第128話 王都到着



 私達はドワーフ国カイ・パゴスの王都へとやってきた。


「うっひゃあ……こりゃあ……ご立派な城壁じゃあねえか」


 私達の前には見上げるほどの巨大な外壁があった。

 10……いや、20メートルはあるだろうか。


 外壁はレンガを重ねて作られた感じではない。

 何か大きな金属を加工して作られたのだろう。表面につなぎ目が一切無かった。


 ううむ、なんという優れた技術力。


「しっかしよぉ、扉が見当たらねーぜ?」


 確かにつるりとした外壁が、ぐるっと一蹴してる。

 入り口らしき入り口は見当たらない。


 隠されているのだろうか。


「どーすんの? おっさん。これじゃ中に入れなくねーか?」

「問題ありませんよ」


 軽身功で体を軽くし、闘気で脚力を強化。

 とんっ、と地面を軽く蹴って、私は外壁の上へと着地。


「はぁー……20メートルの壁を、軽々と飛び越えるたぁ……やっぱあのおっさん人外だわー……」

「何を言ってるのです。これくらい余裕で飛び越えられますよ」

「嫌無理だから……なぁ、ミブロ?」

 

 たんっ、とミブロがジャンプして私の隣に着地する。


「これくらい余裕。できないほうが恥ずかしい」

「できねーっつーの! 少なくともおれには無理だね! だからここで待ってまーす!」


 おやおや。


「古竜、あなた古竜でしょう? 飛んでこれるでしょ?」

「ぎくぅ」


 何がぎくぅ、ですか、まったく……。


「大方、王都の中は危険だから、入りたくないだけでしょ?」

「そ、そんなことねーし!」


 するとミブロが首を傾ける。


「あれが、古竜? 竜だというのか、あれくさんだぁさん」


 古竜を見下ろしながら、ミブロが言う。


「ええ、そうですよ」

「ありえない……あんなに弱いのに、竜だなんて……」


 ミブロが懐疑的なまなざしを古竜に向ける。

 古竜の額に血管が浮く。


 かっ……! と古竜の体が輝くと、みるみるうちに大きな体へと変貌する。


『どうだぁ……!』


 ばさり! と古竜が大きく翼を広げて、私のそばまで……いや、私達を見下ろす位置まで飛んでいってしまった。


 おやおや。


『どうだみたか! 我が威容! おれはいにしえの時代より生き強大な力を持つもの! 古竜しるば……』


 しるば?

 そのときだった。

 がきん! といきなり古竜の体が凍り付いたのだ。


「やれやれ……敵地で不用意にとび、大声でしゃべるなんて」

「……あれくさんだぁさん、あの古竜、もしやバカでは?」


「そういってあげないでください」


 たとえ真実だとしても。

 ぐしゃり、と古竜が地面に落ちて粉々に砕け散る。


 まったく。

 私は外壁から降りて、彼女を助けようとする。


 バシュッ……!

 かきいん!


「なるほど……氷の矢ですか」


 私の木刀には氷の矢が刺さっている。

 そして、刺さった分が凍結していた。


 闘気オーラで木刀を溶かす。

 そして、木っ端みじんになっている古竜に、白色闘気を流し込んだ。


 すぐさま古竜は元通りになる。


『ぷは! はあ……はあ……お、おれ……? 死んでた……?』

「ええ。まったく、あの程度の攻撃で死ぬなんて。だらしないですよ?」


『ぐぬぬぬ……! だが、油断しないことだな! 敵は古竜を一撃で倒すほど、強いやつらしいぜ!』

「ふむ……」


 なるほど、古竜を一撃で、ね。


「ならたいした強さじゃないですね」

「最強剣士であるあれくさんだぁさんと比べれば、カスみたいなもんですね」


 ぶちっ。


『古竜は強いの! あんたらの物差しがバグってるだけで!』

「「いや、弱いです(よ)」」


 だから相手も多分弱い。


『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛おれ最強種なのに! 最近ツッコミとやられ役、敵の強さの物差しにしか使われてねええええええええええええええ!』

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