第117話 剣士ミブロ
私の目の前に現れたのは、青い羽織をまとう、背の高い女だった。
肌も白く、髪の毛も真っ白だ。
この雪原の中に溶け込んでしまうほどの、強烈な白をまとう少女。
しかし……彼女はこの景色の一部とならない。
彼女の放つ強者のたたずまいのせいだろう。
彼女が凄いのは、まだ闘気を発していないということだ。
私同様に、彼女は闘気を内に押さえている。無闇に闘気を出し、力を誇示していた連中より、数段レベルが上なのがわかる。
闘気を出さずとも、彼女が一流の剣士であることは理解できた。
剣を抜かずとも、そのたたずまい、歩き方で。
「古竜。下がってなさい……って、古竜?」
「あびゃ……ば……ば……」
……やれやれ。
古竜は彼女の殺気に当てられて、失神してしまったようだ。
しかも……ハシタナイことに失禁までしてる。まったく。
だが、今は古竜にかまっている暇はない。
私は木刀を抜いて正眼に構える。
「私はネログーマ副王、アレクサンダー。あなたの名前を聞きたい」
「…………ミブロ」
「ミブロ?」
変わった名前だ。
少なくとも、この世界の人間ではないような感じがする。
「ミブロさんは氷鬼の配下ということでよろしいですか?」
「…………」
うなずかない。
ただ村を襲ったのは確実にこの子だろう。
氷鬼とのつながりは不透明だが、彼女からは明確に、こちらを殺す意志を感じさせる。
対話での和解は無理……か。
肌がひりつくほどの殺気をあびても、私は恐怖を感じない。
むしろ、昂揚してるのがわがった。
彼女はかなりの剣の使い手だ。
しかも、見えない剣なんていう、摩訶不思議な技まで使う。
戦ってみたい。
という、きもちが湧き上がる。
「……手合わせ、願いたい」
……驚いた。私が言う前に、ミブロが自らそう言ってきたのだ。
「是非もありません」
すっ、と我々は剣を構える。
確かにミブロの刃は見えなかった。刀身がないように、見える。
さて、さて。
どうなることやら。
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