第129話 またしてもやられる古竜



 王都に侵入した私達。

 敵は遠くから狙撃してきた。


 古竜程度なら一撃で倒せるくらいの力を持っているようだ。

 

「ミブロ、あなたはここに残り、古竜を守ってください」

「いや! それには及ばねえぞおっさん!」


 おお、古竜。

 自分の身は自分で守る。だから先に行ってくれみたいなことを言いたいのですね。


「おれもおっさんについて行く! なぜなら、おっさんのそばが一番安全だからな!」

「…………やれやれ」


 いつまで経ってもこの子は成長しない……。

「あれくさんだぁさん、なぜこんなうるさいだけの無能トカゲを旅に同行させたのだ? 正直足手まといではないか?」

「古竜を無能トカゲっていうのおまえらだけだからな! この刀バカども!」


 私は剣を抜く。


「過酷な環境に放り込めば、いやでも強くなろうとするかと期待したのです」


 この子はネログーマにいるとき、自分から鍛錬しようとは一切しなかった。

 なら、危ないところへ連れて行けば、自分の身を守る家庭で、強さを身につけるかもしれないと思ったのだ。


 ……だいぶ無駄だった気がするが。

 そのときだった。


「む、来ますね」


 私は頭上を見上げる。

 上から、無数の氷の槍が降ってきた。


 アレに当たると凍り付いてしまう。ならば。


「極光剣、緑の型。旋風」


 私は剣を振る。

 すさまじい突風が吹いて、氷の矢を吹き飛ばしていく。


「……なんという、見事な剣術。素晴らしい」

「あん? なんだよミブロ。あれが素晴らしい? ただ凄いパワーで剣を振るって、槍を吹っ飛ばしただけじゃあねえのかよ?」


「やれやれ。愚かな古竜ものさしだな」

「古竜って書いてものさしって言うなや! 愚かってどういうことだよ!?」


「第二の矢が振ってくる。おまえ、竜となってその矢を吹っ飛ばそうとしてみろよ」

「はぁ? なんでおれがそんなアブねえこと……って、来た!」


 また矢が降り注いできた。


「できないのか、雑魚」

「できらぁ……!」


 古竜が竜化して飛び上がる。

 止めようと思ったが、これも修行の一環だ。

 古竜は飛び上がる。


『このおれさまが空の王だってこと教えてやるぜえ!』


 古竜がその大きな翼を広げて、羽ばたく。

 突風が発生し、氷の槍を吹き飛ばそうとするも……。


 ずぉ……!


『ふぇ?』


 槍は勢いを一切失うことがなかった。

 

『ちょ!?』


 古竜の体に氷の槍が突き刺さる。

 がきぃん!


 古竜は落下し、粉々に砕け散った。

 やれやれ……。


 私は古竜を、さっきと同じやり方で蘇生する。


「ぜえはあ……どうなってんの……?」

「当然だ。あれくさんだぁさんの風にはすさまじい量と練度の闘気が込められていた」


「な、なるほど……おっさんの風は闘気で強化された攻撃」

「ああ、一方でおまえのは闘気が一切こもっていないただのそよ風。敵の攻撃を防げるわけがない。わかったか雑魚物差しこりゅう?」


「おれの名前が変なのにランクアップしてるぅう……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る