………」

『無言で刀でツンツン付いてくるのやめて!』


 ミブロがここの人たちを殺したかどうか、私には判断できない。

 ただ、彼女が殺したとしても、それは彼女が望んでやったことではないだろう。


 呪いで無理矢理従わされていたのだから。


「ミブロ。私はわかってますから。気にする必要はありませんよ」

「……はい♡ やはり、あれくさんだぁさんは、優しくて……大好き♡」


『けっ。女に優しいんだからよぉ。おれにも優しくしろっつーの。それとも人の形をしたメスにしか優しくできねーのか、哺乳類じゃないと愛せないのかこのおっさん』


 ぶすっ!


『うぎゃあ! いてええ!』

「……あれくさんだぁさんに失礼だぞ、物差し」


 そんな風に廃墟となった街を駆け抜けていると……。


『ん? なんだ、人……?』


 私の目の前に、複数人のドワーフが現れた。

「う゛う゛……」「あ゛ー」「う゛ー……」


 全員がうつろな目をしている。


「ゾンビ……ですね」

『どういうこと?』

「この世界の死者は、ほうっておくと冥界の亡者に体を乗っ取られ、ゾンビになってしまうのですよ」


 だから、死体は聖職者の立ち会いのもと、火葬しないといけないのだ。


「うがー!」「がー!」

『うひぃい! ゾンビが襲ってきたぜ! どうすんだよおっさん!? 倒すのかよ!?』


 そんなことはしない。

 私はゾンビの横を通り過ぎる。


 瞬間、ゾンビ達はその場に崩れ落ちる。

 凍り付いていた彼らの体に血の気が戻る。


「う……」「あれ……?」「おれたちは、一体……?」


 ゾンビだったドワーフたちが元に戻っていた。


『は? おっさん何したんだよ?』

「黄金の型で、死者にとりついた亡者を切り、体に白色闘気を流すことで体を治したことで、蘇生しました」


『うん。オッケー。何やったのかさっぱりわっかんねーや。ようはゾンビから人を戻したんだな』

「そうです、ようやくあなたも剣を理解しましたか」


『まあな! あんたのやってることが、少なくとも剣術じゃねえってことだけはな!!!!』

「? 剣術ですが」


『ちげーよ! 誰一人として、あんたのやってること! 剣術なんておもってねーから! やってることただの魔法だから!』


 おやおや、何を言ってるのでしょうね。


「魔法ではない、剣術です」

「そうだ、あれくさんだぁさんの剣術は、すごい」


 古竜は上空で、叫ぶ。


『あんたの剣術、もう魔法を剣術って呼んでるだけだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』

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